昨年の今ごろ、自宅の庭にゴーヤの苗を二株植えた。日よけになるというので、南に面した窓の下に肥料を施して支柱を立てた。
生命力の強い植物である。背丈を超えてどんどん育ち、夏場にはすっかり窓を覆うまでになった。おかげで強い日差しが遮られ、室温が上がるのを防いでくれた。
縦横に生い茂った葉を通り抜けて来る風は、みずみずしい感じで心地よかった。おまけに次から次へと実が収穫でき、いため物や天ぷらなど毎日のように食卓をにぎわした。
ゴーヤやアサガオ、キュウリなどのつる性植物で窓や壁を覆う緑化が、あらためて注目されるようになった。「緑のカーテン」と呼ばれる。昔は家庭や職場でよく見られた光景だが、クーラーの普及などで少なくなっていた。
にわかによみがえった理由は、地球温暖化対策の一環としてだ。冷房の利用抑制で節電につながる。さらに温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を吸収する役目も果たす。
効果はささやかなものだろうが、「ちりも積もれば…」である。岡山県では津山、総社市などの自治体が活発に取り組んでいる。庁舎のベランダをゴーヤなどで緑化し、一般家庭にも動きが広がっているという。
温暖化対策は、あらゆる分野での対応が不可欠だ。工場やオフィス、自動車などから主として二酸化炭素の排出削減が強く求められる。
逆に二酸化炭素を吸収する植物の役割も重要視されている。鍵を握るのは森林の保全や新たな整備だが、市街地の家庭や公共空間などの有効活用も欠かせない。
岡山市では、第二十六回全国都市緑化おかやまフェアが開かれている。主会場になっている広大なカネボウ綿糸西大寺工場跡地には、花と緑があふれる。企業や関係団体が出展した見事な庭園、ガーデニングなどが来場者の目を楽しませている。
フェアは都市緑化の意識を高め、緑豊かなまちづくりを目指して国が提唱し、今回は岡山県と岡山市などが主催した。大型連休中とあって人出は一段と増している。
会期は二十四日までだが、重要なのはその後である。フェアの遺産を県内市街地の緑化にどう生かすか。きょうは「みどりの日」だ。各人の立場で、街に潤いと安らぎをもたらし、温暖化対策にもつながる都市緑化の在り方に思いをはせたい。
中曽根弘文外相が「世界的核軍縮のための『十一の指標』」と題する新たな包括的核軍縮構想を発表した。
「核兵器のない世界」の実現を訴えるオバマ米大統領が、核兵器全廃を目指すための包括構想に言及したプラハでの演説に触発されたのだろう。
核軍縮問題でオバマ政権を後押しするのは評価できよう。ただ、中曽根構想の主な指標は、それぞれもっともな内容ではあるが、実現性は極めて困難な問題ばかりだ。掛け声に終始した感は否めない。
核兵器の原料となる高濃縮ウランやプルトニウムの生産を禁止する兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約については、早期に交渉を開始すべきと指摘。条約発効までの間は、すべての国がこれらの生産凍結を宣言するよう要請した。
全核保有国には、核弾頭廃棄や核実験場の閉鎖推進を要求。特に中国に対しては「核削減に取り組まず、核軍備近代化を進めている」と批判し、削減努力を促した。
北朝鮮には、弾道ミサイルと核開発が「国際社会全体への重大な脅威となっている」として放棄を求めた。
世界が問われているのは、これらの難題克服に向けた道筋をどう導き出すかである。各国の思惑はさまざまで、一筋縄でいかないのは分かっている。しかし、最大の核保有国のリーダーが、「核なき世界」に向けて進み始めた意義は大きい。
中曽根構想には、来年早期に東京で核軍縮国際会議を開き、二〇一〇年の核拡散防止条約(NPT)見直しにつなげる考えも示された。日本はこうした機会を逃さずに米国などと連携を緊密に図り、目に見える形で核廃絶への歩みを具体化していく必要がある。
(2009年5月4日掲載)