新型インフルエンザ・メモ
安藤@荒川医院
  • パンデミック(pandemic)とは、ある感染症や伝染病が世界的に流行することを表す用語である。
  • 大震災は地域的、パンデミックは全国的・世界的 ⇒ 救援が来ない!?
  • 寺田寅彦
    • ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい。 ⇒ こちらも。(^-^)ゞ

  • 都心中央区でも下記、としていますが、現時点(09/5/1)では、国内に入って来る新ウィルスをまず迅速・的確に把握、が大事。(^-^)ゞ
    各医療機関内での感染拡大防止の為、メキシコアメリカなどから帰国された方で、鼻水・咽頭痛・咳・38度以上の発熱などの症状がある場合には、医療機関を受診される前に、まず中央区保健所(TEL:3541-5254/5930)へご相談下さい。
      
  • 新型インフル「弱毒性」でも警戒必要:(09/4/30)
    • 強毒性のH5N1型ウイルスは、のどや肺などの呼吸器だけでなく、内臓など全身に感染が広がるのが特徴で、感染者の免疫機能が過剰反応して、重症化すると考えられている。しかし、米疾病対策センター(CDC)の遺伝子解析によると、今回のウイルスは強毒性のH5N1型と異なり、呼吸器にしか感染できない構造だったという。
    • 毒性が弱く、重症化率が低くても、多くの人が感染すれば死亡者数は増える。弱毒性の方が感染に気づかないうちに周囲に広げる危険性が高い。マスクをするなど、感染拡大を抑えることが大事。

●H1N1リンク集:
  1. 直近情報集防災対策RM-WebN-MedJOHCA(海外勤務)、
  2. Yahoo Topics感染症と衛生新型インフルエンザ)、 Jiji.com
  3. 日本医師会感染症情報センター全国保健所長会WAMNET 
      
  4. 新型インフルエンザへの対応(首相官邸)
  5. 新型インフルエンザ対策関連情報(厚生労働省)
    1. 症例定義と届出様式(09/4/29)、医療体制の整備(09/4/30)、
  6. 新型インフルエンザ専門家会議は健康局から検索
         
  7. 東京都の対応 東京感染症アラート症例定義東京感染症アラート発生届東京都Q&A東京都福祉保健局
  8. 医療施設におけるブタインフルエンザA (H1N1)ウイルス感染が確定もしくは疑われる患者の診療における感染制御の暫定ガイダンス(CDCによるガイダンス:仮訳)(PDF:211KB)
         

●H5N1対策:
  1. 目次:1)リンク集、2)H5N1、2)現場で、3)備蓄、4)プレパンデミック・ワクチン 5)国際比較
リンク集

H5N1とは
  • 事前準備と緊急対応(岡田晴恵氏)
    1. H5N1型が騒がれ初めて10年間で、3億3千万羽の鳥を殺処分(=既に鳥の中ではパンデミック)。かつ宿主域が鳥類からネコ、ネズミ、イヌ、ウサギ、ブタ、トラ等に拡大し、全身感染により高致死率でこれらの哺乳類を殺している。
    2. 通常のインフルエンザ・ウィルスが呼吸器上皮に限局であるのに対し、H5N1型ウィルスはウィルス血症から多臓器不全を起こす。特に腸管の損傷が激しく、、咳、喉、頭痛などの前に、腹痛、下痢という場合がある。
      • ヒトA/H5N1感染症の臨床症状:
        • 重症疾患:通常のインフルエンザの概念を超える。
          • 全身感染の可能性:サイトカインストーム
          • 致死率50%以上(37〜88%)
        • 全身症状:発熱(38度以上)、出血傾向、多臓器不全
        • 呼吸器症状:下気道〜肺の感染
        • 消化器症状:腸管感染、下痢(70%以上;血性あり)
        • 他症状:脳炎、心筋炎、出血傾向、胎盤・胎児感染
        • 不顕性感染例は殆ど無し。
      • H5N1ウィルス感染患者の特徴:
        • 小児・若年者に患者、重症例、死亡例が多い
        • 潜伏期:2〜8日(平均4日)
        • 感染様式:飛沫感染が主な感染経路、他、経口感染
          • ウィルス排泄期間は潜伏期から発症後2週間と長い
          • 空気感染の証拠は無い(可能性はある) 
    3. 今、すべきは、国が全国民分のプレパンデミック・ワクチンを作り(その予算は全国民分を作っても1,700億)、まずH5の基礎免疫をつけること。その段階でH5は新型では無くなり、重症化阻止が可能。⇒こちらこちらも。(^-^)ゞ
             
