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【萬物相】教科書貸与制度

 米国で小中高生が使う教科書の表紙の内側には記録カードが付いている。いつ購入され、毎年誰が使ったかが書かれている。教科書は1冊60-150ドルと高価で、学校がいったん購入すると5-7年は使うためだ。教師は学生に対し、教科書をビニールの表紙で包み、落書きをしないよう注意する。年末に返還された教科書の状態を5段階評価し、破損がひどい場合や紛失した場合には実費を負担しなければならない。

 米国の中学・高校で使われる教科書は500-700ページの厚さがある。参考書や問題集の役割も兼ねるほど詳しい。フランスも小中学校の教科書は学校や国家が購入し、学生に貸し出している。教科書を学校に置いたままで通学し、4年ごとに買い換える。教科書が破損したら児童・生徒が責任を負う。

 韓国では国語、英語のような基本共通科目のほか、選択科目が多彩で、教科書の種類は957種に達する。小中学校では国が無償で教科書を支給し、高校生は自費で購入する。しかし、毎年使い捨てされる教科書は約1万冊、2400億ウォン(約190億円)相当に達する。教科書の「お下がり運動」も展開されているが、再活用されるのは100冊当たり2冊にすぎない。教科書1冊の価格は、小学校で1200ウォン(約90円)、中学校で3000ウォン(約230円)、高校で4000ウォン(約310円)前後に定められており、品質にも限界がある。このため、例外なく2万-3万ウォン(約1560-2340円)の参考書を買わなければならない。

 教育部はこのほど、米国やフランスなどにならい、「教科書貸与制度」を実施することを明らかにした。教育課程の20%を校長が定め、一部科目を集中履修させる教育の自由化効果を高めようとすれば、現在より豊富な内容を盛り込み、厚さも現在の200-300ページから倍増させなけれならない。それに合わせ、教科書価格も出版社が自主的に決定できる法令も定められる運びで、保護者の負担が増大する。そこで持ち出した対策が貸与制度だ。

 教科書の品質を高め、学校教育を充実させ、参考書の購入負担も軽減できる制度の導入をためらう理由はない。しかし、貸与制度も完ぺきなものではない。教科書に下線を引いたり、メモを取る習慣をすぐに改めるのは難しい。教科書を学校に置いたままで通学すれば、家庭での予習や復習も困難だ。このため、日本は10年前に貸与制度を検討したものの断念した。教科書を持ち運べるようにするなど、短所を補完するアイデアが必要だ。貸与制度が成功する上では、教科書が個人の本ではなく、共同財産だという意識が必要だ。

キム・ドンソプ論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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