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消えた年金:回復、地域差3倍 認定基準あいまい

 保険料を払いながら一切記録がない「消えた年金」問題で、記録回復の正否を判断する総務省年金記録確認第三者委員会が発足時から今年3月までに記録回復を認めたのは処理件数の38%に過ぎず、都道府県ごとの認定率には3倍近い差があることが分かった。第三者委の委員経験者は「記録回復の認定基準があいまいなため、地域格差が生じたり、本来もらえる人がもらえずに認定率が低くなっている可能性がある」と指摘している。

 第三者委は07年6月に発足し、今年3月24日まで各地の社会保険事務所で9万6383件の申し立てを受け、取り下げなどを含め5万8642件を主に都道府県の地方第三者委で処理。基本方針は「明らかに不合理でなく確かとみられる」ケースは認めるとし、認定率は発足直後の07年8月までほぼ100%だったが、その後は低下。結局、認めたのは2万2393件、38.1%だった。都道府県別では最高だった大阪府で57.4%の認定率だった一方、最低の島根県では20.1%と、3倍近くの差があった。

 東京都北区の斉藤満さん(73)は51~57年に鉄工所に勤めたが、その間の1年2カ月分の厚生年金保険料の記録が消えており、07年6月に第三者委に記録訂正を申し立てた。未納扱いの期間に勤めていたこと自体は元同僚の証言で認められたが、当時の会社も事業主も今は存在せず「保険料を天引きされていた証拠がない」として1年後に却下された。

 「天引きの証明」は、消えた年金の被害者を救済する厚生年金給付特例法(07年成立)の記録回復の要件。第三者委の委員だった社会保険労務士は「昔の給与明細を保管する人はまれで、零細企業は連絡がつかなくなることも多く、天引きの立証は元従業員には厳しい」とハードルの高さを指摘する。

 その一方、「元同僚などの詳細な証言で認めるケースはあり得る」とした上、「ただし、地方第三者委ごとに状況証拠をどの程度しらべるかは一律ではない」と述べ、判断の基準にあいまいさが残ると語った。

 証明資料がなくても証言の信ぴょう性から納付が認められたケースは少なくなく、第三者委の「認定第一号」となった神奈川の夫婦は「定額預金を解約し、幼い息子の手を引いて役所の窓口で支払った」と金額も明示して詳細に証言したことなどから認められている。【野倉恵】

毎日新聞 2009年4月12日 2時30分(最終更新 4月12日 3時03分)

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