とーめー人間、あらわ る♪(×2) |
ああ……。 苦しい……。 胸が痛い……。 身体が重い……。 誰かと会話したい……。 誰かと冗談話をしたい……。 誰かに構ってもらいたい……。 誰かに悩みを聞いて欲しい……。 6月……。 梅雨……。 ざぁざぁざぁ……。 雨が降ってる……。 午前中なのに暗い部屋……。 蛍光灯からぶら下がってる紐がゆらゆら揺れる……。 雨に濡れたくなくて学校休んで引きこもってるわたし……。 雨音と、たまに聞こえる車のエンジン音が部屋全体を支配してる……。 だめだ……。 動きたくない……。 身体を動かすのがつらい……。 ベッドから降りたくない……。 生きたくない……。 死ぬのもやだ……。 何するのもやだ……。 無気力……。 脱力……。 空疎……。 孤独……。 鬱……。 鬱……? 鬱か。 これが鬱。 ふ〜ん。 なるほど。 これが鬱なんだ。 うん。 きっとそうだ。 そうに違いない。 人と話すのが辛いし、胃が痛い。 ほら、これって鬱病。 そうだこれが鬱病なんだ! わたしも遂に鬱病に! 鬱病……なんて甘美な響き。 よっしゃ。 起き上がる。 ベッドから降りる。 ガラガラガラ。 ドアを開けてベランダに出る。 わたしはすうっと外の湿った空気を吸う。 すうっと。 すぅ〜。 息を止める。 「わたしは鬱病なんだあ〜!!!」 近所中がびっくりして目を覚ますような大声で、こんなふうに叫びたい。今すぐ! そしてあらゆるチャットや掲示板に。そして屋根の上から、あるいは富士山の頂上から力の限り。「わたしは鬱病です!!」と絶叫。 商店街で拡声器片手に街頭演説。えー、このたびー、わたくし市ノ瀬アリサはー、鬱病にかかりましたー。臨時ニュース速報 町田市にお住まいの市ノ瀬アリサさんが鬱病を患いました。記者会見にて。「今日は皆さんに重大なお知らせをしなければなりません。わたしは鬱病になったみたいなんです!」ラジオ、手紙、ダイレクトメール、コンビニの店内放送、駅の広告、 衛星放送、宇宙からの電波、サブリミナル、テレパシー、ありとあらゆる手段を使って全世界の人々に、それこそ地球のちょうど裏側にいる外国人や今の時代も裸で生活している民族の長にも、このことを大声で伝えたい! という衝動に駆られた。 怠惰な雰囲気から逆転、わたしは一気に躍動感を取り戻し、うきうきしてきた。よっしゃあ! ついにわたしも鬱病になったんだ! 元気全開勇気百倍。明日への活力みなぎる精力。 わたしの憧れる作家(ほとんどは漫画家だけど。)はみんな鬱で精神不安定だった。 漫画を描くが嫌になって仕事場を飛び出して森の中に何年も住み続けたり、薬物を服用して捕まった漫画家もいた。 女性との入水自殺を繰り返したり、エンパイアステートビルの屋上から飛び降りてぺしゃんこになったりもしていた。 どうして自分も鬱でないのかずっと不思議だった。鬱でないからわたしの小説が認められないと思っていた。わたしも鬱になれば自分の真の才能が覚醒するんだ、とか訳の分からないことを思い込んでいた。 これでわたしは鬱病になったんだ! そう確信したわたしはすぐにパソコンをつけて精神病院を探した。精神科医に診断してもらうために。そうすればわたしは社会的に鬱病患者になれる。皆の者、静まれ静まれーい! この診断書が目に入らぬか! ここにおはす方をどなたと心得る。恐れ多くも鬱病患者、市ノ瀬アリサ様にあらせられるぞ。頭が高い、控えおろう! というわけだ。 鬱病認定されれば生活保護も受けられる(わたしは学生だから受けられないけど)。 人に尊敬されたい、社会的弱者になりたい、という相反する二つの願望をわたしは抱いていて、そのうち後者が叶ったと思った。 でも実際に精神病院に行ってみて医師から下された判断は違った。 「あなたは鬱病では無さそうです。しかしパーソナリティ障害かもしれません。」 パーソナリティ障害? 人格障害のことらしかった。 わたしの人格やばいの? ショックだった。 人に尊敬されたい、という願望は、劣等感を抱いている人間が自分の価値を向上させたい、社会的に認められたい、という欲求からくるもので、自己愛性パーソナリティ障害に見られる症状だそうだ。 