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  衛藤晟一厚生労働部会長の年金問題基礎講座(3)
   年金100年安心プラン

保険料の引き上げを抑え給付水準の下限を明記
図表:
国民の4人に1人が年金を受給
高齢期の生活設計で年金を頼りにする人は7割  毎年四十兆円を超える年金が約三千万人のお年寄りに、滞りなく支払われていることを、ご存じですか? その財源となる年金積立金の財政状況は極めて堅調ですが、少子化の急速な進行により、年金を支える力が弱くなっていることも事実です。
 わが党が推し進めている年金改革は、おおむね百年という長期間を見通して、高齢者が受け取る給付と若い世代の負担のバランスを図る仕組みです。
 平成十六年に決められた「年金100年安心プラン」の第一のポイントは、際限なく上がる保険料に上限を設けたことでした。
 サラリーマンなどが入っている厚生年金保険料の引き上げは平成二十九年度まで行われ、それ以降は年収の一八・三%(労使折半で個人負担はこの半分)で固定されます。これ以上は上がらないと理解してください。同じように、現在一万四千百円の国民年金保険料も少しずつ高くなって、平成二十九年度に月一万六千九百円となりますが、それ以降は上がりません。
 二つ目は、高齢者が受け取る年金について、モデル世帯で「現役世代のサラリーマンの手取り収入の五〇%」という下限を設けたことです。長期的に調整するのですから、物価が下がらない限り、すでに年金をもらっている人の年金の「額」が減ることはありません。十分とは言えませんが、老後生活の基本的部分を支える給付水準は確保したつもりです。
 三つ目のポイントとして年金制度を支える力を強くするため、二年後に基礎年金の国庫負担割合を五割に引き上げることにしました。これについては、後で詳しく説明します。また、積立金を取り崩すという政策転換によって安定財源を確保しました。
 以上が現在行われている「年金100年安心プラン」のポイントです。簡単に言えば、現役世代が負担する保険料を少し上げさせていただき、年金をもらう高齢者には現状維持で我慢していただくという仕組みです。
 改革には痛みが伴いますが、避けて通ることはできません。取り組みを遅らせれば、それだけ若い人の負担を増やすことになり、老後の生活を支える年金制度そのものが崩壊してしまうのです。

基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げる
 二十歳以上の全員を対象とする基礎年金の国庫負担割合を増やすのは、安定的な年金制度を維持するためです。
 国の負担増が実現すれば、保険料を四十年間納めた高齢者が受け取る月額六万六千円の年金のうち半分が税金の部分となります。従来は三分の一でした。その分、保険料の割合を減らすことができます。
 「基礎年金の財源の半分を国が負担する」という私たちの考えに対し、民主党は「基礎年金のすべてを税金でまかなう。納付された年金保険料は給付だけに使い、年金にかかわる事務費、広告費、人件費には税金を使え」と主張しています。そのためには、国の社会福祉予算のすべてを年金に使わなくてはなりません。明確な財源も示さずこのようなことを言うのは、全く無責任な話と言わざるを得ません。

景気の回復を背景に年金財政状況は堅調
 国民の四人に一人が年金を受給し、高齢期の生活設計で年金を頼りにする人が七割というのが、わが国の現状です。その年金は、自分の力でやっていく「自助」と保険で助け合う「共助」、そして税金で助ける「公助」と、三本の柱で支えられています。
 国にすべてを頼るのではなく、安心して生活できるように国がバックアップする。ここに公的年金の存在意義があるのです。
 痛みの伴う改革を行うからには、年金保険料で無駄遣いしていたものは見直さなければいけません。住宅融資業務を廃止し、グリーンピア(大規模年金保養基地)や厚生年金会館など年金で造られた福祉施設の売却を進めています。
 しかし、基礎年金の国庫負担を二分の一へ引き上げるには、約二兆五千億円の財源が必要とされ、これが実は大きな問題なのです。財政努力で支出を圧縮できるのか。今後、あらゆる世代が公平に負担を分かち合う消費税についても、全体的な検討をしていくことが必要となります。
 納めていただいた年金保険料の積立金の運用に関しては、いくつもの企業も入れて公正に行い、長期的な観点から安全で効率的な運用で成果を出しています。景気の回復を背景に、年金財政は堅調です。株価上昇などにより平成十七年度の積立金残高は、当初予想を上回り、百五十兆円を超えています。安心してください。


未納問題と年金財政は直結せず

Q.年金未納者の増加で年金財政は破たんするのか?
 確かに、国民年金の未納者は増えており、年金制度の信頼性、安定性を保つうえで大きな障害となっています。ただし、未納者が増えたことで直ちに、年金財政の崩壊につながるかというと、そうではありません。
 年金額は保険納付額に応じて決められています。未加入・未納期間については、将来の年金が支払われない仕組みになっています。
 だからといって、未納者に対して何もせず、突き放すわけにはいきません。
 年金制度ができた当初の国民年金加入者は農家や自営業者が多かったわけですが、今はどうかというと、パート労働者やフリーターは、厚生年金に入れず国民年金に入っているケースが多いのです。この流れをストップさせ、厚生年金に組み込むことを急がなくてはなりません。
 それには、厚生年金の事業者負担をどうするか、という問題があります。まだ私案の段階ですが、ある程度は税金で負担すべきではないかと考えています。そういうことを考えていかなければ、国民年金の未納問題は最終的には解決できないと思っています。


(党機関紙「自由民主」 2007/12/4号掲載)