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【長野】

北京五輪聖火リレーから1年 平和、人権に思いさまざま

2009年4月25日

北京五輪の聖火リレーで、走者を務めるスピードスケートの岡崎朋美選手=昨年4月26日、長野市で(代表撮影)

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 チベット支持者や中国人留学生らが入り交じり、長野市で繰り広げられた北京五輪聖火リレーから1年。聖火が長野にもたらしたものは何だったのか。関係者たちに1年前を振り返ってもらい、聖火リレーへの思いを尋ねた。

◆善光寺寺務総長、辞退「後悔していない」

 善光寺の若麻績信昭(わかおみしんしょう)寺務総長(52)は「(出発式会場の)辞退は後悔していない。違う形にはなったが、平和を祈るメッセージは発せられた」とさっぱりした表情。辞退の返礼としてダライ・ラマ14世から贈られた仏像は一般公開され、参拝者たちを見守っている。

 聖火リレー実行委員会の事務方トップとしてリレーの成功に心を砕いていた市教育委員会の篠原邦彦教育次長(57)も「もし狭い(参道の)仲見世でいがみ合っていたら…」と善光寺の判断を支持。「長野五輪の意識が薄れる中、平和や人権を考える場になった」と意義を強調する。

 最年長ランナーを務めた山岸重治さん(77)は、原点に立ち返った重い問題を提示する。「純粋な気持ちで駆けた人たちがクローズアップされなかった。障害者や少年たちが大きな行事に挑戦したのに、埋没してしまったのが残念だ」と吐露した。

 チベット支持者たちは1年間の手応えを感じ取っている。聖火リレーをきっかけに結成された市民団体や僧侶たちは「善光寺を媒介にして、平和のために市民として下支えできれば」「日本の仏教徒が中国のチベット政策にノーと強烈なメッセージを発した。善光寺も言い続けてほしい」と話す。

沿道に林立する旗やプラカード=昨年4月26日、JR長野駅で

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 中国人留学生たちは、聖火が無事に受け渡されてホッとした思いを振り返る。当時信州大大学院生だった郭恬さん(25)=東京都八王子市=は一時帰国した際、周囲から「日本では無事に終わって良かった」と声を掛けられたという。郭さんは「隣の国だから敏感ですよね。重視していたんですね」と中国の友達の気持ちを代弁した。

 留学生が通う信州大では、当時工学部長だった山沢清人教授(64)が「学生と教職員の安全第一を考えた」と、大学と聖火リレーとのかかわりを避けた理由を説明。県日中友好協会の井出正一会長(65)は「残留孤児の問題とかもあってそれ(聖火リレー)ばかりやってたわけじゃないからねえ」と話した。

 村井仁知事は「中国の威信をかけた大事業だった。聖火リレーが無事に進み、日中友好親善の成果は得られた」と評価。昨年の訪中でも「大変うまくいった」「お互いに良かった」と現地政府関係者と話が弾んだという。鷲沢正一・長野市長は「辞退せざるを得なかった善光寺は、御開帳で全国から参拝客を迎えている。善光寺は永遠に平和の象徴だと思う」と感慨深げだ。

 

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