世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の警戒レベルをフェーズ4に引き上げたことから、県や市、県警などは28日、新型インフルエンザ対策本部を相次いで設置し、関係機関との連携強化を確認した。県教委は、小中高校の児童生徒とその家族に対し、大型連休中の海外渡航自粛を呼びかけた。また、メキシコや米国に拠点を持つ県内企業も対応に追われた。【福田智沙、光田宗義、大平明日香、大島英吾、渡辺諒】
■県
県の対策本部(本部長・村井仁知事)は県庁で初の会議を開き、村井知事は「国内外の情報に十分注意を払いつつ、関係機関と連携、協力しながら県の全組織をあげて対応したい」とあいさつ。県民に対し、「冷静な対応を」と呼びかけた。
また、新型インフルエンザの県内発生を「時間の問題」(村井知事)とし、市町村や関係機関との連携強化や情報の共有、連絡体制の整備を図り、迅速、適切に情報提供することを申し合わせた。
県教委は、感染予防を徹底する▽発生した場合は臨時休校とする▽児童生徒の健康状態を把握する▽各学校を通じて児童生徒と家族に対して大型連休中の海外渡航自粛を要請する--と決めた。また、衛生部はこの日から、県民の不安を取り除く電話相談窓口の受け付け時間を来月10日まで、午後7時から同9時に延長する。
県によると、タミフルの備蓄は県が18万2000人分、国の県内確保分が42万5000人分と計60万7000人分。また、今年度から3年間で、タミフルとリレンザを計24万3800人分確保する計画で、県民の4割分になるという。
■長野、松本市など
長野市や松本市、上田市なども28日、対策本部を設置し、国や県と連携し、新型インフルエンザの県内発生に備えて準備作業を強化することを決めた。
松本市の対策本部は会議で、本部長の菅谷昭市長が「(庁内で)情報を共有することが大きな目的だ。適切な行動で(影響を)最小限に食い止めたい」と職員に訓示した。保健師による感染者の数や病状について説明もあった。周知徹底のためにチラシを配布したり、外国人観光客の状況を把握することなどを確認した。
上田、東御両市も28日、市長を本部長とする対策本部を設置し、市民への情報提供などを強化する。
■県警
県警は28日、県警新型インフルエンザ対策本部(本部長・小谷渉県警本部長)を設置した。対策行動計画に基づき、行政機関と情報を共有しながら、県内発生時の混乱などに対応する。出動する署員の感染防止のため、防護服やマスクなど約2800セットを用意しているという。向山静雄警備部長は「県と連携を取り合って、的確に対応したい」と話した。
自動車・業務用空調機製造のGAC(安曇野市豊科)は、メキシコ工場に送るためマスク1万枚を手配し、29日以降に発送する。現地は、派遣する日本人5人を含め従業員約700人が働いているが、今のところ感染したという情報はないという。
セイコーエプソン(諏訪市)は、25日に危機管理委員会を設置した。メキシコ出張は安全が確認されるまで禁止し、米国出張は原則として見合わせる。メキシコには、製造、販売の2拠点を持つが、インターネットやテレビ電話などで連絡を取り合い、業務や生産量に影響は出さないという。
県内の薬局では、新型インフルエンザ対策用のマスクや消毒薬の売れ行きが例年に比べ2~3倍になるなど、県民の関心の高さがうかがえる。県内に10店舗展開するドラッグ寺島の松本渚店(松本市渚)は「通常は花粉症の時期が終わり、マスクはほとんど売れないが、例年より3倍は売れている」(担当者)と話した。また、県内に5店舗を展開する中島薬局(長野市豊野町沖)は「保存食も売れている。飛まつ感染予防なら花粉対策用が使える。商品陳列を充実させたい」(担当者)という。
毎日新聞 2009年4月29日 地方版