第1回

勝間和代の『誰でも出来る』日本支配計画更新情報と最新ニュースはこちら

自分の力で日本の未来、世界の未来を変えられる。そのようなこと、あなたは即座に信じられますか? ほとんどの人が「信じられない」と答えるはずです。しかし、じつは世の中のいろいろなことは、意外と少数の人たちの意志で動いているのです。しかも、その少数の人とは、権力者に限らず、あなたのような普通の人だったりします。

私がそのこと、すなわち、「世の中のいろいろなことは、意外と少数の人たちの意志で動いている」ということを最初に実感したのは、大企業のコンサルティングを20代で始めた時です。誰しもが知っている大企業のさまざまな新製品・新サービスの開発や、その広告宣伝には、山ほどの人が関係しています。その中で、個人の意志など無視されると思うかもしれませんが、コンサルタントとして端から見ていると、一担当者の「強い思い」に多数の人が共感して生まれたものが多いことに驚きます。もちろん、企業オーナーの「思いつき」がもとになることもありますが、たいていは、現場の一人、せいぜい数人の思いから発していることがほとんどです。逆にその「強い思い」を持つ少数がいないと、どれだけ大多数でお金をかけても、プロジェクトは失敗するのです。

そして実際、私自身は一雇われ経営コンサルタントにすぎませんでしたが、「強い思い」を持って書いた企画書や分析は、企業のさまざまな意志決定に影響を与えました。研究開発費の割り当て方法や新製品・サービスの開発などさまざまな分野において、自分の提案が受け入れられ、世間にも影響が及んでいることを肌身に感じてきました。私の立場は、弱いものでしたが、影響力を持てたのは、私の「強い思い」の結果です。

さらに、企業だけではなく、政治レベルでも同じことは起こりえます。例えば猪口邦子議員が初代少子化・男女共同参画担当大臣だった時代に、少子化対策を中心としたさまざまな施策を構築しましたが、その基礎となったのは、猪口氏が全国レベルで市民に対して行脚をしながら、企業や働く母親、そして専業主婦や保育園などの現場の声を一つ一つ、実際に聞き歩き、汲み取っていったものでした。一市民の声であっても、施政者のところに届けば、影響を与えられます。しかし、猪口氏のように政治家が行脚して一市民の声を拾うことは稀なので、施政者のところへと声を届けるためには、「強い思い」と工夫が必要です。

実際、「強い思い」を持ち、自分の主張をし続け、日本を大きく変えた人がいます。もともと大学教授という影響力の大きい立場ではありましたが、一民間人であった竹中平蔵氏です。竹中氏は「このような形で日本の経済を変える」という主張を長年し続け、それが施政者である小泉氏の目に止まりました。そして、「小泉氏が首相になったら入閣して改革を手伝う」という「男の約束」をし、その約束を果たしました。大臣として入閣し、さまざまな抵抗勢力と戦いながら、郵政民営化や財政の三位一体改革などを主張通り実現しました。

竹中氏から教えられて、「なるほど」と最近、腑に落ちた話があります。普通、竹中氏のように短期間で大がかりな法案を通すのは、至難の業です。では、どうやって日本を変えるような大がかりな法案を通したのか? 答えは「通常の立法プロセスを飛び越す」です。「国民から信任を受けた首相がマニフェストで掲げたこと」であれば、通常の立法プロセスを飛び越せるのです。

通常の立法プロセスとは、官僚が起案し、審議会にかけ、与野党の調整を行って閣議を通し、政府提出法案として国会の承認を受けるというもので、法案設立まで何年もかかる上、多くの改革案はその利害調整のプロセスの途中で骨抜きになってしまいます。

ところが、郵政民営化のような大きな流れを選挙とセットで掲げることにより国民の信任を取れば、それはすでに国民投票を経たのと同じ扱いになり、数ヵ月で立法までいけるということです。このようにして、小泉元首相と竹中氏は日本を変えました。彼らが日本を変えられたのは、権力者だから当たり前と思うかもしれません。けれども、今まで、彼らのように法案を通すことができた首相、政治家はいませんでした。彼らが、そのようなことを実現できたのは、「強い思い」を持ち、説明したような工夫をしたからなのです。

また、世界を変えた人物として、ワンガリ・マータイさんという女性を紹介したいと思います。マータイさんは2004年のノーベル平和賞受賞者ですが、1977年から「グリーン・ベルト・ムーブメント」といわれる植林活動をアフリカで行い、生まれた国のケニアにとどまらず、タンザニアやウガンダなど約20ヵ国に3,000万本以上の木を植え、緑化に成功しました。彼女がその活動を始めた時、それは小さな流れでしたが、「強い思い」を持ち、粘り強く活動を続けたことで、全世界を巻き込む活動にまで発展したのです。

日本をよりよい方向に変えるため、あるいは世界をよりよい方向に変えるためには、「チェンジ・メーカー(Change Maker)」と言われる変革者が必要ですが、私たち一人一人、誰もがそれになりうる資質を持っています。大切なのは、「強い思い」を持ち、その思いを粘り強く持ち続けることです。

周りからの協力も得られず、一人で「強い思い」を持ち続けることは、非常に難しいことです。けれども、チェンジの先、すなわち、どのような未来に日本を、世界を変えたいかという明確なビジョンや将来の姿があれば、孤独な思いにも耐えることができます。単に自分が世界を変えたい、支配をしたいという欲望だけではサポーターも増えませんし、未来もその方向に流れません。

重要なことは、住みたい社会、暮らしたい未来をビビッドに描き、それが今とどのように違っていて、何がギャップで、障害は何であるかを理解することです。そしてその障害を克服するための具体的なステップさえ明確になれば、あとは私たち一人一人が一つ一つ、着実にそのステップを実行し、適切な働きかけをしていくことで、まるでワンガリ・マータイさんの植林のように、あなたの考え方が日本に根付き、育ち、気がついたらこんなに変わっていた、ということになるのです。

私たちは何を思い込んでいて、どこが問題で、何を変えていくと、よりよい日本、よりよい世界が実現できるのか、ぜひ一緒に計画をこのコラムで作っていきましょう。

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