インドネシアの首都ジャカルタでは、朝と夕方にある仕事を求めて大通りに立つ人たちが急増しています。 その背景には、世界的な不況と深刻な失業問題があります。 川野友裕記者が取材しました。
午前8時半、大渋滞のジャカルタの大通り。 その道端で、大勢の人たちが手を上げて立っている。 道端に立つ女性は「スリー・イン・ワンよ。多くて5万ルピア(約500円)、少なくて5,000ルピア(約50円)もらえるの」と語った。 スリー・イン・ワンは、ジャカルタ州政府が20年ほど前に導入した渋滞緩和策で、朝と夕方のラッシュ時に限り、町の中心部を走る車1台につき3人以上の乗車を義務づける条例。 違反すれば罰金が科せられる。 しかし、治安の悪さもあって、車から徒歩に変える人はなかなかいない。 そこで登場したのが、「ジョッキー」と呼ばれる人たち。 その多くが失業者で、人数が足りない車に同乗することで謝礼をもらう。 ジョッキーの女性は「子どもが学校に行けるように、(養育費のため)やっているんです」と語った。 また、別のジョッキーは「僕はちゃんとした大学を出たけど、仕事がない。お金が必要だからこういうことをしている」と語った。 そこで、川野記者が、実際に車が本当につかまるのかジョッキーをしてみた。 女性のほうがつかまりやすいようで、およそ30分ほどやってみたが、川野記者に止まってくれる車はなかった。 ジョッキーは「(記者に車が止まらなかったのは?)あなたは体が大きくて怖いからだよ」と語った。 ジョッキーにまつわるトラブルは少なくない。 乗った車で金品を盗むジョッキーがいる一方で、暴力事件などに巻き込まれるジョッキーもいる。 ジャカルタ州運輸局は「ジョッキーをなくすのは難しいが、増えないように監視を続けます」と語った。 インドネシアの2008年の失業率は8.4%。 政府の失業対策は進まず、路上に立つ市民は増え続ける一方。
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