【第76回】 2009年05月07日
麻生首相が存命をはかる「都議選ダブル総選挙」の真実味
ここで内容は重なるが、「週刊文春」の拙稿の趣旨を記しておこう(詳細は『週刊文春』で)。
都議選と衆院選の日程をできるだけ離してほしいという公明党からの要請が、じつは“都市伝説”であったことについては、昨年秋来、再三、本コラムで指摘してきた。よってこの点は省略する。
※第51回「憶測が風評を呼び大騒動に… 解散総選挙“空騒ぎ”の正体」参照
今回は「ダブル選挙」を補強する理由として、麻生首相の面子と自民党支持者の意向が加わった。
まず、麻生首相にしてみれば、「絶対ありえない」とされるダブル選挙をすることで、就任以来「決断できない首相」と揶揄され続けきたマスコミに一泡吹かせることができる。
一般有権者にしてみれば、総選挙日程など基本的にどうでもいいことなのだが、当事者にしてみれば、これがもっとも重要なことになるから不思議だ。
さらに、麻生首相にとっての「ダブル選挙」の効用はまだある。10年以上にわたる公明党との連立政権で、自民党内には反公明アレルギーの空気がこれまで以上に高まっている。
元来、自民党の古い支持層は、公明党・創価学会嫌いが多い。そこで「公明党斬り」を演出できる「ダブル選挙」をすることによって、離反していたそうした旧来の自民支持層からの支持を回復できる可能性が芽生えてくる。それは、選挙戦術的に大きな決断を下すだけではなく、選挙後の政権戦略においてもフリーハンドを握ることを意味する。
場合によっては、公明党抜きの政権、つまりは民主党との大連立やその一部との中連立も視野に入れることができるのだ。
さらに週刊文春では次のようにも書いた。
〈選挙中は、民主党の小沢代表が公設秘書の裁判で西松事件の釈明に追われる一方で、麻生首相はイタリアのG7サミットに出席し、景気回復の兆候を示し、日本の経済対策を世界にアピールできる。しかも選挙期間中のため、党首クラスしか放映できないテレビでは、オバマ大統領と握手する麻生首相の映像ばかりを繰り返し流さなくてはならなくなるだろう〉
さらに本コラムでは、選挙中の首相の遊説スケジュールを詳細に分析し、シミュレーションしてみよう。すると、次のようなことが見えてくる。
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」など著書多数。最新刊は「宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く」(ダイヤモンド社)。
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