年々、季節性インフルエンザの怖さが強調され、昨冬から極力マスクを着用することにしてきました。それも暖かくなり、もう手放そうとした矢先、ふってわいたような新型インフルエンザ感染。メキシコで多数の死者を出したうえ、感染が北米から欧州に広がり、ついにアジアでも感染者が確認されました。
動物由来のインフルエンザウイルスが人への感染によって未知のウイルスになると、免疫を持っていないために爆発的に広がるという、従来から危惧(きぐ)されているパンデミック(世界的流行)の恐れが出ています。
とはいえ、今のところ強毒性は見られず、むやみに大騒ぎしたり、いたずらに不安をあおったりすることは厳禁。県や各自治体も相談窓口や対策会議を開いていますが、極めて的確な情報提供が求められます。我々県民も大慌てすることなく、まずはしっかりした手洗い、うがいを励行して、マスクも活用し、安全度と安心感を高めましょう。
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新型インフルエンザ問題がニュースの大部分を占める一方で、生活上の安心・安全に直結する問題も厳として存在しています。世界的規模の景気悪化に伴って厳しくなる雇用、“後期高齢者”の不満や医師不足などを招いた医療、そして長年にわたるズサンさが深刻な影響を及ぼしている年金--。
ほんの数年前、年金改正をPRする与党幹部たちが「100年安心の年金」と訴えていました。当初から計算の基になる予測値が甘いと指摘されていましたが、案の定、早くもほころびが見え出しました。保険料の納付率が現状のままでは、厚生年金の給付水準が政府公約の50%を割り込むとの厚生労働省の試算が明らかになったのです。百年安心どころか、“万年不信”になりかねません。
追加経済対策を掲げる政府が先週、国会に提出した補正予算案。国の借金に当たる国債の追加発行は11兆円近くに上り、今年度の総額は44兆円余りと過去最大に。この巨額な財政出動に対する評価は専門家の間でも分かれていて、生活の安堵に結びつくかどうか。こちらも真剣に取り組むべき重大なテーマです。
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景気対策として高速道路のETCによる「1000円乗り放題」が完全実施となり、予想通り大幅な利用増を招いています。最近は高齢ドライバーの逆走が指摘され、新名神の開設前の甲南インターチェンジでは防止実証実験が行われましたが、四国の高速道路で心臓が縮み上がる経験をしました。
一段高いところを走る対向の下り車線の車がみんな低速のうえ、盛んにライトを点滅させているのです。おかしいなと思ってスピードを緩め、カーブを曲がったとたん、逆走の車が前に。すんでのところで、なんとか衝突を避けることができました。異常を教えてくれた人たちにいくら感謝しても足りません。
この連休中、走り慣れない高速道路を走る人も多いことでしょう。運転も大事なのは安心・安全。十分な余裕を持って、ハンドルを握りましょう。【大津支局長・小林成明】
毎日新聞 2009年5月4日 地方版