ロゴ:クローズアップ

  衛藤晟一厚生労働部会長の年金問題基礎講座(4)
   少子高齢化と年金制度

年金支える力に対応する「マクロ経済スライド」
図表:
わが国の人口構造の推移  日本の人口が九千万人を割り、そのうち高齢者が四割を占める―――。驚かないでください。およそ五十年後にはこうなるのです。出生率が下がり、寿命が延びたことからわが国の少子高齢化は急速に進みました。
 「人生五十年」といわれた時代には、一年に二百七十万人の子供が生まれていましたが、「人生八十年」となった現在は百万人ちょっと。働いて保険料を払う人の数が減る一方で、年金を受け取る高齢者が増加し、受給期間も長期化しています。
 今は現役世代(十五〜六十四歳)三・三人で一人の高齢者を支えていますが、十年後には四人に一人が六十五歳以上となり、二十年もすれば二人で一人の高齢者を支える時代がくるのです。
 人口の年齢構成が変わったのですから、年金額は賃金や物価の上昇をそのまま反映させるというわけにはいきません。
 そこでわが党が決定した「年金100年安心プラン」では「マクロ経済スライド」という新しい考え方を導入しました。簡単にいうと、社会全体の年金を支える力に応じて、年金の給付水準を調整する仕組みです。少子高齢化社会にあっても揺らぐことのない年金制度を構築するための重要な改革の柱です。

安定した年金制度構築は若い世代にとっても重要
 若い世代の中には「少子高齢化によって自分たちの負担が極端に重くなってしまう。年金で自分たちは損をする」と思っている人がいるかもしれません。
 しかし、第二回講座で説明したとおり、昭和六十年以降に生まれた若い人も国民年金で一・七倍、厚生年金だと二・三倍の給付が受けられるのです。
 また、年金制度があるからこそ、高齢となった自分の親の経済的な心配をしないですむという面もあります。年金制度はお年寄りだけのためではなく、若い人にとっても大切なものなのです。

目先の出生率低下に一喜一憂の必要なし
 少子高齢化が進めば確かに年金財政に影響します。よく、出生率が下がったことを理由に「年金100年安心プラン」が破たんしたのではないかと心配する人がいますが、そんなことはありません。ご安心ください。
 出生率が実際に年金財政に影響を与えるのは今、赤ちゃんである人が成人を迎える二十年先のことです。目先の出生率だけを見て一喜一憂することはありません。
 それに、年金財政は出生率だけでなく、積立金の実質的な運用利回り、賃金・物価の上昇率、被保険者数など経済・雇用の動向にも左右されます。
 年金財政の安定のために大切なのは、そうした経済環境による要素が大きいのです。
 実際、最近の景気回復を反映し、たとえ、出生率が回復せず、ほぼ横ばいであったとしても、五十年後の給付水準は政府の約束した「現役収入の五〇%」を確保できる見通しになっています。

子育て世帯の負担減で少子化の流れを変える
 一方、私は少子化の流れを変えることはじゅうぶん可能だと考えています。未婚者の九割はいずれ結婚したいと考えており、希望する子供の数は男女とも「二人以上」です。
 結婚や出産に関する希望と現実のギャップを、三分の一解消するだけでも出生率は相当回復します。そのためにも少子化対策を強力に進める必要があります。
 子育てに専念できるようにするには、子育て世帯の負担を減らし、産みやすく、育てやすくなる支援策をさらに拡充しなければなりません。
 子育てと仕事の両立を支援する様々な制度がありますが、このような制度を利用しやすくする職場環境づくりも大切です。
 新しい少子化対策では、妊娠・出産から高校・大学生期にいたるまでを四期に分けて子育て支援策を決めています。生後四カ月までの全戸訪問事業、児童手当増額、育児休業給付の引き上げなどを実施していきます。


1枚のカードで年金、医療、介護をカバー

Q.社会保障電子通帳(カード)とはどのようなものですか。
 政府は平成二十三年度にも社会保障電子通帳(カード)を導入する方針を打ち出しています。
 このカードには社会保障全体の情報が入っていて、一枚で年金手帳・健康保険証・介護保険証の役割を果たすものです。
 これまでいくら保険料を払い、将来の給付がどれくらいになるのかも、自宅のパソコンや社会保険事務所の専用端末から、いつでも確認できるようになります。
 ICチップが組み込まれているので、セキュリティーは万全。偽造の心配がなく、プライバシーも守られます。年金情報が直接記載される紙と違って、他人から見られる心配もありません。もちろん、一人に一枚が交付され、番号の重複はありません。
 住民基本台帳とも連携し、転居や転職、結婚などで姓が変わった場合でも、年金記録にしっかり反映され、写真をつければ身分証明書にもなります。
 今は年金や医療などの番号は制度ごとに割り振られていますが、これを統一した「社会保障番号」の導入も必要になってくるかもしれません。


(党機関紙「自由民主」 2007/12/11号掲載)