nina's [ニナーズ]  : 偶数月の7日はニナーズ発売日。 2009 MAY
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ちはるの凹凸裏日記
ミートソースが取りもった幸運でゴールデンタイムの新番組のレギュラーに決まったちはるさん。一気に注目を浴びることになったが…。
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下積み生活から脱出!?
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 苦節5年目。遂にビッグチャンスを掴んだ。
  ゴールデンタイム注目の新番組でレギュラーが決まったのだ。

  興奮を隠しきれない飯島マネージャーの吉報からすごい勢いで追い風が吹き始めたような気がしていた。
  新番組の番宣がメディアで流れ始めると、雪だるま式に新たな仕事のオファーが舞い込んできた。早朝の情報番組のレギュラーが決まり、これまで考えられなかったような大きい仕事が増え、明らかに待遇も変わっていった。ほんの少し前まで鳴かず飛ばずのキャラクターモデルだった私が、新番組が決まって、たった1ヵ月余りの間に“期待の大型新人”になっていた。それはあくまでもメディアが作り上げた、一瞬のさざ波に過ぎなかったのだけど。

  私の運命を変えた『ウッチャンナンチャンの誰かがやらねば』という番組は、生放送で繰り広げられる新しいタイプのお茶の間コント劇場といった感じのものだった。放送作家役のウッチャンと、TV局でADとして働くナンチャンが同居するアパートの一室に様々な人達が集い、自作自演のビデオを観ながらワイワイ盛り上がるという内容。その頃から映画好きなウッチャンは、人気作品のパロディを丁寧に作り上げたり、ナンチャンは街の雑踏の中に物や人に扮して潜んで、それを見つけさせる『ナンチャンをさがせ!』というゲーム感覚のビデオを作ったりしていた。
  私の役どころは、同じアパートに住んでいる女子大生。ウッチャンナンチャンに可愛がられている妹的な存在といった感じで、毎回、何かしらの用事を作っては、兄さんたちのお部屋にお邪魔して、他のレギャラーメンバーやゲストの皆さんと一緒にビデオを観賞するのだ。初めての大役、しかも全国ネットの生放送というのは経験値の無い私にとってすごいプレッシャーで、本番の前夜は一睡も出来ないほど緊張していた。

  「田舎のお母さんから苺が届いたから食べないかなと思って…」
 自分が登場する時に決められたセリフ。それこそ一行か二行のこんなセリフの後は、ほとんどがアドリブで進んでいく。目の前でポンポンと交わされる会話を、引きつった笑顔を浮かべながら、ただただ聞いているしかなかった。たまに感想や意見を求められてもまごまごしてしまい、気の利いた返しなんて、一切出来なかった。
 自分の中では全く手応えが感じられず、やっぱり私なんかがやるべきじゃなかったんじゃないか? そんな不安とは裏腹に、新しいタイプのバラエティー番組は、注目を集め、視聴率もどんどん上がっていった。結果を何も出せない私もそれに便乗させて貰い、深夜や早朝の仕事が増えていたので、ついに市川の実家から事務所のある恵比寿に引っ越すことになった。

  実家の酒屋のトラックに少ない荷物を詰め込み、お父さんが仕事を休んで運んでくれた。
「おまえはもう子供じゃないって言うけど、お父さんやお母さんにとっては、いくつになっても子供なんだよ。辛いことがあったらいつでも帰ってこいよ…」
 そう言って、一万円札が何枚か入った封筒を私に手渡し、寂しそうに帰って行くお父さんを見送っていたら、自分が『北の国から』の純くんみたいに感じて、涙がでた。お札に泥はついてなかったけど。そうだ、いつでも応援してくれたお父さんやお母さんの為にも、これからは甘えることなく自分の人生を歩んでいかなくちゃいけないんだ。
  一人暮らしを始めたことで、より一層頑張らねば、と気合いを入れて仕事に臨んだけど、力が入れば入るほど考えれば考えるほど、本来の自分が出せず空回りしてしまう。特に『誰やら』では回を重ねるごとにパワーアップしていくメンバーについていけず、同じお茶の間のセットにいても、一人だけ取り残されているような気がしていた。

  そんな私を気にしてか、ウッチャンナンチャンも良く声を掛けてくれていた。ウッチャンは、現場ではあまり話す人ではなかったけど、自分の実家が酒屋だという事もあり、私の実家の話や家族の話とか仕事とはあまり関係無い話を時々優しく聞いてくれた。ナンチャンはちょっとイジメっ子っぽく、「おまえ、このままだと次の番組に出られないぞ」といった具合に、うだつの上がらない私にハッパを掛けてくれた。さすが、後の『はっぱ隊』だ(これも古いかな…)。でも、ナンチャンが私に意地悪を言う気持ちは理解できた。彼らは、私なんかとは較べものにならない重圧と戦っていたんだ。
  とんねるずさんがお休みの半年間という期間限定で『誰やら』をやるということは、当初から決まっていた。でも、その間高視聴率で頑張ったこの番組は、他の枠に移動して新たに始まることが決まったのだ。ナンチャンが言う次の番組とは、そのことだった。

  結果を出した者だけが生き残れる芸能界。
  私のこれまでの少ない経験から、次のチャンスはもう貰えないだろうと半ば諦めかけていた。
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プロフィール
ちはる/1970年3月24日生まれ。ミュージシャンの夫・渡辺俊美さんと愛息・登生君の3人家族。
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ちはるのちかごろ
TYPYの夏物撮影で、素敵なスタジオにいってきました。
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Vol.11/下積み生活vol.5〜ミートソースが取りもった幸運編〜
Vol.10/下積み生活vol.4〜モデル奮闘編〜
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Vol.8/下積み生活vol.2〜バイト編〜
Vol.7/下積み生活vol.1〜自暴自棄編〜
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Vol.4/高校中退
Vol.3/トラウマ
Vol.2/モルドバでの出会いで感じたこと
Vol.1/ヴィクトリアという名の少女
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vol.10/京橋花月による芝居『かさ』…
vol.9/「散歩の達人」12月号の撮影…
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vol.7/この4月、2階にお引っ越し…
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