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2009年05月01日 00:00 |
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ソウル事情=受験生に大人気 アラビア語 ミステリー 教えている高校1校もないのに |
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数十年前まで男子はドイツ語、女子はフランス語というのが一般的だった韓国の第2外国語事情。映画やドラマ、アニメを通して日本への興味が高まり、日本語は90年代頃から第2外国語として高い人気を誇っている。最近では中国との経済交流が活発になり、中国語人気も伸びている。
現在、韓国の高校生が第2外国語として学んでいる言語のうち、もっとも多く
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ソウル市龍山区にある イスラム教の寺院。アラビア語を学びにくる高校生は少なくないという
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の学校で採用されているのは日本語だ。ソウル市内の高校308校のうち、278校が日本語を第2外国語として教えている。採択率は90・9%だ。
ところが、学生が放課後開くのは、日本語でも中国語でもなく、アラビア語の教科書だ。
韓国の大手建設会社が、アラビア語が広く使われている中東諸国で高層ビルや橋の建設を請け負っていることは広く知られている。将来アラビア語を駆使して海外で活躍したいと考えている学生が多いのかと思えば、そうではないらしい。
学生たちの動機は実にシンプルだ。アラビア語は大学入試に有利なのである。
日本のセンター試験に当たる韓国の修学能力評価試験(修能)の第2外国語受験者の内訳を見ると、約10万人の受験者のうち、29・4%にあたる2万9178人がアラビア語を選択している。日本語受験者の2万7465人、中国語受験者の1万3445人を超え、トップなのだ。
学生に人気のアラビア語だが、韓国の高校約2100校のうち、正規課程でアラビア語を教えている学校は1カ所もない。実は、学生の需要に追いつけない学校側の対応に、アラビア語人気増のカラクリがある。
まず、履修者が少ないので、試験問題は簡単になる。修能のアラビア語は2カ月ほど基礎を学び、500単語ほどを覚えれば比較的容易に高得点が取れるという。
他言語の試験と比べ、得点が高いのがその次の理由だ。同じ第2外国語の試験でも、今年行われた修能では、アラビア語の満点が100点、フランス語の満点が69点に設定され、不可解な差がついた。アラビア語の試験で満点を取れば100点が加算されるが、フランス語で満点をとっても69点しか加算されないということになる。
フランス語を選択して第2外国語で60点取るのは至難の業だが、アラビア語を選択すれば簡単に60点以上が取れる。
受験生の間では「アラビア語はサービス科目」と言われ、情報は瞬く間に広まった。
アラビア語が修能科目に採択され、今年で5年目になる。1年目の2005年度入試では599人にすぎなかった受験者は、2007年に5000人を超え、2009年は3万人に迫る勢いだ。
特に教育熱心な富裕層が住むソウルの江南地区や盆唐市の予備校では、アラビア語講座が人気を集めている。韓国の2大予備校である大成学院と鐘路学院では、アラビア語が日本語を受講者数で上回っている。インターネット上で講義を行う既存のアラビア語講座はアクセス数が急増、新規にオンラインアラビア語講座を開設する業者も出始めている。
受験のためとはいえ、アラビア語を学ぶこと自体は悪いことではない。受験勉強を通じてアラビア語に興味を持つ学生もいるだろう。
ところが、韓国の大学でアラビア語を教えているのは韓国外大、釜山外大、明知大、朝鮮大の4校だけ。アラビア語はまさに受験のための“ツール”にしかなっていないのが現状だ。
学校で教えられていない言語を入試科目として正式に採用した教育部と、入試を有利に進めたいがためにアラビア語を学ぶ学生の両者が、この異常なアラビア語熱を生んだといえる。修能の内容を変更するにしろ、学校教育を充実させるにしろ、根本的な解決には時間を要するだろう。 |
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