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問題に直面すること

 自分の生きる意味や、自分自身や自分の生い立ちについて話をしたいという方がカウンセリングにはよくいらっしゃいます。勿論、このようなことに関して考えることは重要なことです。しかし、一方で現実に抱える困難から目を背けているためにそのような悩みが出現している場合には注意が必要です。
 現実の中でその人を苦しめているのはつまらない日常生活の問題であり、生きるか死ぬかの問題ではないということを知ることは、非常に苦痛を伴うことでしょう。自分が、こんな単純な問題でここまで悩んでいるわけがない、自分はもっと崇高な問題に対して、悩んでいるのだ、そう考えたほうがどんなにか楽でしょうか。くだらない、小さな現実の問題に足をとられて動けなくなっている、とるにたらない自分を認識せずにすみます。しかし私たちは実際には、「アルバイト代がちゃんと振り込まれていないからそれを勤め先に言わなければいけない」とか、「学芸会で、自分だけあの部分の振り付けができない」とか、そういう「具体的で」実に「おもしろみのない」、「特別に何の意味もつけようのない」問題の中で生きており、実際にはそのことを悩んでいるのです。
 そのような問題から目を背けたとき、精神症状を生じやすいものです。あなたがもし、自分の生きる意味などについて考え始め、そのとき非常な苦痛を伴っているとしたら、考え直してみてください。本当に生きる意味について考えているのでしょうか、それとも学芸会の振り付けが問題なのでしょうか?
 仮に学芸会の振り付けが問題だと分かったところで、それにすぐに取り組めるわけでもないでしょう。すぐに取り組めるぐらいであれば、もともとそのような問題から目を背ける必要はないのですから。一人では取り組めないと思ったならば、周囲の人に助けを求めましょう。カウンセリングの門を叩くのも一つの方法です。
 大切なのは、自分は学芸会の振り付けができないことに悩んでいるのだと、まずは認識することです。それが問題に直面する第一歩つながります。

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2008年05月10日 09:57に投稿されたエントリーのページです。

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