彼らは自信家であり、自分に高い能力が備わっていると思い込んでいるが、ひとたびプライドを傷つけられると死にたくなるくらいにひどく落ち込む。 社会的弱者になりたい、という願望は、誰かに愛されたい、誰かに構って欲しい、という欲求から来るもので、境界性パーソナリティ障害に見られる。 症状が悪化すると自分を傷つけたり自殺企図をしたりすることで人に構ってもらおうとする。そして10人に1人は通院中に、亡くなってしまう……。 医者にパーソナリティ障害だと診断されてから、わたしはすぐに本屋でそれ関連の本を読み漁った。 そして購入したのが『パーソナリティ障害』(岡田尊司 PHP出版)だ。当小説を書くにあたり、この書籍を参考にした。 わたし自身の足りない知識や曲がった偏見が入り込むだろうが、この小説は中傷や差別といった意図を持って書かれたものではないことを予め断っておく。 わたしが一年の頃は友達もいたし交友関係も普通だった。 だけど性格が最悪だった。 人の目からはわたしは「いい人」として映っていただろう。でも今のわたしが当時のわたしに出会ったりしたら、その場で殴り倒すだろう。 ボカーン。 訳も分からず殴られたあいつは頬を腫らしながら笑顔でこう言う。 「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ? わたしはあなたの味方。深呼吸してごらん、気分が楽になるよ。何か嫌なこと、あったんだよね? 苦しくなって、当り散らしたくなることって、あるよね。心配しないで。あなたの悩み、なんでも聞いてあげるよ」 こんなこと言われたら顔が変形するまでぶちのめすしかない。 というか殺したい。 あの頃のわたしは最悪だ。 あいつは人の自慢や愚痴をいくらだって聞いてやれた。何があっても冷静に対処し、決して憤ることはなかった。自然とクラスの相談役みたいな役柄になっていたし、自分を誇張したりせずに謙遜しながら相手と会話していた。 死ねよ、わたし。 あいつは今まで学習してきた「人との上手な付き合い方」を実践して復習しているだけなのだ。 そんな糞みたいなわたしが恋愛にも手を出した、一年の分際で。 恋愛を経験してみよう、相手は誰がいいかな。自分を受け入れてもらえそうな男子を選び出した。 宿題をやってこない、そして教師に反論したりせず黙って叱られるような子。性格、面倒くさがり。不器用で世間知らず。マザコン。 彼は探してる。自分の代わりに面倒な事を何でもやってくれるような子を。人に頼りたがってる。何かあるとすぐ相談する。そんな男子。背が低いけど顔立ちが整っていて、家では勉強しないくせに頭がいい。わたしが彼と付き合っても、わたしのイメージが落ちることはないはずだ。頭がいい者同士、気が合うんだろう、などとクラスメイトは思ってくれる。わたしは自信家だった。 その男子とは簡単に仲良くなれた。 「宿題写させてあげようか?」「この縫い方、面倒だよね。わたしがやってあげようか?」「授業受けていれば身に付く勉強とは違って、作文はいつも文章書いてないとなかなかうまく書けないんだよね。なかなか書き出せないなら、わたしの言う通りに書いてみて」だんだん彼は物事を自分からわたしに頼むようになってきた。 もうそろそろいい頃合だろう。 「わたしなんかでもいいなら……付き合ってもらえないかな?」即承諾。楽なものだ。 わたしは恋愛を成功させるために今まで読まなかったファッション雑誌を購入し、人に好かれる振る舞いを勉強してテレビを見て流行を知り、恋愛経験談を片っ端から読みまくった。彼の理想の女性を演じた。彼の願望を次々と叶えてあげた。 下らない。わたしは恋愛も 試験勉強→実践 でうまくいくと思っていたのだ。 勉強さえしていれば立派な大人になれる。親にそう教えられて育ったわたしは、ほとんどガリ勉女だった。 教師に叩き込まれた知識は一つとして漏らすことなく、世の中のあらゆる情報を自分の頭に保存しようとしていた。 