2009-04-29
自己実現をはかれる人の7 つのチェックポイント
ついひと月ほど前、転職活動をする中でさまざまなところを訪問し、さまざまな人たちとお話をさせて頂く機会があった。その中で特に印象に残ったのは、とあるベンチャーキャピタル(VC)にお勤めの方のお話しだった。
名前を仮にAさんとしておく。Aさんは、職業柄さまざまなベンチャー企業の人たちとお会いする。特に社長と会う。その上で、彼らの会社が今後成長していくかどうかを見極めていくのだけれど、その際の評価基準となるのは、一も二もなく「社長そのもの」なのだということだった。
こう言ってしまっては何だが、事業内容や設立趣意などはあんまり見ないのだそうである。感覚でいうと八割から九割が社長で判断するらしい。Aさんが言うには、社長は会社の顔であると同時に、会社の性格でもあるという。社長の性格が、会社の性格にもそのまま反映されるからなのだそうだ。大企業ではそういうことはないのだが、中小企業、特に新興のベンチャーにおいては、その傾向が著しい。だから、ベンチャーに投資するかどうかは、書類より何より、その社長と何度もお会いして、色々お話を聞かせてもらう中で判断するのだということだった。
Aさんも、かつては真面目に(と言うと変だけれども)事業内容も子細にチェックしたり分析していたらしい。しかしVCの仕事をする中で気づいたのは、ベンチャー企業においては、最初の計画やビジョン通りに物事が進むケースはほとんどないということだった。たいていが何らかの壁に突き当たる。思惑とは違う場面に遭遇する。想定外のことが起きる。そうして、事業内容の変更を求められるのだそうである。
そうした時に必要となってくるのが、変化に柔軟に対応できる適応力だそうである。そしてそれを決定づけるのが、社長の人柄なのだそうだ。だから、よっぽど「これは確実に当たる!」という事業計画でない限り(そしてそういう事業計画はほとんどないそうだ)、社長を見ることをだいじにされるということだった。
そうした中でAさんは、これも長年の経験から、社長を見る上での指針というか、自分なりの評価基準というものを設けるようになったのだそうだ。それは、一言で言えば「自己実現をはかれるかどうか」だそうである。
人間というのものの最大の欲求は、何でも「自己実現をはかること」らしい。そしてそのためには、さまざまな能力が要求されるのだけれど、最も重要なのは「自己をマネジメントする能力」なのだそうだ。自己をマネジメントする能力、あるいは感覚を持っている人は、自己実現をはかりやすい。そしてそういう人は、会社に対してもマネジメント能力を発揮しやすいのだそうである。
これは、逆の見方をすれば「問題解決能力を持っている」ということになるらしい。人は、人生においてさまざまな問題に直面する。そうした時に、自己実現をはかれる人は、マネジメント能力を発揮して、それらを解決していく。
翻って、ベンチャー企業も事業計画がそのまますんなり遂行されるケースはほとんどなく、当たり前のようにさまざまな問題に直面する。そうした時に求められるのは、何より「問題を解決する能力」なのだ。
だからAさんは、社長を見る時、その人が自己実現をはかれる人かどうか(翻って問題解決能力があるかどうか)を、まず見るのだそうである。そして、それを判断する上でのチェックポイントというのを、長年の経験の中から培ってきたのだということだった。
そのチェックポイントというのを、お話を聞かせて頂く中で「特別に」ということで教えてもらった。そこでここでは、それらをAさんがお話し下さった順に紹介していきたいと思う。
ぼくは、VCに勤める方とお話しをさせて頂くのは初めてだったので、「会社は社長で決まる」ということもそうだったが、ここに紹介するチェックポイントも、なかなかに刺激的で、ハッと目を見開かされるものが多かった。
自己実現をはかれる人の7つのチェックポイント
その1「目標が明確か?」
Aさんがまず初めに取り上げたのがこれだった。
自己実現をはかれる人というのは、何より「目標が明確」なのだそうである。そして具体的だということだった。
これは、明確であればあるほど、具体的であればあるほど良いらしい。なぜなら、目標が明確な人ほど、やるべきことを見つけやすいからだそうだ。そして問題の解決というのは、やるべきことさえ見つかれば、後はやるかどうかなのである。
逆に目標が明確でない人は、どんなにやる気があっても、問題を解決できないことが多いらしい。なぜなら、やるべきことが分からないばかりに、適切な対処ができないからだそうだ。そして不適切な対処というのは、往々にして、対処しない場合よりもことを悪くしてしまう。だから、やるべきことを見つけられるかどうか――つまり目標が明確かどうかは、とてもだいじなのだということだった。
その2「利他的か?」
次にAさんが挙げられたのがこれであった。
まず、「会社は一人ではやっていけない」という絶対の摂理がある。希に、従業員が社長一人というケースもなくはないが、その場合だって、必ず取引先はいる。いずれにしろ、人間というのは一人では生きていけないのだ。
そうした時に、他者の協力を得られる人でないと、どんなに素晴らしい能力の持ち主だろうと、会社を切り盛りしていくのは難しい。違う言い方をすると、「他人に助けてもらえる人」じゃないと、さまざまな問題を解決することができないのだ。
