新型インフルエンザ感染が一時疑われた東京都三鷹市の40代女性について、米国から帰国した4月28日から疑いが浮上した今月3日までの間、保健所が連絡を取れていなかったことが分かった。潜伏期間に検疫をすり抜ける事態に対応するため、メキシコ、米国本土、カナダからの帰国者は保健所が健康状態を聞くことになっていた。対象者は毎日1万人近くずつ増えており、「追跡には限界がある」との声も漏れている。【清水健二、林哲平】
厚生労働省によると、女性が帰国した28日から政府の行動計画は第1段階(海外発生期)に移った。メキシコなどからの帰国者は感染症法に基づく健康監視の対象として、検疫所が連絡先を聞き、リスト化して各保健所に連絡する。保健所は10日間ほど、電話で健康状態を聞き、外出の自粛を求めることになっていた。
ところが、28日の帰国者は全国で7500人に上り、リスト化の作業は難航。都によると、都内の約800人分が都に届いたのは30日夜だった。管内31保健所への振り分けに1日かかり、女性を含む約40人分のリストは5月1日深夜に多摩府中保健所に着いた。休日出勤の職員1~2人が2日から連絡に当たったが、この日では終わらず、女性の携帯電話に初めてかけたのは3日朝だった。だが応答はなく、その後も連絡は取れなかったという。
入国者の追跡は「外国人旅行者への対応が困難なことなど、もともと限界がある」(厚労省幹部)とされていた。厚労省の担当者は4日の会見で「入国の翌日にはリストを都道府県に送れる体制を整えたい」と述べ、当初の16人から43人まで増やした入力要員を、4日からさらに15人程度増員する方針を示した。
一方、横浜市によると、女性は1日から、のどの痛みなどがあったが、2日から横浜の友人宅へ出掛けた。3日朝になって熱が出たため東京と横浜の発熱相談センターに電話をし、感染症指定医療機関の横浜市立市民病院で受診するよう勧められた。病院側はできれば自家用車で来るよう求めたが、女性は市営地下鉄とタクシーを乗り継いで来院。もし新型インフルエンザだった場合、感染を拡大させる恐れがあった。
横浜市は「受診の際は自家用車で来てもらうよう徹底して伝えたい」「強制はできないが、最低でもマスクは着けてきてほしい」としている。【山衛守剛、中島和哉】
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毎日新聞 2009年5月5日 東京朝刊