道端で花を見つければ花びらを千切ってその形状を観察し、ビルに入ればその構造や間取りがどれだけ利便性を持っているかに着目し、友人宅でゲームをすれば合理的攻略やアルゴリズムを解き明かそうとしていた。 信号、車、コンビニ、カップ麺、清涼飲料水、かばん、服……。視界に入るもの全てが、人類の知恵によって目的、形状、材質、色彩を定められて存在していた。そして生物たちは生存繁栄するために合理的進化を遂げていった。そう考えるとわたしの興味を惹かないものは無い。ありとあらゆるものが、タワーのように長い歴史が積みあがったその頂点として存在する物質のように思えた。これはこういう理由でこの場所にこういう形で存在しているんだ。毎日が発見の連続だった。 バカだったから、その頃のわたしは。 何にも知らなかったし、クズだ。 彼との付き合いがうまくいっていると実感し始めた頃、何の予告もなく突然、ふられた。学校で何度彼に話しかけても、汚いものでも見るような眼でわたしを一瞥したあと、少しも言葉を返さずに無視するのだ。 勉強すればテストの結果として現れることを当然だと思っていたわたしは、自分がなぜ彼に嫌われたのか理解できなかった。恋愛体験談を読んで得た知識の限りでは、自分に欠陥があるとも思えなかった。自分は完璧だと思っていた。それだけに大きなショックを受けた。いつの間にかわたしは彼に依存していた。彼のことを思うと胸が苦しくなった。トイレへ駆け込んで血の混じった悲しみを嘔吐した。崖から転げ落ちて地獄を彷徨っているような毎日だった。学校の授業が身に入らなかった。わたしの足元を滑る全ての出来事が上の空だった。何をすれば彼との仲を取り戻せるのか、普通に接してもらえるのか、ずっと悩んだ。一つとして解決案は思い浮かばず、わたしは何もできなかった。何かをしたかったのだけど、何もできなかった。ほんとこの頃のわたしは、バカだ。 彼との深い溝は時間が修復してくれた。 1ヶ月ほど経つと、彼は時折、一言くらいだけど、わたしに話しかけてくれるようになった。 ハサミ貸して。 うん、いいよ! わたしの持ち物、全部自由に使ってよ! また1ヶ月経つと友達のように喋ったり冗談を言い合えるようになった。 わたしが何をしたわけでもないのに、次第に状況が良くなっていった。 ある日彼がわたしにこんなことを言い出した。 「もう一度、俺たちの関係、やり直せないかな?」 その時わたしがどんな返事をしたのか、もう覚えていない。ただ自分の中のマグマがどんどん冷えて固まっていくような感じがした。 翌日の登校中、なぜだか分からないけど学校で彼に会うのが嫌になって、自転車のハンドルを学校とは逆方向に向けて走り出した。ペダルを漕ぐのがすごく楽しくて、さわやかな気分だった。吹き抜ける風を追い越して、このままどこまでも行けるような気がした。太陽が真上に立ち上った頃、一度も行ったことのない公園のベンチで弁当を食べて、よちよち歩きするカラスをうっとりしながら眺めた。 わたしはもう、翼を引きちぎって皮を剥ぎ取ってその骨格を確かめようとはしなかった。その時のわたしにとって、カラスはただのカラスだった。ブランコはただのブランコ。噴水はただの噴水。ベンチはただのベンチ。 日が傾きかけるとわたしはまた、錆かけた車輪の自転車を漕ぎ出し、隣の県でタイヤからチェーンが外れて転倒したところでわたしは自転車を乗り捨て、電車で家に帰る。運賃は食堂のカレーライスたった2杯分だった。わたしはカレーライスが大好物だった。 翌日学校に登校すると彼が、「昨日どこに行ってたんだよ? 心配したぞ」と話しかけてきた。 わたしは汚いものでも見るような眼で彼を一瞥したあと、少しも言葉を返さずに無視して教室を出ていった。 それからのわたしは、魂が抜け出ていたらしい。勉強なんてこれっぽっちもする気がなく、授業も寝て過ごし、家ではテレビをぼーっと見て過ごし、学校は休みがちになった。人と話すのが馬鹿らしくなって、友達はわたしと自然と距離を置くようになり、しばらく何も手につかなかった。 わたしは世界への興味をすっかりなくしてしまったのだ。 わたしはカレーライスが嫌いになった。 