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温室効果ガス削減:中期目標、削減率は政策次第 問われる将来像

 2020年までの温室効果ガス削減目標(中期目標)について、政府の検討委員会が今月、候補となる90年比4%増から25%減までの6案をまとめた。麻生太郎首相は6月末までに一つに決めるが、目標によって私たちの生活や日本の国際社会での役割が左右される。私たちは将来どんな生活や世界を望み、どんな目標を持つべきか。2回にわたって考える。【大場あい】

 京都議定書は先進国に08~12年の排出目標を義務づけた。日本は年平均排出量を90年比で6%削減する。中期目標をめぐる議論は、13年以降の枠組みを決める交渉で焦点になっている。

 検討委は、▽実現可能性▽他の先進国との負担の公平性▽経済や国民生活への影響--などの視点で、目標を決めるときの「考え方」を六つに絞った。その上で環境やエネルギー、経済の専門家が「考え方」ごとに目標値や経済影響を分析。ただ、温暖化に伴う海面上昇などの被害や経済危機の影響は考慮していない。

   ×   ×

 目標案のうち、実現に必要な具体策や費用を示したのは、(1)4%増(3)7%減(5)15%減(6)25%減--の4案。(2)1%増~5%減(4)8~17%減は、他先進国との公平性を重視して分析した。

 (1)4%増は、経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」の努力継続ケースに対応する。今の削減努力を続けるので、現状より省エネ機器は普及する。日本は90年以降、排出量が増加傾向で、90年基準では削減にはならない。

 (3)7%減は、設備などを新たに導入する場合、一定程度最先端のものにすることを前提にした。車ならハイブリッドなど次世代車に、家電も省エネ性能の高いものを選ぶ。

 日本エネルギー経済研究所の伊藤浩吉常務理事は「エコカー減税効果で、今年は次世代車が新車販売の5~10%を占めるかもしれない」と見る。エコポイントによる省エネ家電普及も期待できる。だが、(3)の想定である「次世代車が新車の50%」に及ばない。伊藤さんは「20年までの短期では『(3)7%減』が精いっぱいではないか」と語る。

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 日本の07年度排出量は90年比で8・7%増(速報値)。もし「(5)15%減」となると、国民は相当我慢を強いられるのだろうか。

 国立環境研究所(国環研)は、15%減を可能にするモデルを提案した。ある世帯が戸建て住宅を購入し乗用車も新車に買い替える。この場合、断熱性能を強化した住宅や高効率給湯器には政府や自治体の補助金が出ると想定。さらに、10年で太陽光発電設備の費用が回収できる固定価格買取制度が実施されれば、光熱費節約などで、初期投資の追加以上の恩恵があるという。

 国環研の試算では、エネルギー価格の高騰や家電製品の増加などで、省エネ対策をしないと1世帯当たりの20年の平均光熱費は05年より約1割増える。これに対し、理想的な超省エネ家庭では年12万円程度削減できる。分析した藤野純一主任研究員は「10年から抜本的な省エネ策を導入すれば次世代車、省エネ住宅・設備が加速的に普及し、コストも下がる。政策次第で15%減は可能だ」と話す。

毎日新聞 2009年4月27日 東京朝刊

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