消費者の活字離れや紙離れが進み「出版不況」が深刻だ。昨年の書店廃業数は1095店と、4年ぶりに1000店を超えている。
出版業界は90年代後半から出版不況と呼ばれる状態が続いており、近年では『読売ウィークリー』(読売新聞)や『月刊プレイボーイ』(集英社)などの有名雑誌が休刊に追い込まれたり、ユーリーグや草思社やアスコムなどの出版社が経営破たんしている。
ただそんな重い空気に包まれてる業界の中にも、元気のある企業が存在する。それが「遊べる本屋」を自称するヴィレッジヴァンガードだ。
ヴィレッジヴァンガードは書籍以外にも雑貨やCD・DVDなどを陳列する複合型書店で、2008年には261店舗まで展開、急成長中の書店。出版不況のなか毎年増収増益の拡大を続け、既存店の売上高も08年は前年同期比106.6%アップと前年を上回っている。
同社の強みは若者に支持を得ていることだ。インターネットの普及などで若者が本を読まなくなったといわれて久しいが、ヴィレッジヴァンガードでは特徴的な仕入れ法を実践し、若者の興味をかき立てている。たとえば大型書店のように大量仕入れは行わず、若者に強い関心を惹くような趣味性の高い書籍に絞って仕入れしている。この仕入や商品構成などの大部分は各店舗の店長に任せており、チェーンストアでありながら店舗は個性にあふれており、その店にしか売っていないレア商品も存在するという。大量仕入れのスケールメリットに頼らない、ある意味非常識な経営手法が功を奏している。
また客に強い支持を受けているのが商品のポップ(POP)広告だ。ポップは商品の特徴を説明した専用の用紙のことで、ユーモラスな文章で書籍を紹介し、購買意欲を煽っている。ポップ広告の内容は、製造元・販売元が用意した広告ではなく、商品を見た担当者の印象に基づく内容であることが人気の理由だ。最近では他の書店でも見られるが、同社のもっとも特徴的な販売マーケティングの1つとなっている。
成長を続ける同社だが、ただ気になるのは書籍売上の構成比が低下していること。書籍類の売上は07年5月期の18.3%から08年は15.6%に下がり雑貨類に押され気味だ。今後は出版業界の低迷という逆風にも負けず、書籍の売上を伸ばすことができるスタッフを育成していくことが課題となりそうだ。
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