海外

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

サッチャリズム:功罪問い否定派と肯定派が議論 英国

 【ロンドン笠原敏彦】金融規制緩和など「市場原理」の導入でその後の世界に多大な影響を与えたサッチャー英政権の誕生から5月で30年を迎えた。折からの国際金融・経済危機を受け、英国内では「サッチャリズム」の功罪を問い直す論議が噴き出し、その「実験失敗」を指摘する否定派と、逆に「原点回帰」を求める肯定派の間で見解は真っ二つに割れている。

 サッチャー元首相は1979年5月3日の総選挙で勝利。90年11月の辞任までの約11年半の首相在任中、「個人」と「市場」を重視するサッチャリズムに基づき、民営化や規制緩和、減税など大胆な改革を実施し、同国を経済低迷の「英国病」から救った。特に金融市場の自由化「ビッグバン」は特筆され、レーガン元米大統領との「新自由主義経済」は現在のグローバリズムの潮流となった。

 しかし、英国内でも、現在の危機の元凶とされる「市場原理主義」と重ね合わせてサッチャー路線への批判は強まっている。経済紙フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ギデオン・ラクマン氏は「サッチャー時代の終幕」と題した4月末の記事で「多くの英国民は30年間の(サッチャリズムの)実験は失敗したと結論づけている」と明記した。

 また、左派系ニュー・ステーツマン誌も「サッチャリズムが過去30年間の英国政治の思潮であったなら、その時代は終わった」と指摘。97年に保守党から政権奪取したブレア前首相の労働党(ニュー・レーバー)はサッチャリズムを継承したが、同党のブラウン現政権は最高所得税率を50%に引き上げることを目指すなど路線転換に踏み出している。

 これに対し、保守層中心の支持派は反論。デーリー・テレグラフ紙のサイモン・へファー氏は、現在の危機について「サッチャー氏の責任ではない。後継者らがその遺産を台無しにしただけだ」と主張する。支持派は、危機の原因を後継政権の政策に帰し、今こそ「財政均衡」など英国を復興させたサッチャリズムの原点に回帰すべきだと訴えている。

 危機の要因をめぐっては、金融機関の法外な「ボーナス」も批判される。サッチャー氏は「勤勉」と「質素さ」を国民に奨励したが、「鉄の女」と呼ばれた元首相も83歳で認知症を患い、反論の機会はなさそうだ。

毎日新聞 2009年5月5日 20時22分(最終更新 5月5日 21時43分)

検索:

関連記事

5月5日サッチャリズム:功罪問い否定派と肯定派が議論 英国

海外 最新記事

海外 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報