だから、社長というのは他者から助けてもらえるような人間でなければならないのだが、それを決定するのは「利他的かどうか」なのだそうである。
これはもうはっきりしているのだそうだ。人から助けてもらえる人というのは、それまでに多くの人を助けてきた人か、これから助けていきそうな人なのである。人間というのは、そこら辺はある意味ドライでしっかりしており、助けられた分はきっちりお返しをするけれども(また将来助けてもらえそうな人は助けるけれども)、そうでない人を意味もなく助けたりすることはほとんどない。
だから、利他的かどうか(これは違う言い方をすれば人を生かすことができるかどうか)が、社長を見る上での大きな判断材料になるとのことだった。
その3「諦めることができるか?」
三番目は意外なことにこれだった。
これは上に挙げた「事業計画がそのまますんなり遂行されることはほとんどない」という話につながるのだが、どんなベンチャー企業も、途中で必ず壁に突き当たり、多かれ少なかれ事業内容の変更を余儀なくされるのだそうである。その時に重要なのが、変化に機敏に対応できる柔軟性なのだが、こだわりが強すぎたり思い入れの強すぎる人は、得てしてそういう柔軟性を持ち得ずに、古いやり方に固執し、そのまま潰れていってしまうケースが多いのだそうである。
これは、Aさん自身も多くの失敗の中で学んできたことなのだそうだ。Aさんも、かつては思いの丈の強い人や、諦めの悪いしつこい人ほど信頼できるように思っていた。しかし、そういう人が問題に突き当たった時に、旧来のやり方にこだわって失敗するケースというのを多々見てきたそうなのである。そうした中で浮かび上がってきたのが、この「諦めることができるか?」というチェックポイントだったそうだ。
「諦められる人」というのは、言葉だけ聞くと誤解を受けやすいけれども、根性がないとか挫けやすいというのとは意味が違う。それは、自分の誤りや失敗に気づける人、特にメンツやプライドにこだわらない人ということで、逆に強い根性を持っていたり、広い目で見れば挫けない人ほど、諦めることができるのだそうだ。それは、仏教でいうところの「諦観」にもつながるのではないかと、Aさんは語ってくれた。
その4「日常生活を大切にしているか?」
Aさんは、ベンチャー企業の社長さんとお会いする時、どういう日常生活を送っているかというのも必ず聞くようにしているのだそうだ。というのは、日常生活を疎かにしている人は、必ずどこかで行き詰まるからなのだそうだ。
簡単に言うと、規則正しい生活を送っているかどうかを、まず見るのだそうである。ものすごく分かりやすい例でいうと、仕事をするために徹夜をするような人はダメなのだそうだ。徹夜をするというのは、まず事業計画がしっかりできてなかった証拠であるし、さらにいえば効率の悪さに鈍感だということでもある。本当に効率的に考えられる人は、目の前に仕事が溜まっていても、一旦休息して体力や気力が充実してから取り組んだ方が、かえって早く片づくことを知っているからだ。
それに、日常生活を疎かにしている人――例えばつい楽しくて朝まで飲んでしまうような人、それも時折ならまだしも、それが連続するような人は、必ずどこかで破綻するのだということだった。
その5「今を生きているか?」
これはロビン・ウィリアムズ主演の映画のタイトルのような言葉だが、とても重要なのだそうである。「今を生きているかどうか」というのは、「現実を直視できているかどうか」だということだった。
話しをした時に、過去の実績や経験ばかり語る人や、あるいはその逆に未来の夢や目標ばかり語るような人は、黄色信号が点るのだそうである。そういう人は、今を生きていない――つまり現実から目を背けている可能性があるからだ。
これはさまざまなことと結びつくのだが、まず問題というは、必ず「今」起きているのだそうである。だから、それを解決するためには「今」というものを正しく認識し、把握する必要があるのだけれど、過去や未来を見ている人は、これができない場合が多いのだそうである。
特に過去を見ている人は、上に挙げた「諦められない」ことともつながり、目の前の問題を見て見ぬふりをするケースが多いのだそうである。そして、そういう人は一番質が悪く、彼らが経営する会社は、必ず潰れるとのことであった。
だから、「今」を見ているかどうか――これは言い方を変えれば現実をきちんと認識し、把握しているかどうか――は、とても大切なのだということだった。
その6「時間の有限性を知っているか?」
これは「日常生活を大切にしているか?」や「今を生きているか?」にもつながるのだけれど、「時間をどうとらえているか」というのがだいじだということを、Aさんは、VCで長年働いてきた中で、つくづく実感するようになったとのことであった。
Aさんによれば、時間というリソースを無限だと捉えている人は、いまだに多いのだという。そういう人は、得てして「信じればいつかは夢が叶う」とか「どれだけ思ったか、念の強さで勝負が決まる」とか「死ぬ気で頑張ります!」などと、明るく無邪気に耳あたりの良い言葉を使うのだけれど、よくよく聞いてみると、時間というものを無限にとらえているがゆえに、無闇にポジティブになっているケースが多いということだった。