  • 日本大混乱必至! 迫り来る新型インフルエンザ H5N1 の正体とは(岡田晴恵氏)
    1. 現在、最も注意すべき重要な点は、世界中の鳥で既にパンデミックとなっているH5N1型鳥インフルエンザウイルスは、強毒型ウイルスだということ(スペインかぜですら、弱毒型の新型インフルエンザだった)。
    2. 08/4時点で人へのH5N1型鳥ウイルスの感染者数は、公式見解では約350人で、236人が死亡(致死率約64%)。
    3. 世界のどこかで新型インフルエンザウイルスが発生すれば、日本には数日で航空機を介してやってきて、1週間で感染爆発が地域で起り、1ヶ月以内で大流行となり、過去の例から考えても2ヶ月間近く流行する。⇒こちらも。(^-^)ゞ
    4. 現在のH5N1型ウイルスでの致死率は若い人のほうが高い(10代で72%)。
      これはサイトカインストームと呼ばれる生体防御の過剰反応が原因。米国などでは、ワクチン政策の推進とともに、若い世代にワクチンや治療の優先順位を上げるという議論が、国民を巻き込んで、実際には国民アンケートまで行なって、話し合われてる。
      右図:高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)に感染した人の年代別症例数(WHOに報告された感染確定症例数。トルコの12例を除く315例。2003年12月1日〜2007年8月31日)
    5. プレパンデミックワクチンはH5N1の新型インフルエンザに対して、発症阻止はできなくとも、マウスやフェレットでの動物実験では全身感染を防ぐ効果が確認されている。全身感染を起こさなければ、致死率は大幅に下がる。
    6. タミフルはワクチンと違って、広くインフルエンザウイルスに一定の効果が見込めるが、耐性ウイルス出現の可能性がある。吸入式のリレンザは上気道の表皮に留まるので、弱毒型のインフルエンザであれば効果が見込めるが、血中に入るH5N1型ウイルスだと難しい。

現場で・・・医療施設等における感染対策ガイドラインクリニックでの対応熱発者の問診判断基準例
  • パンデミック対策のベストチョイス (有効なパンデミック対策「感染中断免疫」:外岡立人氏 )
    1. Aborted-Infection Immunity (感染中断免疫):
      1. 感染後早期に抗インフルエンザ薬を服用させ、軽症で治癒させると共に免疫をつける。 市民が発熱数時間以内にタミフル等の抗インフルエンザ薬を服用することで達成。
      2. 服用開始時間は、発熱を呈してから12〜24時間以内。遅くとも36時間以内。
      3. 保健所が配布、または薬局販売(OTC)。*薬事法改正が必要
    2. プレパンデミック・ワクチン投与:
          
  • 「発熱外来」もナンセンス(こちらの文末参照;菅谷憲夫氏)
    1. 欧米では「発熱外来」の計画は無い。インフルエンザに罹った患者からは、発熱の前からインフルエンザウイルスが排出されている。発熱外来で振り分けてみた処で、既に家族や会社や学校など周囲への感染は到る所で起こってしまっている。「発熱外来」はSARSならば意味があるが、インフルエンザでは寧ろ有害。そもそも患者数が多すぎて、物理的にも無理なことは、臨床家なら常識で分かる。
    2. こちらも(押谷仁教授@東北大学大学院医学系研究科)
      • (2002年から翌年にかけてアジア各国で死者を出した)SARSの時のように、新型インフルエンザも封じ込めできると誤解している人が、今も医療関係者の中にもいる。
      • 急いで近隣の病院に行くのではない。体が弱っている人が集まる病院に何の対策もなく感染者が訪れたら、感染はあっという間に広がる。保健所などに設置される予定の『発熱相談センター』にまず電話して、指示に従い感染を防ぐ対策が整った医療機関を受診することが重要。
          
  • 新型インフルエンザ対策岡部信彦氏)
    1. 致死率50〜60%の感染症が長く広く大流行する例は殆ど無く、今の鳥インフルエンザの高致死率の侭、ヒトで大流行となることは到底考えられない。
    2. 通常のインフルエンザに使うウィルス迅速診断キットは、A型インフルエンザウィルスとしてH5N1も検出する(日本の養鶏場でもスクリーニングに使用)。但し、ヒトでH5N1に感染した場合、このウィルスは一気に気管支・肺へ行き、鼻や喉では増えない為(=感染し難い、かも知れない)、感度が15〜20%へ悪くなると予想される。
         