再びカレーライスが食べられるようになったのは、小説を書き始めたのとほとんど同時期だったと思う。 一年の頃は勉強ができたのと同様に作文も楽々こなしていたのだが、小説を書くとなると悪戦苦闘の連続だった。面白いものを書く、それができなかった。ネットで公開しても誰も感想を書いてくれない。自分の小説を誰も読んでくれない。 それでも自分には才能があると思い込んでいた。そうでなきゃ小説なんて書かなかっただろう。でもどうやら才能なんてない、わたしはごく普通の少女らしい。 「自分は特殊な人間だと思ってるようなヤツに限って、普通の人間なんだよねー」 わたしには変わった趣味があるけど、一つくらい人と違うところがあっても、それはただの『個性』であって、特殊な人間とは言わないらしかった。 わたしは今日もデパート一階のトイレに来ていた。 他に誰もいないことを確認して個室に入り、鍵をカチャリとかけて、かばんを床に置く。 わたしはさっそく制服を脱ぎ、スカートと下着を脱ぎ、それらを丁寧に畳んでかばんの上に置く。 裸になったわたしは透明人間になる。いや、もちろん比喩的な意味でだ。 服を着ていると透明人間にはなれない。身体が透明になっても服はそのままだから服だけが歩くことになるから。わたしは透明になって、カメレオンみたいに背景に溶け込む。 自分という存在が消える。 そこにあるのは空白だ。 人の目には見えない。息遣いも聞こえない。言葉さえ無い。 空気はよく換気されていて澄んでいる。人混みの中よりもずっときれい。そんな空気にわたしは肌で直接触れる。天井のスピーカからピアノの美しい旋律。音楽を肌で感じる。透明になったわたしは生の苦しさから解放される。そして目を閉じる。 タンタンタン。 人がトイレに入ってくるとわたしは緊張し、興奮する。特に若い女の子たちが、あるいは同じ教室で勉強しているクラスメイトが、静止していた空気を揺るがすがように侵入してくると、透明だったわたしの身体は赤みを帯び始め、胸の奥から熱くなってくる。 ああ、壁一つ取り除けば、わたしの貧相な裸体が彼女たちの目に露わになってしまうんだ。そう考えると脳内麻薬がぷくぷくと泡を立てて頭の中に分泌され、天にも昇るような快感が全身を駆け巡る。 個室の上の隙間から覗かれたらどうしよう、盗撮されていたらどうしよう、一人の女の子が個室でまっぱだかになっていることが全世界に、衛星中継で、ビデオで、DVDで、ネット配信で、ライブカメラで、それこそ地球のちょうど裏側にいる外国人や今の時代も裸で生活している民族の長にも、見られてしまうのではないだろうか。 そう考えると身体が熱を帯びてきて、息が荒く色っぽくなってくる。喘ぎ声さえ漏らしていたかもしれない。わたしは興奮の渦に飲み込まれてしまう。 次第にそれだけでは物足りなくなり、男子トイレにも侵入したことがある。 利用者が多くて割と頻繁に清掃されている、清潔な公園の公衆トイレ前に数十分張り込んで、男子トイレに誰もいなくなった瞬間を見計らって、2つしかない個室の左側に飛び込んだ。 男性が一物を出して用を足すトイレに、裸の少女が一人佇んでいる。なんて淫靡な状況だろう。誰かの足音が入ってくるたびに、今にも個室のこのドアが破られて襲われるんじゃないだろうか、というような妄想が取り憑き、脳がとろけそうになって、自分の胸や股間を手で覆い隠したりした。この中にいると神経が磨り減るほどの心地よさを覚え、わたしは精神的にくたくたになってしまっていたのだけど、トイレから出るのは勇気が要った。今だ、今がチャンス、なんて思っても鍵を開けようとする手が震えて自分の命令を聞かず、誰かが入ってくるたびに、ああ、今出て行ったら鉢合わせになってたぁ! なんてびくびくしていたものだから、外に出れたのはもう外が真っ暗になってからだった。その日は目が冴えてしまって眠れなかった。 しかし、こんな変わった趣味を一つ持っているくらい、一体なんだというんだろう。変な趣味だとか人に言えない秘密だとかは誰でも持っているものだし、やっぱりわたしはどこにでもいる女の子なんだろう。 所詮、凡人。 