時間というのは、言うまでもなく有限である。1日は、誰にでも平等に24時間しかない。だから、仕事で他者に先んじようと思った場合は、その24時間をどれだけ有効に使えたかどうか、つまり時間をマネジメントできたかどうかによって決まるのであって、決して夢や念や気力の多寡で決まったりはしない。
しかし、この時間の捉え方は人によってまちまちで、きっちりしている人はとてもきっちりしている反面、ルーズな人はどこまでもルーズなのだそうである。
そうして、一見明るくポジティブな人ほど、実はルーズな人が多いという傾向があるらしい。そういう人は、大言壮語とはまたちょっと違うが、聞いていると明るく前向きなことを臆面もなくポンポンと言うのだけれど、その言葉の裏づけに、きちんとした計画や根拠がない場合が多いのだそうである。そして厄介なことに、ベンチャー企業の社長には、この手のタイプがけっこう多いのだそうだ。
なぜなら、そういう耳あたりの良い言葉に引き寄せられて、けっこうな人や物や金が、その人に集まってくるからなのだそうである。一見ポジティブで明るいタイプのその人を、多くの人が信用したり、その人に賭けてみようと思うからなのだそうだ。
しかし、そういう人ほどリソースの配分とか効率的な事業計画とか現実を見つめることができてなくて、失敗するケースは多いということだった。中にはブルドーザーみたいな力強い人がいて、ちょっとした問題ならなぎ倒しながら会社を大きくしていくこともあるのだそうだけれど、Aさんが事業のパートナーとしておつき合いしたいのはそういうタイプではないそうで、だから投資するかどうかを見極める際には、そこを判断材料にさせて頂くとのことだった。
その7「自分を客観的に愛せているか?」
Aさんが最後に挙げられたのがこれだった。そしてこのチェックポイントが、一番大切だとのことだった。
ここで重要なのは、「客観的」かどうかだということだった。人間は、どんな人でも多かれ少なかれ自分のことは愛しているが、「客観的に愛せている人」というのは、意外に少ないらしいのだ。
「客観的」というのは、自分をある意味他者のように見て、他者に対するように捉え、扱うということだった。人間というのは、得てして自分のことを自由になると考えがちだが、それは大きな誤りなのだそうである。自分というのは、例えば寿命一つとってもそうだけれど、本人の意志によって動かせるところは僅かしかない。だから、自分と上手くつき合っていくためには――それは言い方を変えればより良き人生を送り、自己実現をはかるためには――「自分を客観的に愛する」というのが必要不可欠なのだそうである。
そしてこれは、上に挙げた6つのチェックポイント全てにもつながるとのことだった。突き詰めていくと、結局この「自分を客観的に愛せているかどうか」で、自己実現をはかれるかどうか――引いては会社が成功するかどうかは決まるのだそうだ。
まず、自分を客観的に愛せる人というのは、自分の人生が思い通りにならないことを知っているから、きっちりと目標を明確にし、それを生きる上でのだいじな指針とする。
次に、自分を客観的に愛せる人は、人間は一人では生きていけないことを知っているから、他者をだいじにする。
また、自分を客観的に愛せる人は、文字通り自分を客観的に見ることができるから、問題に直面した際、こだわりを思いの外あっさりと諦めることができる。
さらに、自分を客観的に愛せる人は、自分を労る気持ちを持てるから、日常生活をだいじにする。
しかも、自分を客観的に愛せる人は、自分が今にしか生きていない(過去にも未来にも生きていない)ことを冷静に見つめられるから、勇気を持って現実と向き合うことができる。
そして、自分を客観的に愛せる人は、自分の時間(人生)が有限であることを知っているから、これをマネジメントして有効活用しようとするのだそうである。
まとめ
Aさんが言うには、上に挙げたチェックポイントは、必ずしも絶対ではなくて、例外は常に、そしていくつもあるのだそうだ。しかしこれらは、VCという仕事を全うしようとしてきた中でいつしか培ってきたものであって、こだわりを持つわけではないが、今はそれなりに効率的に機能しているので、有効活用させてもらってるとのことであった。
それを聞いて、ぼくは、これはVCやベンチャー企業の社長のみならず、他の多くのことにも適用できるのではないかと思った。何より、多くの会社の浮沈を間近に見てこられたAさんの経験と思考の中から生まれた言葉だから、とても説得力があるし、こう言っては何だが、面白かった。
それにこれは、文字通り自己実現をはかりたいと考えている、ぼくを含めた多くの人にとって、とても参考になるのではないかと思った。これを知り、意識しながら生きていくことによって、自己実現をはかる上での大きな助けになるのではないかと思ったのである。
だから、Aさんの許可を頂いた上で、ここに掲載させてもらった次第である。
「いまを生きる」トレイラー
http://www.youtube.com/watch?v=Q7rIhyux88U
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