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【from Editor】新メード・イン・ジャパン

2009.5.8 08:30

 昨年度、28年ぶりに貿易赤字国に転落した日本に、意外な「輸出品」があるのをご存じだろうか。民法や民事訴訟法といった法律である。法務省や国際協力機構(JICA)が15年前から、法案起草や法曹養成といった海外支援を始め、その対象国は現在、ベトナム、カンボジア、ラオス、インドネシア、ウズベキスタン、中国の6カ国に及ぶのだ。

 こうした支援の現状を教えてくれたのは、5年ほど前、十数年ぶりに電話をくれた大学時代の友人だった。検察庁勤めの彼は当時、法務省法務総合研究所に異動し、ベトナムでの民法改正、民事訴訟法起草などに取り組んでいた。

 私有財産を否定する共産国には本来、私益や生活関係を規定する私法がない。が、それでは経済的トラブルを解決するルールがないに等しい。そんな国柄では海外からの投資が集まらないから私法の整備を急いでいる。ベトナムが日本に支援を求めた理由を、彼はそんな風に説明した。ドイモイ政策で経済成長するベトナムの予想外の泥縄式かじ取りがのぞけて、興味深い話だった。

 「でもなぜ、日本なんだ? ベトナムの旧宗主国は私法の大家・フランスだから、そこの法律を見習う方が早いだろう」

 「日本の法制度も元々は西欧製だが、明治期から100年以上も運用されて東洋化している。だから導入しやすいと見当をつけたみたいだな」

 だとすれば、なかなかの慧眼(けいがん)である。経済的トラブルはその国の慣習、文化に基づいて解決を図る方が穏当なのは間違いない。だからフランスより日本、そこで東洋化し、熟成した法律を持ってこようというのは、「買い手」として賢明な選択である。「売り手」の日本としても悪い話ではない。日本に近い法律が導入されれば、企業は進出しやすくなり、貿易や投資が活発化する。

 そうした経済的恩恵以上に、日本の知恵や経験が評価され、世界に広がることの意味合いは小さくない。支援対象国の一つに中国がある。日本は民事訴訟法と仲裁法の改正に協力している。中国は言うまでもなくその昔、律令制という国家運営の根幹をなす法体系を輸出してくれた国である。その国に日本の知恵とルールを教えてさしあげるというのは、なんとも愉快なことである。支援交流が、知的所有権の大切さなどグローバルスタンダードをお教えする機会になれば、さらにいい。(大阪総合編集部長 安本寿久)

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