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新型インフル:日本とメキシコの貿易に打撃の可能性

日本とメキシコの貿易額の推移
日本とメキシコの貿易額の推移

 新型インフルエンザで最大の感染者が出ているメキシコには、自動車、電機メーカーを中心に多くの日本企業が進出している。各メーカーは連休に当たる今月5日まで操業を取りやめる動きが出ているが、今後、感染が米国など周辺国に広がれば、米墨間の通商が滞り、日本企業の業績や日墨貿易にも打撃となる可能性がある。【大塚卓也】

 日本企業のメキシコ進出は、05年4月に日墨経済連携協定(EPA)が発効し、対墨投資に内国民待遇が適用されるようになったのを契機に拡大した。すでに北米自由貿易協定(NAFTA)でメキシコと北米間の関税障壁が取り除かれていたことから、米市場向けの低コスト生産拠点と位置づけたからだ。

 先行組の日産自動車に続き、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、いすゞ、富士重工業、日野自動車など自動車大手が相次ぎ完成車・部品の生産・組み立て工場を建設。電機メーカーでもパナソニックやシャープが、テレビやデジカメなどの音響映像機器の生産に乗り出した。

 日墨間の貿易量は、進出企業の生産に比例して膨らんできた。財務省の貿易統計によると、日本からの輸出は自動車や電機部品、乗用車用鋼材などが大半で、05年の7647億円から07年の1兆2045億円まで3年連続で2ケタ増を記録した。一方、輸入は08年まで4年連続の増加になった。自動車用シート、パソコンなど進出日系企業の製品の逆輸入以外に、豚肉や銀などが日本に入ってきている。

 日墨貿易の転機となったのは、昨秋のリーマン・ショックだ。秋以降の米国市場の急激な落ち込みで各社も生産調整を本格化、08年は日本からの対メキシコ輸出が前年比14.4%減となった。

 米景気の悪化で細った日墨貿易に、今回の新型インフルエンザが追い打ちをかけるのではというのが日本企業の懸念材料だ。米国ではメキシコからとみられる新型インフルエンザ感染者が複数確認されている。今のところ、国境閉鎖や国内移動制限などの強硬措置は取られていないが、空港や長距離バスターミナルでの感染監視作業は強化されており、「物流への影響で生産計画が狂わないか心配だ」(大手電機メーカー)との指摘も出ている。

 対米輸出の生産拠点としてメキシコを重視してきた日本企業の間では、もともと昨今の米墨関係を心配する声が出ていた。

 日本貿易振興機構(JETRO)によると、米墨間では新型インフルエンザ問題発覚以前の3月中旬から通商摩擦が生じていたからだ。

 排ガス基準が米国の環境基準に適合しないとして、米国がメキシコ製トラックの直接乗り入れを禁止。これに対してメキシコが米国製品に報復関税を課す決定を出した。

 報復関税の対象は貴金属製宝飾類など89品目で、JETROは「印刷物も対象に含まれ、米国で作った製品説明書をメキシコ工場で梱包(こんぽう)している一部メーカーに影響が出ているほか、日本メーカー製しょうゆの対墨輸出にも20%の関税が課されている」と説明する。

 通商摩擦に新型インフルエンザの影響が加わり、米墨貿易が大きく減少するような事態に陥れば、日本企業は海外戦略の見直しを迫られそうだ。

 ◇メキシコに進出している主な日本企業

 <自動車>トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、いすゞ、富士重工業、スズキ、日野自動車

 <電機>東芝、パナソニック、ソニー、シャープ、日本ビクター

 <その他>シチズン、サントリー、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事

毎日新聞 2009年5月3日 13時05分(最終更新 5月3日 15時12分)

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