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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年05月01日

効果的な復習法を考える

語学に復習は大事だよ、反復練習だよ、とはよく耳にするものの、どのような反復練習が最も効果的なのだろうと考える人は少ないのではないでしょうか。そこで、自己流で単語リストを暗記し、いったん暗記してしまうと安心して、あとは格別復習などしないといったことになりがちです。しかし、暗記できたことを確認した時点では記憶にとどまっており、呼び出すのも簡単かも知れませんが,結局は時間の経過に伴って元の木阿弥です。エビングハウスの忘却曲線が教えてくれるとおり、一生懸命に単語などを覚えても、1時間経てば半分思い出せなくなり、あとはまさに忘却の彼方へと消えていく一方です。

なんの自慢にもなりませんが、アラビア文字、ハングル、ロシア文字の読み方をいったんは覚えたのに、復習などしないものですから、今は一切忘れています。まあ、こんなのは、一時的な酔狂なのでどうでもいいことですが、まじめに外国語をきちんとおぼえ、使い物になるようにしようというのであれば、そうも行きません。

この点、英語をはじめ外国語を教える側、学ぶ側に共通することかと思いますが、効果的記憶法とはどういうものかに対する問題意識があまりに薄いように思われます。事実、(高いけれど効果的で、人気のある) Pimsleur Method の創始者、Paul Pimsleur はこう嘆いています。[出典はModern Language Journalに掲載された論文

Probably no aspect of learning a foreign language is more important than memory. A student must remember several thousand words and a considerable number of processes for adapting and combining them to attain even a minimal proficiency.

Yet no aspect of language learning has been less well examined. While linguistic analysis and methods of teaching have developed rapidly, the problem of memory has remained virtually unexplored.

おそらく語学の諸側面において記憶ほど重要なものはない。学習者は、最低限の運用能力を身につけるためという程度でも、数千にのぼる単語を覚え、かつ、それを応用し、組み合せるのに要するプロセスも相当数記憶する必要がある。

ところが、この側面ほど研究されていないものもない。言語の分析や教授法といった面では急速な進歩が見られるのに、記憶の問題は実際上手つかずの状態が続いている。

当時、オハイオ州立大学にいた Pimsleur がこれを書いたのが 1967 年。今でも状況はそうは変わっていません。なにしろ費用対効果から考えてどういう順番で、どの範囲の単語から習得すべきなのかということ自体あまり考えずに、「むずかしい単語を知っている人イコール英語ができる人」という姿勢の英語教育が幅をきかせているぐらいですから、覚えた単語をどうしたら頭にきざみつけ、コミュニケーションに投入できるかといったことは二次的な問題と感じられるのでしょう。

それはともかく、Pimsleur がわずか3ページの論文で説いた効果的な記憶法はなるほどなと感心させられます。彼の Method をベースにした各国語の自習教材(音声のみでテキストなし)が売れ続けているのもうなづけます。

その効果的な記憶法の研究の出発点は下のグラフです。ここでは、縦軸が記憶量、横軸が時間の経過を示しており、時間が経つにつれて記憶量が減少していく様子が表れています。

memory%20fades.jpg

次のグラフは、まだある程度覚えている初期段階で、例えば6割り方覚えている段階で、一度復習をしておくと、右肩下がりの記憶減退にストップがかかり、元の状態にまで押し上げられる様子を示しています。これが Pimsleur の学習メソッドの発想の原点です。

memory%20reboosted.jpg

そして、彼の研究が光るのは、自分の研究の成果と他の実験心理学の成果を踏まえて、初期段階の復習は間隔を短く、そして、あとになってきたら間隔を広げながら復習するのが一番効果があるとの結論に至っている点で、グラフにするとこんな格好になります。Graduated interval recall とかspaced repetition と呼ばれる復習法で、Pimsleur メソッドの柱です。

spaced%20intervals.jpg

こうした徐々に復習の間隔を長くしていく方式は専門家の間では一種の常識とされているようで、糸井重里との対談、「海馬―脳は疲れない」 (新潮文庫) で知られる池谷裕二先生は「だれでも天才になれる 脳の仕組みと科学的勉強法」(ライオン社)の中で、2ヶ月間に4回の復習がもっともいいとした上で、学習した日の翌日に1回、そこから1週間後にもう1回復習したら、さらに2週間経ったところでもう1回やり、最後に、3回目の復習から1ヶ月経ったところでもう1回という復習方式を勧めています。

また語彙学習論の大家、Paul Nation も、その著書、Learning Vocabulary in Another Language (Cambridge University Press) において、Pimsleur の上の論文を a very clear and useful article と紹介し、Pimsleur 方式は所定の間隔で復習することにより、覚えた単語等の「寿命」が長くなるわけで、結局、覚えてからの時間が長いものほど忘れにくいのだという解釈を加えて、この方式を支持しています。

ところで、自分の中では、効果的な記憶保持のスキルとしての Pimsleur 方式が頭にあったものですから、あるとき、英語教育ビジネスで大活躍している H 氏の紹介で www.wordengine.jp のサイトをのぞいたときに、これがそのまま見事にグラフになっているのを見て、驚いたというか、痛く感心しました。いろいろと英語ビジネスのサイトを目にしていますが、先行研究の成果にのっとり、きちんと根拠を示しているものを見たのは初めてだったからです。それも道理で、Charles Browne 先生という英語教育の専門家を柱に、 Paul Nation 先生も手伝っているというのですから、素人の思いつきの域を出ない他のサイトと違うのは当たり前と言えば当たり前です。

同社から転載の許可を受けましたので、グラフをご覧ください。年間利用料1,000円だそうですが、基本単語にしろ、受験単語にしろ、まさに科学的復習法により「復習のタイミングですよ」と教えてくれる仕組みが組み込まれています。

wordenginememorychart.jpg


間を置いた反復学習システム からの転載です)

wordengineさんの関係者にお会いしたこともないぐらいで、なんの利害関係もないのですが、オンラインで単語を効率的に覚えて行こうという方には、ここのプログラムなら安心してお勧めできます。

何であれ、漫然と反復練習するよりは、みずからきちんと計画を立てて、初めは短い間隔で、あとの方は長めの間隔を置いて復習するのが、費用対効果アプローチという見地からも合理的であることは間違いありません。


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Comments

Pimsleurのグラフからすると、横軸が秒単位ですからわずか3秒で正答率60%を割り込んでしまうんですね。確かに最近英語の倍のエネルギーを注いでいる中国語初級の勉強を考えると、概要の分かっている英語と違って、発音のルールやSVOの流れがいまいち不安なため、文字列の集合に見えるためか瞬間的な記憶の定着が悪い気がします。

一方で最近はまっている英語の単語の暗記方法といえば、windowsのログインパスワードや社内イントラ・パスワードに覚えたいコロケーションの形で入れることです。各々PWは1日10回くらいスペルを手入力しますし、スペル間違いは跳ね返されるので口でそらんじて覚えるより定着しやすい気がします。あくまで自らの人体実験の結果ですけど、1週間置きにPW変更しても過去3ヶ月分の組み合わせはパッと口をついて出てくる感じです。

ちなみに今週のPWはpriority assignmentでした。以前の日向先生の記事ででprimary assignmentではダメというのを見て、そんなら正しいほうを脳に定着させようというところです。

[返信]

こんにちは。工夫のありようがあるものだと驚きました。これなら短時日のうちに成果が見えるようになってくることでしょうし,楽しみですね。

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