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特集社説2009年05月09日(土)付 愛媛新聞

柏崎刈羽原発 不安がぬぐえない運転再開

 一昨年の新潟県中越沖地震で大きな被害を受け、全七基が停止していた東京電力の柏崎刈羽原発が動きだす。
 このうち7号機について、泉田裕彦知事が運転再開に同意した。東電はきょうにも原子炉の試験起動を始める。
 7号機は比較的損傷が少なかったとされる。より高い耐震安全性が求められるのは別プラントのはずだ。
 中越沖地震は今もなお、全国の原発の耐震安全性に根本的な見直しを迫っている。
 震災の重い教訓は生かされるのか。一年十カ月という検証の時間は十分だったのか。それが明らかになるのは、これからだ。今回の運転再開は節目のひとつにすぎない。
 再開に向けた作業中には、初歩的な構内失火を九件も起こした。地元の厳しい目が向けられて当然であろう。
 柏崎刈羽原発は設計時の想定を超える揺れを全基で観測した。東電は今後の想定地震を再評価し、最大の揺れの強さ(基準地震動)を国内最大値に引き上げた。一千億円をかける補強工事を進めるが、地元や国民の不安が完全に解消されたとは言い難い。
 問題は再開までの過程だ。地震の直後、泉田知事は廃炉の選択さえにおわせた。が、それとは裏腹に国と東電は着々と日程をこなした。
 経済産業省の原子力安全・保安院と、国の原子力安全委員会は並行審議で、「耐震性に問題はない」とする東電報告をほぼ追認。今年二月に再開のお墨付きを与えた。
 一方、新潟県は独自の技術委員会で検討を進めたが、肝心な場面で意見の隔たりを埋められなかった。中越沖地震の震源の海底断層について、長さを三十六キロとする東電説と、より長いとする専門家の主張が対立。技術委は両論併記でまとめたが、最終的には東電説を受け入れた。
 国が先に再開を容認し、実質的な最終判断を自治体に委ねたのは、地元重視の姿勢ばかりでもなかろう。原発停止は自治体財政を大きく左右する。一連の流れを見る限り、「再開ありきの手続きだ」との批判が出るのは当然だ。
 原発の安全対策は常に何かが起こってからだった。
 国と電力会社の地震に対する危機意識の乏しさは、中越沖地震で証明された。幅広い専門家の指摘や国民の素朴な疑問に耳を傾け、施策に反映する姿勢を示さなければ、不安や不信はなくならない。
 首都圏の夏場の需要期を控え、今後は残る六基の再開問題が浮上してくる。地球温暖化問題を盾に、早期稼働の圧力が高まる可能性もある。
 それぞれ建設時期も立地条件も異なる。震災への処方せんは違ってくる。原発に依存しすぎた国策の甘さを棚に上げ、安全確保をないがしろにすることは許されない。

   
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