昨夏、本学の「各種メディアを活用した社会人基礎力の育成」プログラムが文部科学省より19年度現代GPとして選定を受けました。10月よりその実施を本格化し、この3月で半年が経過しました。この間の取組みの概要を以下に報告します。
本取組みは、大きく4つの柱からなります。第1は、「ワークショップ型ゼミナールの実施」です。必修のゼミナールにおいて、学生がチームで、PLAN(計画)−DO(実施)−SEE(チェック・改善)のマネジメント・サイクルを運用していくことを通じて、社会人基礎力を身につけていきます。
具体的には、昨年7月、1年の全ゼミナールは、それぞれが調査テーマを持って「名古屋港セミナー」に参加し、10月の大学祭でその成果は展示されました。加えて、いくつかのゼミナールでは大学祭での模擬店出店を通じて、マネジメント・サイクルを運用しました。また、11月には、やはり各ゼミナールが調査テーマを持って「学外セミナー」を実施しました。各ゼミナールの調査テーマと訪問先は次の通りでした。
井上ゼミナール「女子大生に人気のスウィーツは何か」 | → | デザート王国 |
金山ゼミナール「日本経済を実感する」 | → | オークマ |
後藤ゼミナール「世界の民族とそれぞれの文化の違い」 | → | リトルワールド |
代田ゼミナール「愛知とスウェーデンの関わり」 | → | 中部日本スウェーデン協会 |
角谷ゼミナール「店舗の顧客吸引力について」 | → | 中部国際空港セントレア |
久田ゼミナール「アメリカとセントレア」 | → | 中部国際空港セントレア |
水口ゼミナール「名古屋!食と文化と言葉」 | → | 中部国際空港セントレア |
光松ゼミナール「大須と栄のファッションの比較」 | → | 大須・栄、金山 |
これらの成果は、ゼミナール毎に選択した各種メディアを活用して情報発信されました。また、ゼミナール交流会においても成果等が報告されました。
取組みの柱の2つ目は、「各種メディアを活用した情報の発信」です。ワークショップ型ゼミナールで取組んだことがらをメディアコンテンツにまとめ、情報発信していく活動です。メディア制作自体がマネジメント・サイクルの運用となり、社会人基礎力のアップにつながりますが、この活動の効果としては、学生が楽しむこと、すなわち動機付けの側面が重視されます。
地域で活躍するメディア関係者を講師として招き、学生は、まずは、4つのメディア(コミュニティFM(愛知北FM放送)、新聞、ミニコミ誌、ホームページ)について、それらの魅力や運営の苦労について学びました。その後、ゼミナール毎にメディアを選択し、直接専門家の指導を受けながら、メディア制作を実施しました。すべてのゼミがFM放送に声をのせ、3つのゼミナールが新聞制作に、2つのゼミナールがミニコミ誌制作に、3つのゼミがホームページ制作に取組みました。
取組みの柱の3つ目は、「総合キャリアポートフォリオの活用」です。総合キャリアポートフォリオとは、キャリアデザインや社会人基礎力について、学生が記述した書類などをファイルしていくツールです。ファイルの中身ですが、キャリアデザインに関連するものとして、@就職力バランス診断の結果、Aキャリアデザイン関連授業で作成したレポートやワークシート、B就職活動のために作成した履歴書やエントリーシート、C業界研究や企業研究の記録、Dキャリアや就職について相談したときの記録等があります。社会人基礎力に関連するものとして、@ワークショップ型ゼミナールでの調査、A作成したメディアコンテンツ、B各学期に実施する社会人基礎力アセスメントの結果、B毎週のゼミナールの活動記録等があります。
総合キャリアポートフォリオは、ゼミナール指導教員の研究室に置かれており、学生が研究室を訪ねて活用する形をとっています。
取組みの柱の4つ目は、「社会人基礎力評価ツールの開発」です。社会人基礎力とは、周知のように、前に踏み出す力(アクション)としての「主体性」・「働きかけ力」・「実行力」、考え抜く力(シンキング)としての「課題発見力」・「計画力」・「創造力」、チームで働く力(チームワーク)としての「発信力」・「傾聴力」・「柔軟性」・「状況把握力」・「規律性」・「ストレスコントロール力」を指します。それぞれの力が現在どのくらい備わっていて、短大在学の2年間でどのくらい伸長するのか、それを測定するツールが必要となり、現在開発に取組んでいます。
本年度は、学生個々の社会人基礎力の測定、企業が短大生に求める社会人基礎力の調査、「メディア制作」場面での社会人基礎力測定設問の検討・開発等を進めてきました。
次のグラフは、本学学内合同企業展参加企業に協力いただき、実施した「企業が短大生に求める社会人基礎力調査」の結果です。どの力も「求める」と「ある程度求める」をあわせれば、90%弱以上になりますが、「求める」だけに着目すれば、90%を超える項目から30%程度に下がる項目まで「求める」力に差があることがわかります。短大生として備えておかなければならない社会人基礎力の第1は「規律性」であり、考え抜く力よりはチームで働く力や前に踏み出す力がより求められていることがわかります。