女性運動は「資金離れ」にどう対応するか?
投稿日時: 2005-11-29 (83 ヒット)「女性と開発協会(AWID)」が世界各地のメンバー団体を対象に行ったで、多くの女性団体が活動資金を得るのに苦労している状況が具体的に明らかになった。調査レポートから要約をかいつまんで紹介する。
● 半数の団体が、5年前に比べて受け取る活動資金が減っていると回答。5年前よりも増えていると答えた団体、変わらないと答えた団体はそれぞれ25%だった。10年前に比べて資金集めが楽になったと答えた団体は全体の24%に過ぎず、ほとんどが資金を得るのはむずかしくなっていると答えている。
●活動助成金の提供者としては女性財団がもっとも多く、次いで国際NGO、第3位が海外援助および国際機関だった。
●特に資金を得にくい活動分野は、リプロダクティブ・ライツ、市民的・政治的権利、性的権利、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の権利、HIV/AIDS以外の健康など。
●スタッフの給与、運営、キャパシティ・ビルディングのための資金は得にくいが、メディア、ICT、リーダーシップ養成、ネットワーキングの資金は得やすい。
以下の数字からも、女性運動が全体的に資金不足の状況にあることがわかる。
●2003年に各国政府が拠出した開発援助額は合計で690億ドル。このうち3.6%にあたる25億ドルが、ジェンダー平等を目的のひとつとするプロジェクトにあてられていた。特にジェンダー平等を目的とする援助は、全ODA の0.6%にあたる4億ドルである。
●2003 年にグリーンピースが集めた資金は2億300万ドル、アムネスティは2億3千万ドル。国際フェミニスト団体のうち大手のイクオリティ・ナウは230万ドル、WEDOの2003年度予算は110万ドル、開発・人口活動センター(CEDPA)は3050万ドルだった。
●これまで女性運動の主要な資金提供者であった援助機関(スウェーデンのSIDAやアメリカのUSAID)が助成金削減に動いている。
女性運動からの資金離れ傾向の背景として、次のような要因が指摘できる。
●公的機関や財団は、女性の権利はこの10年の間に「流行遅れ」になったと感じている。
●「ジェンダー主流化」の概念についての混乱。公的開発機関や大手のNGOのなかには、ジェンダー主流化を単純に男性も対象にすること、と考える傾向があり、女性を対象とするプロジェクトに資金を出さなくなっている。
●財団における「企業化」の傾向も指摘される。多くの財団が、自ら社会変革のビジョンや戦略を探るよりも、援助対象グループにより厳格なマネジメントを求めるようになっており、また組織維持よりもプロジェクトを重視している。
こうした困難な状況の中で運動を進めていくためには、女性運動の側でも資源配分のポリティクスをよく理解し、資金提供者とよりよく渡りあうスキルを身につけることが必用だ。調査報告は、今までとは異なる新たな資金源を開発すること、財団コミュニティと強いつながりをもつグループと同盟を組むこと、他の女性団体と競争するのではなく連帯して資金提供者を動かすこと、公的機関や財団に女性運動の重要さを示して説得すること、そして、真のジェンダー主流化とは何かについて、議論を立て直すことを提言している。
レポートはアジア女性資料センターのライブラリでも閲覧できます。