だって言われたもん、精神病院の先生に。 「君は特別じゃない。君みたいな子を僕はたくさん診ているよ」 わたしがトイレで裸になることは隠していたので、そういう趣味を持った子が他にもたくさんいたのかは分からなかったけれど。 家に帰るとまた孤独感が押し寄せてきた。 誰もいない暗い部屋が寂しそうにわたしを待っていた。 わたしはソファにかばんを投げ捨てベッドに横になる。 「君はパーソナリティ障害かもしれない」 そっか……。わたしって人格障害なんだ。だから友達もできないし、社会生活もままならないんだ。枕を抱き込む。本当なら、人に抱きつきたい。 床に置いてあったノートパソコンを、ベッドに寝転んだまま手を伸ばして引き寄せ、電源をいれる。ウィンドウズが立ち上がりデスクトップが表示される。IE起動。ブックマークからチャットを表示させる。 二人の入室者がDSのアクションゲームの話をしていた。わたしも好きなゲームだった。クリアするだけなら簡単だけどやりこもうとすると難しくて、完全クリアはなかなか達成できないでいた。 そのゲームには一定時間無敵になるアイテムがある。そのアイテムを取ると主人公は透明になり、敵に触れてもミスにならない。透明になった主人公に敵は気付けないのだ。 「アリサさんが入室しました。」 わたしは二人の会話に混ざろうとする。 「わたしもそのゲーム好き。ワールド4まで完全クリアしたよ。」 「4−5のコイン探すのが苦労した……。」 「あれ、ヒカリさんも丼兵衛さんもafk中?」 「ご飯食べてるのかな」 「おーい。」 わたしが入室した途端に会話はぴたっと停止して、そのまま二人が戻ってくることはなかった。 わたしは小説投稿サイトに行く。 もう5日も前にわたしが投稿した小説。 やっぱり誰も感想をつけていない。 一つ下にある小説は読者感想の点数がマイナスになっていた。わたしはその小説の感想を覗いてみる。 「ストーリーがイマイチよく分かりませんでした。ちゃんと筋道立てて書いた方がいいと思います。誤字脱字が多いので、ちゃんと推敲してから投稿して下さい。」 「文章作法がなっていませんね。三点リーダは二つ続けて使いましょう。!や?を使ったら一文字スペースを入れると読みやすいです。」 そんなふうにいくつもの厳しい指摘がされていた。 それに比べてわたしの小説の感想は0。点数も0のまま。 誰にも相手にされてない……。 誰かと話をしたい。そんな思いが強烈にわたしを襲う。 匿名掲示板の人の多いスレッドに書き込む。誰もレスしてくれない。名無しだからいけないのかな。ハンドルネームをつけてみた。他のハンドルネーム使用者にもレスしてみた。誰もわたしにはレスしようとはしなかった……。 ああ、やっぱりわたしコミュニケーションが下手なんだ……。人と話せないのも無視されるのもパーソナリティ障害のせい……。 ああ……。 苦しい……。 胸が痛い……。 身体が重い……。 誰かと会話したい……。 誰かと冗談話をしたい……。 誰かに構ってもらいたい……。 誰かに悩みを聞いて欲しい……。 わたしには友達が必要だった。どんな友達? 話を聞いてくれる友達。わたしの自慢や愚痴を聞いてくれる友達。条件にぴったりの人間がいた。昔の『わたし』だった。嫌いな『わたし』だった。そう考えると、胃がムカムカしてきた。殴り倒したくなってきた。 「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ? 僕は君の味方だ。深呼吸してごらん、気分が楽になるよ。何か嫌なこと、あったんだね? 苦しくなって、当り散らしたくなることって、あるよね。心配しないで。君のパーソナリティ障害、僕が治しましょう」 医者が言った。 「人と話したり付き合ったりするのが楽になりますよ」 そうか、パーソナリティ障害が治れば、わたしはこの孤独感から解放されるんだ。人と会話できるようになるんだ。友達を作れるんだ。 「人の自慢や愚痴を聞いてやれる人間になれるよ」 自慢や愚痴を? 「そう。交友関係を保つためにはそういう精神が必要なんだよ。相手のしてほしいことをしてやる。