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【コラム】

中日春秋

2009年5月4日

 織田信長といえば、愛誦(あいしょう)したという<人間五十年、下天の内をくらぶれば夢まぼろしのごとくなり…>が頭に浮かぶ。下層の四王天の一昼夜は、人間界の五十年に当たる。対比して、人間の命のはかないことを表す(『広辞苑』から)

▼人間八十年の今も、はかないことに変わりはない。しかし人間界にいる身からすると、三十年の差は大きい。福沢諭吉は<一身にして二生を経(ふ)る>との言葉を残しているが、必要な時間は十分にある

▼ただし、年齢を重ねることを衰退ととらえるのは禁物だ。そのうえで「自己規制をしない」と、心掛ける必要がある。きっと無性に、いろいろなことに挑戦してみたい気分になる

▼実はこれ、五十代後半になる政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さんが著書『悩む力』で説いている「二生を経る」ための処方せんである。自分自身は、まず俳優に挑戦したいという。偽善的悪人など、自分のイメージと正反対の役を演じたいというから大胆だ

▼ちなみに俳優や歌手、タレントは「大人の夢」として人気がある。第一生命保険がかつて行った調査では五十代の男性で八位、女性で五位と上位に入った。気分は若者に近いのだろう

▼ゴールデンウイーク中、時間を持て余したときに「自分ならば…」と思案してみるのも悪くない。「一身にして三生」、いやもっと数多く生きたい意欲満々の人もいそうである。

 

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