【第76回】 2009年05月07日
麻生首相が存命をはかる「都議選ダブル総選挙」の真実味
公職選挙法で、総選挙の日程は告示から12日間と決まっている。となると、7月1日から7日までの一週間、麻生首相は全国をくまなく飛び回ることになる。おそらく、首相は、この半年間の経済対策の実績をアピールし続けることになるだろう。
そして、8日から10日の3日間がイタリアでのサミットだ。そこでは「外交の麻生」を十分にアピールし、11日には帰国する。その選挙最終日、打ち上げの午後8時まで、麻生首相は、サミットでの成果を誇り、大満足で遊説を終えることになるだろう。
つまり、この選挙日程ならば「経済の麻生」も、「外交の麻生」も、「元気な麻生」も、「決断の麻生」も、誰にも邪魔されることなく好きなだけアピールし、投票日を迎えることができるのだ。
永田町では、解散日についてのみ首相は嘘をついても構わない、とされる。その麻生首相は、5月4日の「内政懇」で「都議選とのダブル選挙を排除しない」と認めた。
解散権のない人物のコメントだけを根拠とする「解散報道」はまったく無意味だ。よって、筆者は、解散日を予測する報道を批判してきた。
そうした意味で都議選ダブルの記事は、自らの前言を覆すものになったかもしれない。
だが、権限を持った人物、つまり首相の意向を読み解き、分析することは、政治報道の必須だとも思う。よって、今回、筆者はあえて解散日報道に踏み切った。それが、批判的な反応のひとつであったことは確かだ。
いずれにせよ、解散・総選挙は半年以内にやってくる。自民か、民主か、どちらが政権を担うことになるだろう。それを決するのが有権者による投票だ。
そこで思い出さなくてはいけないことがひとつある。選挙結果が出た瞬間、どちらの党が政権を担うか、じつはすでに決まっているのだ。というのも、昨年秋の所信表明演説(「文藝春秋」論文でも)で麻生首相は次のように述べている。
「次の総選挙で比較第一党になった政党が政権を担うべきだ。それこそが憲政の常道だ」
有権者は、首相のこの宣言を忘れるべきではない。仮に、連立与党で政権を維持しようとしても、それは正統な政権ではない、麻生首相はそう公約したのだ。
政権継続か、下野か、麻生首相のみならず、自民党にとっても勝負の総選挙となる。
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」など著書多数。最新刊は「宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く」(ダイヤモンド社)。
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