2009-04-23
■[時事][ネットヲチ]まさかチャンネル桜が日本占領下における台湾での「差別問題」を告発しようとは。(追記あり)
Apemanさんのエントリー『NHK「シリーズJAPANデビュー」に自民議連が質問状?』についたni0615さんのコメントを拝見し、例のNHKジャパンデビュー台湾編でアレな人たちがアレコレ文句をつけている件で、チャンネル桜が番組に出演した柯徳三氏にインタビューしているのを知りました。ご紹介ありがとうございます。正直実際に見る前まではまたチャンネル桜の「台湾人は日本に感謝しているお」かよ…と思っていたんですが、これがとんでもないやぶへび!涙なくしてはみられません!
インタビュアーが柯徳三氏の著作「母国は日本、祖国は台湾―或る日本語族台湾人の告白 」に言及すると「(著作物の中の)日本にとって都合の悪い箇所は全部削除させられた」「出版社は印税をよこさず本を何十冊かよこしただけ」などと柯氏はその裏側を暴露。すると突然インタビューがとまりスタジオに切り替わり「桜の花出版はまじめな、いい出版会社だ」とかなんとか水島社長の釈明が始まる。電話インタビューシーンが挿入され柯氏は結局前言を撤回させられる。(個人的な印象としては無理やりっぽい)
「これだけ知性のある方でも事実と反することを言ってしまうものなんです」
じゃあやっぱり映画靖国問題でチャンネル桜がインタビューした際、刀匠が「騙された」と告白したのも「事実と反することをいってしまうもの」だったんですね。
インタビュアーが「日本の教育のよさ」についてひきだそうとしたら「日本人の教授から“台湾人はくさい”といっていじめられた」「(医科大学学生時代に)日本人の助教授は台湾人の患者を見向きもしなかった」「チャンコロといっていじめられた」「日本人は差別とか侮辱とかやっていた」と告発。日本時代はよかっただろ?と誘導されるもなんのそのチャンコロと言われたとか配給も日本人とは違っていたとか台湾人がいかに日本から差別されていたかを飛ばしまくりです。
インタビュアーが「(NHKの)番組は政治的意図があるんじゃ…」と水を向けると「私はなんとも思いません。どう解釈しようが日本人の勝手」と断言。「右よりの日本人のともだちからいろんなことを言われたが弁解がましいことは一切いわない。日本人が勝手にいえばいい。私たち台湾人も勝手に言う。あんたたちに捨てられた人たちなんだから」と喝破。
「日本やアメリカでがーがーいってる台湾人、名前は言いませんが、なんで台湾帰ってこないんだ、台湾帰ってきて民族運動やれといいたい。向こうに籍があるんだから台湾人じゃなくて日本人なんだよ」(これは…金ry)
インタビュアー「日本の統治のいいところわるいところ、パーセンテージにすると」
柯徳三氏「はんはんだね」
柯徳三氏「あんたら右の人たちでしょ?右の人に翻弄されて左の人に翻弄されてなんていっていいかわからない」
だらだら編集せずに垂れ流すってのは映画でやられると迷惑千万ですが、インタビューにおいてはその限りではないと思いました。こういう場合は諸手を挙げて賛成したいものです。やー、初めてチャンネル桜に感謝したくなりましたよ。
まあもっともこれに懲りて台湾人を自説の補強に都合よく使うのはやめてくれればいいんですけどね。
◆それにしても
それにしてもこのインタビュー、「配給は日本人が白砂糖で台湾人は黒砂糖だった」等々非常に貴重な発言がたくさんあって、こんなところで無駄に消費されるのがとてつもなくもったいないです。著作が読みたくなりました。でも本屋で買っても印税がいかないそうだから、出版社から押し付けられた本を直接購入して、少しでも還元できればと思いました。できれば削除された「日本に不都合な」文章も復活させた完全版をどこかのまっとうな出版社からだしてほしいものだ。
◆さらに追記
なにか勘違いしている人がいるようだけど、柯徳三氏のなにがすごいってチャンネル桜が台湾人を自説に都合よくつかおうとして失敗していることも確かにそうなんだけど、なんといってもその強烈かつ熾烈な諧謔精神というかそこから照らし出される「都合の悪い日本」像にこそ注目すべきだと私は思い、ゆえにここにご紹介した次第。自説に都合がいいからひっぱってきたわけではない。「日本人に生まれなかったのか」と悩んだ台湾人がやがて「自分は台湾人である」とアンデンティティーを「占領下の日本」の中で獲得していく経緯や、「日本もいいことをしたでしょう?」という誘導に「差別をしないいい日本人もいましたよ」と答えるやりとりを観ていけば、(柯氏いわく)「左に都合よく利用しようとした」?NHKも、「右に都合よく利用しようとした」チャンネル桜も(結果的に)「都合の悪い日本」像を「われわれ」の眼前に突きつけることになっている状況を自覚せざるを得ない。「われわれ」がすべきなのは右だの左だのと互いを揶揄しあうことではなく、その「都合の悪い日本」を直視し、その中で浮かび上がるアンビバレンツな「占領下の台湾人」を自身にひきつけて捉えることではないかと思う。それは「あの時代」をどう考え、そして「日本がしたこと」「しないこと」について内省することに他ならない。
「見捨てた」「忘れてきた」“日本語を話す台湾人”によって日本に対する「肯定的な空気」が作られてきたのは事実だと思う。だがそれに甘えて「占領下の台湾」を美化し、「あの戦争で日本がなにをしたのか」ということに目をつぶり語らずにいれば、やがてその空気もはかなく消え、「いい日本人もいた」という言葉だけが「台湾人の記憶」から抜け落ちていくだろう。柯氏の「日本人は勝手にいえばいい。私たち台湾人も勝手に言う。あんたたちに捨てられた人たちなんだから」という言葉がいつまでも残る。いつになったら「あの戦争」「あの時代」を冷静に語れる日がくるんだろうねえ。
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