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WHO:「移植指針」先送り インフル対策優先

 【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)は7日、新型インフルエンザ対策を優先させるため、18日から27日まで予定されていた今年の総会日程を22日までの5日間に短縮することを決めた。WHO関係者が明らかにした。

 予算やインフルエンザ対策など最低限の内容に絞られる見込みで、総会で予定されていた国内での臓器移植拡大を求めるガイドラインの採択は来年の総会に先送りされる方向となった。

 渡航移植をめぐっては、国際移植学会が昨年5月、自国外での臓器移植の自粛を求める「イスタンブール宣言」を発表した。これまで日本人患者を受け入れていた米国やドイツの病院から、受け入れを断られるケースが報告されている。

 ◇法改正案目指す国会論議影響も

 WHOが海外での臓器移植自粛を求める指針決定を1年先送りしたことは、日本の臓器移植法改正案の議論にも影響しそうだ。今国会で同改正案成立を目指す動きが進んでいるのは、数カ月以内に行われる衆院選で議員の顔ぶれが変われば、一から議論し直さなくてはならなくなる上、今月WHOの指針が決まれば、海外で移植を受けるのが困難になりそうというのが理由だ。

 しかし、WHOの力点は臓器の不正売買防止にあり、指針が渡航移植をどこまで制限するかははっきりしない。修正法案づくりをリードした自民党の鴨下一郎衆院議員は、「海外での移植をやめようという方向性が変わったわけではない」と指摘する。

 各議員の死生観を問われる重いテーマだけに、拙速な審議を戒める声も根強く残る。今後、WHOに合わせ、結論を先送りする動きが出てくる可能性もある。【鈴木直】

毎日新聞 2009年5月8日 東京朝刊

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