2006年 07月 05日
アメリカの学者の見た「日本統治」 日本統治下の生活者へのインタビュー
韓国研究者のヒルデ・カンは、2001年にアメリカ在住の韓国系住民51名に聞き取り調査を行った。(黒い傘の下で―植民地時代の朝鮮1910~1945) 韓国系アメリカ人を父に持つ女性研究者のカンは、最初,このインタビューを通じて、総督府の圧制を明らかにしようとする基本的意図を持っていたと思われる。 ところが、彼女の予想は裏切られた。カンは、聞き取り調査を、「当時、日本の統治下で朝鮮に暮らした人々は、ある場合には、正常な生活を営むことができた」と結論せざるをえなかったのである。 彼女の調査には、「日本人が朝鮮人民に対し、親切であったり、尊敬の態度を取ったりした」という証言や、「朝鮮人官僚が日本人の同僚と同じ給料、平等の待遇をえて、昇進の可能性もあった」という証言を読むことができる。 (これは、呉善花「オ・ソンファ)さんの「生活者の統治時代」(2000年 三交社)に記載された旧殖産銀行に勤務されていた朴承復さんの聞き取り調査に、これを裏付ける証言があります。 「あるとき、私は朝鮮人の出納人にこっそり教えてもらったことがあります。確かに、日本人、朝鮮人の差別はなく公平で、本当に真面目に仕事がよくできて能率の高い人にたくさん支払われていました。上・中・下があって、私は上でした。」) 日本人の「傲慢さ」や「野蛮な行為」についての証言はあったものの、「非人道的行為」の存在を主張したものは一人もいなかったのである。 その一方で、刑務所で朝鮮人の職員に拷問にかけられた体験を語る者もいれば、「朝鮮の人々の土地を奪ったのは。他の朝鮮人などであった」という指摘も見られた。 これは、朝鮮統治が、「日本人=悪、朝鮮人=被害者」という単純な構図では捉えきれないことを示している。 統治下の「朝鮮人民志願制度」 昨年、ハワイ大学のブランドン・パルマー教授は、「日本の戦争による朝鮮人動員1937~1945)のなかで、植民地時代の朝鮮労働者が、総督府に対して行った抵抗を詳しく述べながらも、「奴隷化された労働者」という表現は当てはまらない、と結論している。 なぜなら、彼らは自分たちの意思で契約を結ぶことができ、また、賃金も支払われていたからである。 パルマーは、朝鮮人民がさまざまな理由で、総督府と「大いに協力して」利益を得ていた事実を見逃してはならない、と指摘している。 パルマーの選んだテーマは、極めて挑戦的なものであった。「もし日本人が朝鮮人民を抑圧していたのが事実ならば、なぜ、彼らに兵士として銃を与えることが可能だったのか」と問うたからである。 「労働者動員」と「召集兵制度」について、パルマーは、朝鮮人民を労働者として動員する際、 総督府は恣意的な強制行為に出ようとせず、また出られなかった、と論じている。 例えば、日本本国で1938年に施行された「国家総動員法」を朝鮮に適用する際、総督府は極めて慎重であった。 法律の施行に3年の猶予を儲け、本格的な朝鮮人民の動員が行われたのは1944年になっ てからのことだ。また、同法は。日本人女性には適用されたが、朝鮮人の女性には適用されなかった。 また、「労働者として動員された人間は兵士として招集されない」というのも、日本本国にはなかった特例があった。 その理由として、パルマーは、朝鮮の労働者が国家主義や共産主義に煽動されるのを恐れていたことと、戦争開戦以降、日本、朝鮮半島ともに労働者不足に悩まされ、労働者の価値が上がっていたことを挙げている。 同様の理由から、日本政府や総督府は、強制的な招集兵制度の実現にも細心の注意を払っていた。 パルマーは、帝国議会において、「朝鮮人民を強制的に招集するとすれば、公平性は保たれるか」という議論が行われたことを指摘している。 また、日本軍にあって軍人として昇進した軍人が指揮官に任じられた例もある。朝鮮出身の将校の指揮の下に、日本人の兵士が置かれていたことにパルマーは注目する。 確かに、インド人指揮官がイギリス兵を指揮したり、インドネシア指揮官がオランダ兵に命令を下すといった図式は考えられないだろう。 先述の「生活者の統治時代」に、志願兵制度と召集兵制度についての記述がある。 また、朝鮮名のままで陸軍中将に任官された「洪思翊(コウシヨク)氏」は、あまりに有名である。 これについては、明日記す。 by kiyo5071 | 2006-07-05 01:03 | Comments(0)
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