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【経済】

【関連】見えぬ活路 トヨタ苦悩 リストラ、市場開拓 復活決め手なし

2009年5月9日 朝刊

2009年3月期の決算説明会に臨むトヨタ自動車の渡辺捷昭社長(中央)=8日、東京都文京区で

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 トヨタ自動車は八日発表した二〇一〇年三月期連結決算の業績見通しで、前期からの大幅な赤字拡大を予測した。トヨタ七十余年の歴史の中で、初めての「二年連続赤字」が現実味を帯びつつある。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)などが深刻な経営危機に陥る中、黒字復帰に向けてもがくトヨタは、次世代の自動車産業を見据えた青写真をどう描くのか。 (細井卓也)

 「必ず難関を克服し、新しいトヨタが生まれると確信している」

 トヨタ東京本社で開かれた決算発表。渡辺捷昭社長は黒字化に向けた決意をこう述べた。

 〇九年三月期は新工場の中止・延期などの緊急収益改善策の効果で、千三百億円の“利益”を捻出(ねんしゅつ)した。一〇年三月期はさらにコストや固定費の削減を強化し、八千億円もの経費を浮かす計画だ。

 だが、一〇年三月期は前期の二倍近くに上る八千五百億円の営業赤字が予想される。円高による為替差損がさらに膨らむとみているためだ。一〇年三月期の為替レートは対ドルで前期実績より六円、対ユーロで十九円の円高を想定。為替による減益要因は四千五百億円に上る見込みとなっている。

 それでもトヨタは「台数と収益改善の強化で為替を克服したい」(渡辺社長)と、外部要因に左右されない体質づくりを強調する。

 〇九年三月期の赤字転落の過程では「拡大路線の中で市場の変化に柔軟に対応できなかった」(幹部)との指摘が社内からも出た。

 トヨタはこの反省を踏まえて北米に偏った収益構造を改善し、中国やブラジルなどの新興国・資源国での販売を拡大するため、各地域の特性に応じた商品開発を行うための「マーケットビジョン」の策定を進めている。

 さらに国内の新車市場の掘り起こしを図るため、市場調査や広告・宣伝の機能を統括するマーケティングの新会社を来年一月にも設立する方針。

 いずれも六月に社長就任が内定している豊田章男副社長の肝いりプロジェクトで、短期的な収益改善策との同時進行で最大限の効果を引き出す考えだ。

 だが、これらの施策だけでは“百年に一度”といわれる大不況を乗り越えるには不十分、との指摘は少なくない。「大幅減産で余った生産設備や人員、小型車シフトによる利益率低下にどう対応するのか」(証券アナリスト)。市場を納得させるだけの十分な答えはまだ示されていない。

 自動車産業を取り巻く激動の中で、幹部は「トヨタはGMやクライスラーにはならない」と明言する。しかし「王者・トヨタ」が復活するには、さらなる一手が必要になる。

◆10年3月期 設備投資36%削減

 トヨタ自動車は、二〇一〇年三月期の設備投資額を前期比36%減の八千三百億円に削減する。緊急収益改善の柱としての取り組みで、現有設備の再活用などを検討。土地・建物への投資も大幅に抑制する。前期からの削減幅は四千六百億円。

 トヨタは過去数年にわたり、減価償却費を大きく上回る一兆三千億−一兆五千億円程度の設備投資を続けてきた。しかし、一〇年三月期連結決算が二年連続の営業赤字の見通しになることから改善努力が不可欠と判断。固定費の削減策として、設備投資の見直しに踏み込んだ。

 トヨタは既に、一〇年後半からハイブリッド車「プリウス」の生産を開始する予定だった米ミシシッピ工場の稼働延期を決めている。今後は商品計画や供給計画を踏まえた上で「必要なものはしっかりやっていきたい」(木下光男副社長)としている。

 <トヨタ自動車の連結決算> 2009年3月末現在の連結子会社はトヨタ車体など529社、出資比率に応じて純損益を連結決算に反映させる持分法適用会社は56社。デンソーやアイシン精機などは持分法適用会社に含まれる。トヨタは2000年3月期から米国会計基準の連結決算を開示(03年3月期まで日本会計基準と併用)しているが、日本基準に比べ連結対象会社が少なくなるなどの違いがある。

 

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