女の子に起こされたい、という願望が俺にはあった。
夢から覚めてまぶたを上げるとすぐ目の前に女の子の顔がある、
なんて最高の目覚めじゃないか!
女の子が俺の布団の上に乗っかってきて体をゆさゆさと揺らして
「早く起きてよっ!」
「あと少しだけ寝かせてくれ……」
「もう起きないと遅刻しちゃうよぉ〜」
「キスしてくれたら起きる」
「ええっ!? 仕方ないなぁ……(赤面)」
なんてシチュエーション! 男の夢だろう?
その願いを叶えるべく、
旅の道連れである魔法使いのヒルダに頼んでみる。
「明日から俺のことを起こしにきてくれないか?」
「いいわよ、それくらい」
呆気ない返事だった。
翌朝、日の出より前に目覚めてしまったのだが、
寝ているふりをしてヒルダを待つ。
宿屋の俺の部屋のドアがトントンと鳴り、
俺の返事がないことを確認してヒルダが入ってくる。
一体どんな起こし方をしてくれるのだろうか。
やはり目覚めのキスだろうか。
そんなことされたら俺は自分を抑制できなくなり、
ヒルダを押し倒してしまうに違いない!
布団の中でそんな妄想を思い浮かべている俺をよそ目に、
ヒルダは呪文を詠唱しだした。
「ザメハ!」