きょうのコラム「時鐘」 2009年5月5日

 大型連休中の光景で、変わりつつあるものに「田植え」がある。以前は家族総出で休み中にするのが兼業農家の姿だった

が、コメの品質を高めるには連休後に田植えをした方がいいとのことで、富山県内を中心に「遅植え」が増えている。出穂から実が熟す時期に猛暑が重ならないようにするためである。富山が先行し石川県内でも田植え時期を遅らせる農家が出始めている

稲は元々南方の植物だ。日本に伝わって以来「寒さに強い」品種改良が進み栽培地はぐんぐん北上。今や北海道が一大稲作地帯である。ところが最近は「暑さに強い稲」への研究が進んでいる。2千年をかけて品種改良した結果、南方系の特性が変わったのだろうか

田植え期の変更が象徴するのは、稲の性質を変えてしまったほどの日本人のコメ好き体質のように思える。富山の女性と結婚したヤンキースの松井選手が石川のコシヒカリを食べているとの記事がその一例に思えた。富山のコメもおいしいはずだが、このこだわりだ

文化史的に大きな変化がいま目の前で起きている。5月の水田風景をよく見ておきたい。