「【週末に想う】痴漢冤罪に一石を投じた最高裁判決」の記事詳細：イザ！

　最近、電車に乗っていると、「線路に人が立ち入っていますので、安全確認ができるまで発車を見合わせています」と車内放送が流れ、しばし停車することが、よくある。あれは、鉄道関係者によると、「痴漢だ」といわれた男が線路に飛び降りて逃げているケースが多いのだという。

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記事本文の続き　映画にもなったが、女性が痴漢被害を訴えると、男性が「やっていない」と、いくら説明しても鉄道警察隊はほとんど耳を貸さないといわれる。痴漢は被害者の申し立てで事件となる親告罪だけに、逃げる男性の中には冤罪（えんざい）を恐れて、そうする人もいるのだろう。

　そんな世相に一石を投じたのが、４月１４日の最高裁判決だ。１審、２審では電車内で痴漢をしたとして強制わいせつ罪で有罪とされた大学教授を無罪としたのである。判決理由では、被害者の女子高生の供述だけしか証拠がなく、その供述に信用性がないとしていた。正直なところ、男性の立場からちょっとホッとした。

　痴漢被害者の言い分だけを一方的に聞いて、冤罪につながる風潮を戒めた判決ともいえるが、無罪を勝ち取っても、この大学教授が裁判に費やした３年の歳月は取り返しがつかない。大学は休職になり、世間からうしろ指をさされ、長年築いてきた信用や人間関係はズタズタになってしまっただろう。

　その大学教授は「たまたま条件が組み合わさって無罪を得られたが、同じような状況の人は大勢いる。今回の判決がその裁判にも影響があればうれしい」と語ったそうだが、これで痴漢冤罪が減るかどうかはわからない。

　痴漢行為はもちろん犯罪であり、痴漢は女性の敵だ。ただ、今回の判決は「痴漢というなら明確な証拠や整然とした証言が必要」と解釈することもでき、女性が痴漢の被害を申告しにくくなる恐れはある。部下の女性に感想を聞いたら「今回は冤罪だったかもしれないが、（別人に）痴漢されたことは確かだと思う。それを証明しろといわれても…」と困惑の表情だった。判決の受け止めは、男と女では、こうも違うのか。う～ん、むずかしい。

　（エフシージー総研　小林静雄／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）