最終更新: 2009/05/07 07:11

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裁判員制度スタート 職業裁判官も無罪判決を出すのが難しいという実態に迫りました。

5月21日から裁判員制度がスタート。
事件を裁く難しさをお伝えします。
犯行を否認する被告の有罪率は、およそ98%。
日本は、被告が無罪となることが極めて少ないといわれています。
その理由の1つとして、職業裁判官にとっても無罪判決を出すのは難しいという現実があります。
その実態に迫りました。

街の人は「たぶん、(裁判官に)言われたら、うんうんってなっちゃうと思います」、「素人だから、(刑罰が)どこまでが重くて、どこまでが軽いかわからないよね」などと話した。
まもなく始まる裁判員制度では、有罪か無罪か判断したうえで、有罪の場合は、懲役何年かなどの量刑も判断しなければならない。
しかし、今までの職業裁判官による裁判では、犯行を否認している被告でも、およそ98%が有罪となる現実があった。
埼玉県のさいたま地裁(旧浦和地裁)の過去の判決でも、毎年の無罪率は低い。
そんな中、ある5年間は、無罪判決が多く出された。
その理由は、1人の裁判長にあった。
当時の浦和地裁で裁判長を務めていたのは、法政大法科大学院教授の木谷 明さん(71)。
実に30件以上の無罪判決にかかわり、そのほとんどで検察が控訴せず、無罪が確定した。
1985年、浦和駅前のデパートで派遣店員として勤めていた未婚の女性。
周囲に妊娠を隠し、医務室で1人の男の子をこっそりと出産した。
看護師が気づき、病院に運ばれたが、男の子はすでに死亡していて、警察は子どもを窒息死させたとして、殺人の疑いで母親を逮捕した。
検察側の供述調書には、「子宮が開く感じがして子どもが生まれた。その後、子どもの顔に足を押しつけた」との内容が書かれていた。
しかし母親は、裁判では一転、起訴事実を否認した。
木谷さんは「主任弁護人が、まだ出産を経験してまもなくの女性弁護士だったんです。その弁護士が言うには、生まれる時に子宮が開くなんて絶対にわかりませんと」と語った。
裁判では、女性が出産わずか4日後に長時間いすに座らされ、取り調べを受けていたことも発覚した。
自白の信用性が疑われ、木谷さんは、無罪判決を言い渡した。
木谷さんは「取調官はうそを言うはずがないと、こういうように考えてしまうと、被告人の弁解がいかにもうそっぽく見えちゃう、聞こえてきちゃう。そういう点をよくよく見極めないといけないから、無罪判決を出すのは非常に難しい」と語った。
木谷さんが下した数々の無罪判決文。
検察側の矛盾を見つけ出し、納得できる判決を導き出すために費やした膨大な時間と労力の証しだった。
木谷さんは「女性も入るでしょう、出産経験のある人も入るでしょう。そういう裁判体で合議をすれば、この自白調書はおかしいということが、わりと簡単に見抜けると思いますね」と語った。
裁判員制度では、可能なかぎり冤罪(えんざい)を防ぐルールもつくられている。
公判後の評議では、多数決で有罪か無罪か決めるが、有罪の場合は、職業裁判官が最低1人同意しなければならない。
裁判員5人以上が無罪を主張すれば、職業裁判官が全員有罪に回っても無罪となる。
また、裁判員全員が有罪を主張しても、職業裁判官が全員無罪とすれば、多数決にかかわらず無罪となる。
木谷さんは「被告人を裁くんじゃなくて、事件を裁くんだと。刑事裁判というのは、この人が犯人かどうかということを決めるんじゃない。それは神様しか決められないんですよ」と語った。

(05/05 12:52)


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