小説を読んで欲しいなら読んであげる。構って欲しいなら構ってあげる。宿題写させてほしいなら写させてあげる。裁縫ができないなら手伝ってあげる。それが正しい人との付き合い方なの」 と、『わたし』が、言った。 「だいじょうぶだよ」 わたしに殴られたはずの『わたし』は、笑顔で手をわたしに伸ばす。 「この手を取って」 『わたし』の笑顔は優しさに満ち溢れていた。 「一緒に行こう。素敵な未来へ。この手を掴めば、全ての人々の手の温もりが伝わってくるよ。あなたはすぐにその中に溶け込んでいける。友達もできるし、恋人もできる。誰かを抱いて、誰かに抱かれる。誰かに必要とされて、誰かを必要とする。そして助け合う。お互いに好きになる。愛して、愛される。そんな光溢れる世界へ」 ボカーン。 わたしは『わたし』を殴り倒した。 『わたし』は便器に頭を打ってじわっと血が滲み出していた。ざまぁみろ。 「いい」 「え?」 「一人でいいもん」 わたしは吐き捨てるように言う。それを聞いて医師は不思議そうな顔をする。 「え、どうしてだい?」 「だって……」 どうして、って聞かれても、すぐには答えられない。 「人と付き合うの、面倒だし」 「面倒? 君はどうしてそう思うのかな?」 「面倒だもん。人の自慢とか愚痴聞いてまで好かれたくないし。そういうの、うざったい。もういいです、鬱病だって認めてくれないなら帰りますから」 わたしは立ち上がる。 「ちょっと待って、君は一人で寂しくないの? 孤独だと辛いって言っていたよね? 矛盾してないかな?」 医師はわたしの両肩に手をついて座らせようとする。 「落ち着いて、ほら、深呼吸してごらん」 「いいんです。ほっといてください」 医師の手を振り払い、わたしは透明になって、カメレオンみたいに背景に溶け込む。自分という存在が消える。もちろん比喩的な意味で。 「消えた?」 目の前にいたはずのわたしが消滅してしまい、医師はきょろきょろと辺りを見渡す。だけどそこにあるのは空白。 空白 。 「まぁいいか、今のご時世、患者は他にもごまんといるんだ。一人くらいいなくなったって食うには困らない」 わたしは服を脱いで裸になってトイレのドアを蹴破った。クラスメイトが鏡の前でぺちゃくちゃおしゃべりをしていた。けれど誰もわたしに気付かない。鏡にもわたしの姿は映っていない。そのまま街頭を練り歩く。まっはだかのわたしの前を警察官が通り過ぎる。わたしを変質者だって言って逮捕したりはしない。わたしは商店街の真ん中でくるくる回転してみる。誰もわたしを咎める人はいない。わたしはアイテムを取って透明になったのだ。無敵。 屋根の上や富士山の頂上から叫んだりしてみる。誰もわたしに気付かない。 ネットの掲示板やチャットを荒らす。むかつくクラスメイトを包丁で刺す。核ミサイルのボタンを押す。殺したくてたまらなかった過去のわたしも殺しちゃう。だーれもわたしの仕業だって気付かない。 わたしは自由だ。一人ってなんて素晴らしいんだろう。 人に縛られないってなんて素晴らしいことなんだろう。 そうか、孤独と自由は同じ意味だったんだ。 孤独 is freedam♪ 孤独 is freedam♪ 孤独 is freedam♪ どうせ誰もわたしのことなんか見ていないんだ。 どうせわたしの書いた小説なんて誰も見ないんだ。 「ストーリーがよく分かりませんでした。ちゃんと筋道立てて書いた方がいいと思います。誤字脱字が多いので、ちゃんと推敲してから投稿して下さい。」 とか 「文章作法がなっていませんね。三点リーダは二つ続けて使いましょう。!や?を使ったら一文字スペースを入れると読みやすいです。」 とか指摘する人もいない。 だから。 こ − ん な ことをやっても ,、,,,,,、 ,.-、 . ソヽ .ゞヾ、 .iヘ ヘ ,.-、 y ,ソ.i、 .イ_、 i.ゞ,.ノノi| スノ ,-、 .、) ┌,(__ノ / .| ヾ ,7 .ノヽ. .| .i タイガーアッパーカッ! ゞイ ト、 /ノ ノ ト──‐i /ジェンキンヘ /.ノ./寿司| ∠,,_ノム._.__| イ ノ| i! .