空母機動部隊を葬り去る陸上・航空打撃力!


台湾危機に駆けつけた米空母を威嚇する


弱体な中国空軍でも、米空母への攻撃は可能

 強力な防御力を持つ米空母機動部隊も、一度だけ旧ソ連軍に撃破されたことがある。1980年代の後半、極東ソ連軍の拠点であるウラジオストック港に、米空母機動艦隊が殴込をかけるという想定で演習が行なわれた。

 米空母機動部隊はオホーツク海から日本海に入り、ウラジオ港に向け日本海を南下した。南下阻止を目的に、ソ連海軍の潜水艦や駆逐艦が米機動部隊に接近を試みる。しかし空母艦載機や、護衛の艦艇や潜水艦が接近を阻止する。たんに演習といっても、米ソ冷戦時代の演習は火花が飛び散る激しさだった。そして米空母がウラジオ港の目前に達したとき、陸上基地から発進した超音速爆撃機バックファイアー(Tu−22)が、レーダーの探知を避け低空で接近してきた。米空母の直前で急上昇して、そのままバックファイアーは飛び去った。その後、バックファイアーの航跡を解析した米海軍は震撼した。なんとあのバックファイアーは空母に対艦ミサイルを発射する模擬攻撃を行なっていた。そしてコンピューターは,米空母に対艦ミサイルが命中したと分析した。

 米空母の最大の弱点は、高速で飛来する航空機や対艦ミサイルだった。そのことを知ったのは米国ばかりではない。当時のソ連も米空母の弱点を突き止めた。そして米空母を葬り去る新兵器の開発に取り組んだ。それは冷戦が終結し、ソ連が崩壊し、新ロシアが誕生しても変わることはなかった。強固な米機動部隊の防空網を突き抜け、正確に空母に命中する対艦ミサイルの開発である。

 こうして新型のSSC−1B(セパール)対艦ミサイルが開発された。マッハ1.3で飛行し、射程が450`もある新兵器である。セパール・対艦ミサイルは今も改良が続けられ、より長射程でレーダーに映りにくいステレス性を高め、超低空・超高速で接近し、正確に空母を識別して命中するミサイルへの研究である。このミサイルを航空機に搭載すれば、米空母はどのような反応を見せるか。それを図で示した。台湾危機で駆け付けた米空母機動部隊に、中国の内陸部から対艦ミサイルを搭載した航空機が米空母を狙う。空母艦載機は地上の対空部隊や、航空部隊に迎撃されるので、対艦ミサイルを搭載の中国空軍機に接近できない。すなわち米空母機動部隊は台湾近海に姿を現わすことはできないのだ。写真と図は月刊誌「スコラ3月号」の特集「空母新世紀」より。