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【主張】日本人初感染 「水際」切り替えも視野に
米国シカゴに住む6歳の日本人男児が新型インフルエンザに感染していることが分かった。国外での発症とはいえ、日本人の感染が確認されたのは初めてだ。
日本国内でも疑似症例の報告が相次ぎ、それに伴って課題も浮上している。問題点を洗い直し、国内で発生した場合の備えを整えておきたい。
東京都によると、発熱相談センターで病院に行くよう勧められた人が診察を断られたり、「外国人の友人が」とか「成田空港に勤務し」などと話したことで拒否された人もいた。医療機関側は院内感染を防ぐために診療を拒否したのだろうか。
しかし、国内で感染が広まってもウイルスの毒性は弱い。治療薬もある。通常の季節性インフルエンザの院内感染防止策で十分に対応できるので、医師として基本的な知識がありさえすれば、過剰な反応は避けられるはずだ。
風評被害を心配した結果との指摘もあるが、診療を拒否する医療機関はインフルエンザの院内感染防止策さえとれないことを宣伝しているようなものだ。逆に評判は著しく低下してしまうだろう。
一方で、一般の病院での感染拡大を防ぐために海外から帰国後10日以内に熱が出た人などには発熱外来が設けられている。該当する人に不便をかける面もあるが、流行の初期段階には必要な対策であることを理解したい。
海外から入国した邦人や外国人の健康観察が保健所や検疫所の職員不足から進んでいないところもある。人や予算には限りがあるので、入国時の検疫の際に住所や電話番号を正確に質問票に記入するなど、それぞれの立場で協力できることは協力すべきだろう。
同時に、隔離などを行う際には、患者への対応が差別的であってはならない。病院の冷たい対応や一般社会への気兼ねから自らの病状の報告を躊躇(ちゅうちょ)するような事態はくれぐれも避けたい。
厚生労働省は空港や港での検疫を強化し、ウイルスを水際で防ぐ対策に力を入れてきた。
だが、被害が世界各地に広がっている現状では、水際作戦にもおのずと限界がある。今後は国内で患者が増えることを想定し、適切な治療の提供を感染の拡大防止につなげる対策も重要だろう。人員配置も含め水際の検疫と医療提供とのバランスを考えて柔軟に対策を切り替える必要がある。