  • 金融危機ではないもう一つの危機(岡部信彦氏)
    1. スペイン型インフルエンザがパンデミックとなった時、対策の取り方で、米国のフィラデルフィアとピッツバーグ、セントルイスの致死率には大きな差が出た。
      1. 最も致死率が高かったフィラデルフィアでは、インフルエンザ発生後、特に強い対策は取られなかった。
      2. それに対して半分の致死率に収まったピッツバーグの場合、劇場やサロンの閉鎖、スポーツ大会の延期、教会の閉鎖など1カ月にわたって段階的に対策を取った。
      3. そして最も致死率が低かったセントルイスでは、最初の死者が出た後、わずか数日で劇場や映画館、学校、プール、ビリヤードホール、ダンスホールなど人が集まる場所を一気に閉鎖してしまった。この閉鎖を解除したのは1カ月半後だった。
      即ち、医療だけではなく、市民の理解と協力次第で市民自身が助かる
         
  • 新型を意識した季節性インフルエンザの診療を(08/4)
    1. 新型インフルエンザ流行時には、重症例に対する治療として抗サイトカイン療法の必要性も指摘されており、同効果を持つクラリスロマイシンの治療効果も要検討。
    2. 解熱薬で注意したいのは、15歳未満のインフルエンザ患者では、アスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸などの解熱薬は投与しないこ。小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、より危険性の少ないアセトアミノフェンが適切。
      !!!!
  • 新型インフル流行時に医療現場を維持できるか(08/9)
    1. 職場の感染予防策=個人と組織の行動変容が重要
      1. 1)感染者に接しない、2)咳エチケットを徹底する(ポスター例)、3)流行地域にいかない、4)できるだけ顔を触らない、5)アルコール度数60パーセント以上の速乾性手指消毒剤で入念に手を洗う癖をつける。
          
  • 今から出来そうなこと・・・下記3.4についてはこちらも。事業継続計画(BCP)、
    1. 2週間〜2ヶ月分の食料品や日用品を備蓄。流行時には自宅篭城が一番有効
    2. やむを得ず外出する場合のマスク、ゴーグルも用意。但し、隙間からのウイルス侵入、衣服に付着して感染等の可能性もあり。
    3. 通常のインフルエンザワクチンでも、受けておいた方がよい。新型に感染した場合も、死亡率が半分になる(こちらも参照)。
    4. 肺炎球菌ワクチンを受けておくと、新型インフルエンザに感染しても重症の肺炎にならずに済む(根拠はこちら)。
    5. 解熱剤はアスピリン系ではなく、アセトアミノフェンを用意。
    6. ネット販売のタミフルの殆どが偽物。タミフル耐性の問題あり。
      
  • 不織布マスクの備蓄を25枚/人(08/9) ⇒ 厚労省専門家会議(資料議事録
    1. インフルエンザウイルス自体は極めて小さいが、通常は液体と一緒に飛散する為、その液体の大きさ(5マイクロメートル)を補足できる不織布マスクで対応可能(ガーゼマスクは不可)。
    2. 現時点で「効用あり」とされる医療用のN95マスクや防塵用のD2区分マスクは日常生活ではオーバースペック。
    3. 不織布マスクは「いざ」という時に品不足が予想されるため、事前の備蓄を推奨。1人あたり20〜25枚を目安。使い捨てであることに注意。
         
  • カプセルも宇宙服も不要 新型インフル対策で消防庁通知
    1. 不要とされたのは、搬送訓練の時によく見られる患者隔離カプセル(アイソレーター)、「宇宙服」及び足の靴カバーの「重装備3点セット」。専門家からも「科学的根拠はなく、ちょっと大げさ」との見方が出ていた。
        
  • インフルエンザシフト
    1. 複数の執筆者が待合室について、別室が無ければ、咳エチケットを実践し、他の患者から1m以上離れて座る、としている。
         
  • 発熱外来でのトリアージ=1分間の呼吸数を測定
    • 1〜5歳では40回以上、6歳以上では30回以上であり、SpO2が低い場合は発熱の程度に関わらず即、入院とする。
       