「 .ヽレミ) | リ._| .!,,_|..|.イ .) .ヒテ .Fム _! .シ こーんなことやっても 全然兵器。 パクリ? 著作権? 誤字脱字? 文章作法? 知ったことか。 誰も見ないなら何やってもいいんだ。 人に気を使う必要なんて無い。 人の目を気にする必要も無い ほーら、一人って自由でしょ? 誰にも縛られない。 誰かの予定に合わせなくていい。 誰かにお世辞を言ったり 誰かの自慢話を聞いたり 誰かの悩みや愚痴を聞いたり そーんなの全然必要なし。 わたしは自由だ。 孤独は自由だ。 学校行きたくなきゃ行かなくていい。 仕事したくなきゃしなくていい。 腹が減ったら食べればいい。 いたずらしたきゃすればいいし、 人を頃したきゃ殺しても良い。 死にたくなったら勝手に自殺していい。 もうなんでもアリです。 やりたいことやったもんがち。 いえーい。 だから俺はあんな大学には二度と行かないし 工学物理の講師も殴ってやるし 俺の服装笑った奴も頃してやる。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 孤独は自由だ。 だから俺はずっと一人でいいし 友達なんかいらないし 誰にも構われなくていい。 もうほっといてほしい。 一人でいいから俺は……。 もう別に……。 誰かに話を聞いてほしいとか 自分の小説読んで欲しいとか ほんともうそんなこと思ってないからさ もういいんだよ・・・・・・・・・・・ 以下余白 。 |
アイフィ
http://aify.exblog.jp/ 2006年12月30日(土) 15時01分05秒 公開 ■この作品の著作権はアイフィさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | ||||
---|---|---|---|---|
真山様、感想ありがとうございます。 ご指摘の通り、文章については狙って書いたのでもなんでもなく、素で下手なんですよね。小説は読んでいないことはないのですが、いつまで経ってもうまくなりません。それは努力が足りていないってことですよね。精進します。 >最近の作品では全く満足感が得られない というのは私も同じ症状で(笑)、普通の小説とは一味も二味も違った(前衛的、というのでしょうか?)小説ばかり読んでいます。それが自分の小説にも反映されているのですが、まだまだ修行不足ですね。 精神疾患、お辛いことだろうとお察しますが、頑張って下さい! 感想ありがとうございました。 |
5点 | アイフィ | ■2007-01-14 01:08:57 | 221.54.227.130 |
先に点数調整。 | -5点 | アイフィ | ■2007-01-14 01:00:24 | 221.54.227.130 |
全体が荒々しく洗練されていない。 文章も砕けすぎている。と言っても、そこはご自分でもわかっておられると思いますので、特に言うことはありません。 内容は下手な小説よりよっぽどおもしろいかもしれませんね。 諸所に上手い表現があり、簡潔な文章がストレートに伝わってくる。 私も精神疾患を患ってまして、パーソナリティ障害自体詳しくわかりませんが、周りの煩わしさから孤独での虚無感といったところに同調を得られる感じでした。 おそらく小説自体はあまり書き慣れてないご様子でしょうか?(違ってたら失礼;) 書きたい、それに伴う葛藤に似た気持ちが意欲的に表されているところが最も良かったです。 ある程度、小説を書き慣れてくるとそのような意欲的なものを作るのが逆に難しかったりします。私もそうだったりして、最近の作品では全く満足感が得られない; こちらを読んで逆にヒントを頂けたぐらいです。 これからも書き続ける意欲があるならば、これを書いたときの気持ちなどを忘れないほうがいいですね。 その上で徐々に小説として技術や世界観を広げられればいいと思います。 |
5点 | 真山 | ■2006-12-30 18:39:48 | 60.62.136.93 |
合計 | 5点 |