−−嫁ぐ日を待つ淑女たち−−
進化するダッチワイフ事情(3)

ホンモノ以上の人工名器

 さまざまな思いで購入されるダッチワイフだが、やはり性欲処理用の人形としての役割は重要だろう。

 特殊ボディー専門メーカー「オリエント工業」の人形に共通して使われている人工局部は『スパイラルホール』(定価1万5000円)と呼ばれる商品だ。

 医療用のシリコンを使ったピンク色の筒状本体に、ローションを数滴垂らし、同社代表の土屋日出夫氏が目の前に差し向ける。

 「さぁ、ちょっと指を入れてみてください」

 薦められるままに指を挿入すると細かいヒダヒダが指にからみついてくる。

 内部壁を指で押すとほどよい弾力があり押し返してくる。締まりもかなり良い。少し調子に乗って指を深く挿入するとコツンと指先が突起にぶつかった。

 「それがスライド式になっている子宮口です。素材は若干固めの医療用シリコンを使ってます。どうですか?」

 締め付け感といい、感触といい、もし、生身の女性であればかなりの“名器”といえるだろう。実によくできたリアルな感触だと思った。

 「見た目をソックリにするのは簡単なんです。型を取ればイイだけですから。でも、女性特有の感触を再現するのが難しかった。自分でも試してみたんですが、コレならどなたでも満足していただけるハズです」

 実際に使用するときはダッチワイフにホールソケットをつけ本体を装着する。スイライド式子宮口の位置を移動することで内部の圧力調整も可能だ。

 唯一、気になった体温の問題もスパイラスホールに耐熱性のガラス管を事前に挿入することで解消される。

 「直接本体をお湯につける方法も考えたんですが、それだとシリコンの耐久性に問題がでるんですね。早々に裂けてしまったりします。そこで、お湯を入れたガラス管で温める方法を採用したんです」

 むしろ、この人工名器に慣れてしまうと生身の女では満足できなくなる恐れすら感じた。

亡き妻や娘に似せて…

 これほど完ぺきな人工局部だが、この部分を購入しない場合もある、という。

 「だから性欲の処理用に購入されるだけじゃない、って感じることもあります。亡くなられた奥様や娘さんに似せてつくるコトができないか、っていう相談を受けたんです」

 そこで、同社が始めたのが頭部のオーダーメードによる人形だ。これは、生存している女性から直接、型取りをして製作する場合と、写真やイラストから製作する場合がある。

 「ライフマスク方式ですと対象の女性にこちらまで来ていただかなくてはいけないんですが、細かいシワまで再現できます。写真やイラストの場合は点数が多ければおおいほどリアルに再現できます。故人の生前の写真から復元することも可能です」

 もちろん、有名人など写真から顔を復元することも可能だが、肖像権の問題が発生するため顔の造形の一部は変えることが条件となる。

 ショールームで試作用の某女性タレントの若干鼻が高くなった粘度原型の写真を見せてもらった。むしろこの方が美人だと思える驚きの出来栄え。

 「この段階から細かい注文を受けて修正することも可能です。お客さんの満足のいくものを作らなければ意味がないですから」

 このオーダーメードは頭部のみの復元で35万円から。全身込みだと60万円以上から。本体(体部分)には最新のマグネットジョイントシリーズと同じパーツが使われる。製作日数は約40日。

 「もし、全身すべてを完ぺきにオーダーメードで製作したら100万、いや、いくらかかるかわかりません。これが、現時点での最高レベルだと思います」

 土屋氏がハンディキャップを持つ顧客から、『オーダーメードで』という注文を受けてから20年。ようやくダッチワイフの最終形が完成しつつあるようだ。



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