  • 自宅待機者がインターネットを一斉に使い始めても大丈夫か
    • 答えはノー。現在のインターネットは複数のユーザーで帯域を共有するのを前提としている為、学校に行けない学生や子供もインターネットを使い始め、逼迫することが予想される。
        
  • 新型インフルエンザ対策」と地域医師の問題意識をみる=東京・品川区医師会(1)(2)(3)(4)(5)

備蓄について
  1. 抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン(専門家会議;07/9)
    1. 流通調整:
      1. 国内発生前
        1. 返品を行わないよう、医療機関及び卸売業者に対して指導
        2. 医療機関や住民に対して不要入手しないよう、情報提供
      2. 国内発生後
        1. 都道府県は、医療機関ごとの届け出患者数と使用状況に関する情報収集を強化
        2. 流通薬について、指定する医療機関や発熱外来に集中するよう卸売業者に指導
        3. 都道府県は、医療機関の悪質な買い占めを公表
        4. 備蓄薬は、卸売業者を通じて都道府県が指定する医療機関に配送。使用は都道府県分を優先し、ITB-$7$,$A$JETF;I\8)$KBP$79q$NHwC_J,$r;HMQ
    2. 新型インフルエンザが発生した都道府県が講ずべき措置:
      1. 新型インフルエンザが発生した都道府県においては、当該都道府県が指定する感染症指定医療機関等及び発熱外来を行う医療機関(以下「指定医療機関」という。)においてのみ、患者に対する医療提供を行うこととしている。
      2. このため、都道府県は、流通用タミフルについて、当該指定医療機関に集約することとし、指定外の医療機関に対し、流通用タミフルの発注を見合わせるよう要請するとともに、卸売販売業者に対し、指定医療機関の受注のみに対応するよう指導する
           
  2. 備蓄タミフル、5年で無駄? 新型インフルに使途限定(06/3)
    1. 備蓄用は新型発生時だけに使い、普通のインフルエンザ治療には使わない「使用制限」が付いている。治療用は1錠当たり約363円、備蓄用は6割以下の約211円。
        
  3. 意外とタミフル備蓄量の少ない日本(08/3)
    1. 2007年4月現在で,日本は19.5%で世界の25位.スイス,ルクセンブルク,オーストラリア,フランスなどでは,40〜55%。
        
  4. 東京都、タミフルなど独自備蓄 300万人分(08/8)
    1. 29日の会見で石原慎太郎知事は「国に代わって、備蓄を積極的に行う」と表明。厚生労働省によると、自治体独自の備蓄は初めて
        
  5. タミフル備蓄
    1. pandemicになったときは集団的に予防内服が必要、本来のエビデンスのある予防投薬は1週間超〜6週間まで。
        
  6. リレンザ:予防投与が可能に(07/1)
    • タミフルでは認められていた「慢性呼吸器疾患」がリレンザでは除外されている。これは、リレンザが吸入剤であるため。
    • 用法と用量は、治療の場合と予防の場合とで異なる。1回投与量は同じ10mg(2ブリスター)であるが、投与回数は1日1回(治療では1日2回)と減り、投与期間は10日間(治療では5日間)に延長されている。1日総投与量を減らし、投与期間を延長するという投与法は、予防投与では治療時(罹患時)に比べてウイルス量が少ないことが根拠となっており、タミフルの予防投与でも同様である。
    • インフルエンザ感染症の予防の基本は、あくまでもワクチン接種であり、薬剤の予防投与は、家族や共同生活者がインフルエンザを発症している場合にのみ使用を検討し得る。
        
  7. タミフル耐性の謎(小田切孝人氏)
    1. WHOの調査によると、07年10月から08年10月までの期間中、通常インフルのタミフル耐性株の割合はノルウェーで67%、ロシアで45%にものぼり、欧州全体でも25%を記録した。08年6月から9月下旬にかけては、耐性株の割合が南アフリカで100%、オーストラリアで80%など、流行が明らかに全世界に拡大していることが判明。08年3月以前は16%だったのが、1年もたたずに39%にまで急増。
    2. 日本ではH1N1型1713株の2・6%がタミフル耐性(⇒こちらも)、鳥取県だけは32%。世界のタミフルの7割を使う日本で何故少ないのかも不明。
    3. 英科学雑誌「ネイチャー」オンライン版に08年5月に掲載された論文によると、鳥インフルに感染した患者から分離されたH5N1型ウイルスが、タミフル耐性に変異していたことが判明。タミフル耐性を示したH5N1型ウイルスの分子レベルの変異メカニズムが、通常のインフルであるH1N1型ウイルスにみられる変異と全く同じ、だが同じメカニズムの変異を起こしたのかは不明。
        
