きょうは「こどもの日」。行楽地に出かけたり、身近なレジャーを楽しんだり、大型連休の一日を子どもとふれあう家庭も多いだろう。みずみずしい新緑の下、子どもたちの元気な歓声がはじけそうだ。
終戦後まもない一九四八年に、こどもの日は制定された。国の復興に向けて、次代を担う子どもたちの健やかな成長に期待を寄せていたに違いない。あれから六十年が過ぎた今日、子どもをめぐる環境は激変した。生活水準は向上し、経済的には豊かになった半面、将来的に危機感を招いているのが少子化の問題である。
女性一人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は二〇〇五年に戦後最低の一・二六を記録した。〇六年一・三二、〇七年一・三四とやや上昇したが、依然として低く先進国の中では最低レベルだ。〇九年版少子化社会白書は、少子化の要因として、未婚化と晩婚化を挙げる。若者が結婚しなかったり、結婚が遅くなれば、いきおい出生数は減少するだろう。
内閣府が今年一月に行った少子化対策に関する世論調査では、少子化に歯止めをかけるため期待する政策(複数回答)は「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進」が58・5%に上った。これに「子育ての経済的負担の軽減」「妊娠・出産の支援」「子育てのための安心・安全な環境整備」が続き、いずれも過半数だった。
子育てのためのハードルが高くなっているといえよう。医療機関による妊婦たらい回しが社会問題化したが、地域によっては産婦人科や小児科などの医師が不在となるケースも出ている。安心して産み、育てる環境が次第に失われている。
また、若者の生活基盤が保障されなければ、子育てはおろか結婚も困難だ。教育費の負担も無視できない。相次ぐ児童虐待は子育てへの不安をかき立てる。徹底した検証と虐待防止に向けた対策が急がれる。
少子化は未婚、晩婚化のほか、さまざまな要因が絡み合っている。そして、その影響は経済、労働、社会保障、教育など社会全般にわたる。すぐに解決できるものではないが、手をこまぬいてもいられない。
政府は、少子化対策に大胆に踏み出すべきだ。子育てする家庭の生活基盤の底上げや働く母親が子育てと両立できる環境の整備、教育費の支援などにもっと力を入れる必要がある。中長期的な視野での取り組みが求められる。
東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国(ASEANプラス3)の財務相会議がインドネシア・バリ島で開かれ、通貨危機の再発防止に向け、アジア十三カ国が参加する多国間通貨交換協定の年内発足が決まった。
一九九七年からのアジア通貨危機を機に整備された通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」は、緊急時に資金を融通し合う仕組みだが、これまでは二国間協定の寄せ集めで迅速に発動しにくいとされていた。
これを総額千二百億ドルの多国間協定に衣替えする。各国の負担額も決まり、日本は中国(香港を含む)と並ぶ最大の三百八十四億ドル(約三兆八千億円)を提供する。
現地通貨建ての債券発行を促進するため、信用保証機構を創設することでも合意した。当初五億ドル(約五百億円)の基金のうち、日本は最大二億ドルを拠出する。
さらに、与謝野馨財務相は、外貨準備を活用した六兆円規模の円資金供給も表明した。円を受け取った国は必要なら米ドルなど他通貨に交換できる。各国が日本市場で円建て外債(サムライ債)を発行する際、国際協力銀行が最大五千億円保証することも打ち出した。
一連の日本の支援は総額十兆円に上る。アジア各国に円の利用を促す効果も狙っており、背景には存在感を増している中国がある。経済発展を続ける中国との主導権争いは、これからも覚悟せねばなるまい。
アジア地域で、金融面の安全網強化が前進した意義は大きい。世界的な景気後退で、アジア経済も大きな打撃を受けているが、不況脱却へのけん引役として、アジアの役割に期待したい。日本が一段のリーダーシップを発揮し、域内での協力をさらに進めてほしい。
(2009年5月5日掲載)