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  衛藤晟一厚生労働部会長の年金問題基礎講座(1)
   年金制度の構造や種類

 国民の老後の生活を支える大きな柱である年金。しかし、社会保険庁などのずさんな業務や一連の不祥事によって、年金の信用は地に落ちてしまいました。本来、わが国の年金制度は、国民全体に広くそれも公平に老後を支えようとする“世界に冠たる制度”と呼べるものです。
 衛藤晟一党厚生労働部会長が、あらためて日本の「国民皆年金」の大切さや、年金制度について連載で分かりやすく解説します。

高齢者世帯の6割が公的年金で生活
図表:
年金制度は3種類3階建て  私たちが老後を安心して送ることができるのは、現役世代の保険料によって支えられた公的年金制度があるからです。高齢者世帯のうち、公的年金だけで暮らしている世帯が六割にも上っています。公的年金を維持していくことがいかに大切かよく分かると思います。
 公的年金は、大きく分けて国民年金、厚生年金、共済年金の三つに分かれています。
 自営業者や農業者の方が加入する国民年金が昭和三十六年にできて、すべての国民が年金の加入対象となる国民皆年金体制ができました。
 この国民年金相当分は基礎年金と言われ、「三階建て」の構造となっている年金制度の「一階」部分として、すべての年金に貫かれています。(図参照
 一般企業で働いている方は、厚生年金として基礎年金に報酬比例分が上乗せされます。これは企業側が半分負担して成り立っています。
 厚生年金の方は、さらに企業が任意で設ける企業年金があって、その代表的なものが厚生年金基金と適格退職年金です。これで「三階建て」になっているわけです。
 公務員については今、国家公務員共済年金と地方公務員共済年金の二つがあります。従来は農林共済とか学校共済とかいろいろありましたが、十年来統合を進めてきて、今、この最後の二つの共済年金を統合しましょうという法律が出されているところです。

世界に冠たる日本の国民皆年金
 日本の場合は基本的に三種類の年金制度のどれかに国民全員が入っています。
 これだけ幅広く行き届いた年金制度がある国はほかにはありません。
 世界の年金制度の対象者をみると、米国は無業の人はもちろん、自営業者でも所得が基準に満たない人は加入できません。英国、スウェーデンも一定所得以上の国民、ドイツでは医師などの一部の職業を除く自営業者と無業の人は任意加入です。
 もともと年金制度というのは、公務員や企業に勤めている人のために作られたものです。でも、日本の場合はその対象にならない自営業の方々のためにもなんとかしようと国民年金を重視してきました。ところが、所得が低い方を含めて全国民を対象にしていることもあって、国民年金の未納率が高くなるという問題が起きています。
 低所得の人には免除・減免規定があるし、学生さんなど、今は払えないという人には猶予規定がありますが、全体をフォローするためにもっといい解決策がないか今、検討中です。
 また、大きな問題が年金財政の問題です。年金財政が単年度で五兆円近い赤字になり、放っておくと破たんしてしまうため、私どもは平成十六年に「百年安心プラン」という抜本的な年金制度改革を行いました。その内容については、このシリーズの後の方であらためて詳しくお話ししますが、基本的には(1)年金改定率を自動的に調整する仕組みの導入(2)国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる(3)保険料に上限を決めて少しずつ上げさせてもらう――という三つの方法によって、赤字を六年間でゼロにするというものです。


安定した年金制度構築に全力

Q.年金記録問題などで、国民は年金について大きな不安と怒りを感じています。信頼回復へどう取り組みますか?
 年金記録問題など社会保険庁の不祥事によって、地に落ちた年金への国民の信頼を回復することが今、何より大切です。
 基礎年金番号に統合されていない約五千万件については来年三月までに名寄せを完了します。また、社会保険庁のミスで年金記録が原因なのに、時効で本来もらえるはずの年金が支給されない人などを救済する年金時効撤廃特例法がすでに制定され、今、救済措置が進んでいます。
 “親方日の丸体質”で、このような問題を引き起こしてきた社会保険庁の責任は極めて重大です。年金の信頼を回復するため、社会保険庁を解体・分割する法律も成立させました。これによって、公的年金についての責任は今後とも国が担いつつ、その運営実務は、社会保険庁の旧弊を一掃し、新たな非公務員型の法人として日本年金機構(平成二十二年に新設)が行うことになります。
 新法人の業務については民間委託を積極的に行い、合理化・効率化とサービスの向上を徹底的に図る方針です。このほか、すべての被保険者に「ねんきん定期便」を送付します。
 また、平成十六年の年金改革の枠組みの下で、基礎年金の国庫負担二分の一への引き上げのための法整備や、厚生年金と共済年金の一元化の早期実現も進め、将来的にも安定した年金制度構築に全力をあげる方針です。


(党機関紙「自由民主」 2007/11/20号掲載)