  8. 新型の抗ウイルス剤の開発について(開発番号:「T-705」;参考
    1. 「T-705」は日本を含め、世界同時開発を目指して、今後世界的な製薬企業との提携を模索して 開発スピードを最大限早めていきたいと考えている。
    2. 現在「T-705」は前臨床試験中であり、臨床試験の開始は早ければ2001年末から、遅くとも2002年春頃を目指したいと考えている。
       
  9. 他:タミフル備蓄の真の目的タミフルの国家備蓄も米ブッシュの意向!?

プレパンデミック・ワクチンについて
  1. 今の時点でのプレパンデミックワクチン接種は時期尚早菅谷憲夫氏
    1. エボラ出血熱とかSARSなどの致死率が高い病気なら感染防御の為に隔離や検疫などの強化策が出てく$k$,!"%$%s%U%k%(%s%6$O85!9Xm45$r@dBPE*$KHr$1$k$Y$-<@45$G$OL5$$$7!"$^$?!"Hr$1$i$l$b$7$J$$!#=P8=$7$?$i?tG/0JFb$K$OA49qL1$,Xm45$7H/IB$9$kIB5$!#Bh1波で国民の25%が、第2波でさらに25%が罹患し、多くの人が新型インフルエンザに対して免疫を獲得するとパンデミックが治まり、国民の10%前後が懸かる毎年のインフルエンザ流行に落ち着いて行き、この間に死亡率も低下して行く疾患。
    2. プレパンデミックワクチンには緊急避難的な意味合いがあり備蓄には賛成。しかし、緊急避難であれば、或る程度のリスクを犯してでも接種すべきで、フェーズ4、つまり小規模な人から人の流行がおきた時に接種を開始すべきもの、フェーズ3の今は決してその時期では無い。
    3. 地域封じ込め策はSARSやエボラを想定したものであり、新型インフルエンザ対策としては不適切。
    4. 抗インフルエンザ薬の十分な備蓄と迅速なワクチン生産体制の構築こそ、真っ先に取り組むべき対策。
        
  2. 見えてきたプレパンデミックワクチンの力量と限界西村秀一氏・菅谷憲夫氏)
    1. プレパンデミックワクチンに限らず、新型インフルエンザ対策のさまざまな政策決定に際しては、米国の教訓を常に意識することが必要。
      • 「いわゆる」専門家と言われる人達の暴走、不確実性に関する脅かしを許し、また利用しようとした人達の存在。
      • そうしたことを防ぐ為の、専門外であって、且つ科学的なGood senseを持った人材集団による冷静なレビューのメカニズムの欠如。
      • 一旦、事を始めようとする際、始める前に、或いは途中で再検討するメカニズムの欠如
    2. フェーズ3の段階で事前接種する理由とは何か、
      1. 、WHOがフェーズ4(海外でヒト−ヒト流行が確認された段階)を宣言してから、実際に免疫ができあがるまでの時間。
      2. 原液の有効期間。
      3. 事前接種によって基礎免疫をつけておけば、症状の軽減が期待できるのではないかという期待感。
    3. 国産と海外のプレワクチンでは、免疫原性の差は大きく、海外のプレワクチンの方が発病防止、更には重症化防止効果が期待できる。海外のアジュバントを導入した研究を行えば、単純計算で4倍の8000万人分を作れる道筋も開ける。
        
  3. 新型インフルエンザワクチン接種の進め方について(第1次案)(パブコメ:08/9/29〜08/10/28)
    1. 世界的にまだプレパンデミックワクチンの事前接種は実施されていない。⇒こちら
    2. 平成20年度、医療従事者など(約6,400人)を対象にプレパンデミックワクチンを用いた臨床研究を実施し、ワクチンの免疫原生(有効性)や安全氏について評価する。⇒09/1の評価はこちら
    3. 新型インフルエンザ発生前においても、臨床研究の結果を踏まえ、平成21年度から医療従事者等に対して事前接種を行うこととする可能性がある(”先行接種の対象者と順位の考え方”あり)。
      
