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新型インフルエンザ:米・メキシコ国境、緩い監視 米「閉鎖、効果なし」

 【サンイシドロ(米西海岸)吉富裕倫、ワシントン小松健一】世界で最も新型インフルエンザの感染者が出ているメキシコと米国。米議会では「国境を閉鎖すべし」との声も上がるが、米政府はメキシコとの密接な経済関係やヒスパニック(中南米系)住民に配慮し、閉鎖する気配はない。国境を訪れると、意外なほどにチェック態勢は緩やかで、市民の危機意識も低かった。(6面に特集、3面にクローズアップ、4、7面、社会面に関連記事)

 サンディエゴとメキシコ・ティフアナを結び、最多の年間約6000万人が往来するサンイシドロ国境検問所。米側からメキシコに入る時は車も人もノーチェック。徒歩で入ると、パスポートの提示すら求められなかった。歩行者用の通路では、保健所スタッフ数人が立ち、インフルエンザ対策のチラシを配っていた。

 逆にメキシコ側から米側。24車線で車が止められ、朝の通勤時間帯は1時間半から2時間待ちとなる。米政府は4月27日から、せきや発熱など様子のおかしい人を発見した場合、保健所に連絡するよう指示。だが、日本のようにサーモグラフィーによる体温測定などは導入していない。

 米国籍のビクター・サンタナさん(49)は、家計節約のためティフアナ側に住み、サンディエゴ側のレストランに通勤する。「初日の午後(4月27日)は混雑して1時間20分かかった。でも、その後は普段と同じで、20分で通過できたことも。チェックは一貫していない」

 米国にとってメキシコはカナダ、中国に次ぐ貿易相手国だ。貿易総額は年間3680億ドルで、延長約3200キロの国境を行き来するトラックは年間490万台、コンテナは260万台、人は1日平均60万人以上に上る。

 「国境閉鎖を選択肢の一つとして検討すべきだ」(マケイン上院議員・共和党)。感染拡大を憂慮し、米政府に対し国境閉鎖や入国管理の厳格化を求める声もある。だが、ナポリターノ国土安全保障長官は「既に感染が広がっている以上、閉鎖しても効果はない」と言い、現状維持の姿勢を崩さない。

 検問所に近いサンディエゴ側。マスクを付ける人は30~40人に1人ぐらいしかいない。妻と一緒にティフアナから買い物に訪れたメキシコ人のヘクター・エビレスさん(34)は、米側検問所の係官もしていなかったことを指摘、「マスクぐらいしてもいいのでは」と話した。

毎日新聞 2009年5月3日 東京朝刊

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