  4. 新型インフルワクチン、事前接種開始 医師ら70人に(08/8/4)
    1. 臨床研究が8月4日に始まり、今年度中に医師や検疫官ら6,400人に接種する予定。有効性や安全性を確認できれば、政府は1千万人に広げる検討をするが、世界初の大規模な試みに疑問の声も出ている。⇒こちら
         
  5. トリインフルエンザに対するDNAワクチン(08/10)
    1. バイオテロ対策として米国の国策で進められているVical社のパンデミックインフルエンザDNAワクチンはウイルスの同定から6〜8週間で製造可能、備蓄期間も2年以上安定。既に、米国で実施された第I相臨床試験の初期成績では安全性が確認されると伴に、H5N1亜型インフルエンザウイルスに対する抗体産生が認められている。
         
  6. 現在行える新型インフレルエンザ対策
    1. 季節性インフルエンザの罹患や同ワクチン接種により主要な抗原蛋白に対する免疫は保持される(=重症化阻止。実際、同ワクチンがH5N1鳥インフルエンザ予防に効果を持つことが、最近いくつかの研究結果から示されている。
    2. 保健行政が現在、新型インフルエンザ対策として強力に推進すべき対策は、1)インフルエンザ・ワクチンの接種、2)高齢者における肺炎球菌ワクチンの接種、である
      
  7. わが国におけるプレパンデミック ワクチン開発の現状と臨床研究

国際比較
  • 致死率63%の「新型インフルエンザ」で日本どうなる なぜ最悪の事態に備えない
    1. 米国(カナダ)では、
      1. 感染率20〜40%、致死率20%(強毒型)を想定。
      2. パンデミック対策費は毎年約9000億円。
      3. 全国民分のプレパンデミックo%/%A%s!J8=:_$NH5N1ウイルスで製造する代替ワクチン。軽症化効果あり)を準備済。
      4. 全国民分のパンデミックワクチン(発生したH5N1ウイルスで製造するワクチン)を発生後6ヵ月で接種の計画。
    2. スイス(フィンランド、イギリス)では、
      1. 全国民にプレパンデミックワクチン接種を計画。
      2. 全国民分のタミフル備蓄。
      3. スイス式は、軽症化→医療負担減→十分なケア→感染者減が見込め、人口が密集している国には合理的な対策。
    3. 日本は、
      1. 感染率25%、致死率2%(弱毒型)を想定。
      2. 2000万人分のプレパンデミックワクチンを備蓄。
      3. 2500万人分のタミフルを備蓄。
        1. 強毒型の場合通常の3〜4倍の投与が必要になるので、実際は700万人分。
      4. 発生から1年後に?人分のパンデミックワクチンを生産(具体的計画なし)。 
          
  • 新型インフルエンザのリアルを語ろう(田代真人氏)
    1. 米国防総省がなにをやっているかは外からは分からない。しかし、当然のことながら相当の予算を注ぎ込んで対策を行っている筈。現在米国は毎年約9,000億円をパンデミック対策に注ぎ込んでいるが、表に出てこない国防費からの支出を考えると、これだけでは済まない。表から見えるのが全てだと思ってはいけない。
       在日米軍を含む在外派遣軍を、パンデミック時にどのようにして米本土に撤収するかという行動計画も、当然のことながら策定済みの筈。
       米国は、国民に対して、新型インフルエンザに関する知識の周知徹底や籠城の為の家庭備蓄の呼びかけを行う一方、事前に用意できるプレパンデミックワクチンの備蓄、全国民分のワクチンを半年で製造し、定めた優先順位で順次接種していく体制の整備を着実に進めている。
       勿論、医療分野のみならず、例えば学校を休校にした場合、子供にどうやって教育を届けるかというような生活面での対策も行っている。ありとあらゆる手段を使って社会機能を維持することを目指している。
       それだけではなく、パンデミックが起きてしまった後に、どのようなプランで社会や経済を回復させていくかという行動計画の策定すら行っている。「何があっても米国は生き残る」というのが彼らの意志。それに従って着々と手を打っている。
    2. プレパンデミックワクチンは重要な対策手段。国民の60〜70%に事前に接種しておくと、パンデミックが起きないという数理モデルを使った研究が発表されている。事前に全国民に接種しておくと、パンデミックによって発生する人的経済的被害を考えれば、圧倒的な低コストでパンデミックを乗り越えることができる。
       スイスは国民全員にプレパンデミックワクチンを接種するとしている。フィンランドもスイスに続いて、国民全員への接種に動いている。
    3. 米国は、初期の大量に接種しないと効かないタイプのプレパンデミックワクチンを、それでも頑張って2,800万人分備蓄した。そこへアジュパントの効果が判明し、1/10程度の少量接種でも免疫を発現させることが可能なことが明らかになった。つまり米国は、対外的には公表していないが、既に全国民分のプレパンデミックワクチンの備蓄が終わったのと同じ状況にある。

新型インフルエンザ・・・パンデミックに備えて(月刊保団連2008No.982)
  • 鳥インフルエンザから新型インフルエンザ発生への危惧と準備の必要性
    • インフルエンザ・ウィルス=A・B・C型の3種類
      1. B・C型はヒトのみに感染
      2. A型はH:1〜16、N:1〜9の144種類
        1. ヒトに感染するのはA/H1N1:ソ連型、A/H3N2:香港型の2種類のみ。(過去にはアジアかぜ(H2N2)も)
        2. 鳥類はA型に感染する代表的動物、主に腸管で増殖し、糞便中に大量のウィルスを排泄する腸管感染症。
        3. 殆どは無症状か軽症だが、H5及びH7の一部が高病原性、ことにA/H5N1の病原性は激しい=家禽ペスト(HPAI=highly pathogenic avian influenza)
          1. 他、H5N2:南北アメリカ、H7:欧州、H9N2:中近東などもある。
        4. 抗原変異(antigenic drift)
          1. 連続抗原変異または小変異:マイナーモデルチェンジ
            1. 抗原性の変化が大きくなれば、A型インフルエンザ感染を以前に受け免疫がある人でも、再び別のA型インフルエンザの感染を受けることになる。
          2. 不連続抗原変異または大変異:フルモデルチェンジ
            1. 数年から数10年単位、突然別の亜型に取って代わる(=新型インフルエンザウイルスの登場)。人々は新型に対する抗体を持たず大流行とな。
    • 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI=highly pathogenic avian influenza)
      1. ヒトへの感染率は極めて低いが、一旦感染すると高率に重症肺炎及び全身症状を起こし死に至る(致死率60%)。
      2. 2008/6/19現在、15カ国で家禽・野鳥でH5N1の感染が確認され、243例の死亡を含む385例のヒト感染確定例(致死率63%)が報告されている。
  • 新型インフルエンザ対策
    1. 医薬品を用いた対策(Pharmaceutical Measures):ワクチン・抗ウィルス薬など
      1. T-705=RNAポリメラーゼを標的としたもの、臨床試験Phase2の段階。
    2. 公衆衛生上の対策(Non-pharmaceutical Measures):学校閉鎖・検疫など 
○その他:
  • ワクチンとタミフルの作用機序
    1. ウイルスの表面にはHAとNAという二つのたんぱく質が存在する。HAには人の細胞に結合する働きがある。結合した状態から感染が始まる。ウイルスの遺伝子(RNA)は細胞内で増殖。RNAは人の細胞膜を自分の膜として利用し、細胞から分離する。分離する際、はさみの役割をするのがNA。
      1. ワクチンを接種するのは、HAが細胞に結合したのを認識してウイルスを攻撃する抗体を作る為。
      2. タミフルは、NAの働きを抑え、ウイルス増殖を抑える。
    2. 世界保健機関はH5N1の患者に対し、季節性インフルエンザ患者の2倍の量を投与し、全国民の25%以上の量を備蓄するよう、各国に勧めている。
        
  • 感染直後の微量のインフルエンザウイルスを5分で検出(08/11/4)
    1. 長浜バイオ大学バイオサイエンス学部の長谷川慎氏らのグループが空港検疫,バイオテロ対策向け高感度病原体検出法を開発。病原体に蛍光試薬を結合させ、レーザー光を当てることにより、病原体の有無を検出するもので、この技術によって、例えばウイルス感染直後の微量ウイルスをわずか5分で検出できる。検出感度は免疫クロマト法に比べて100倍高く,微量のウイルス検体でも見逃すことなく診断可能。
        
  • 鳥インフルH5N1が免疫系を無力化する仕組みを解明(08/11/6)
    1. H5N1は、感染時に抗原の一部を隠す為、ヒトの免疫系が病原体の侵入を感知できず、免疫反応が起きない(11/6:Nature)H5N1の致死性の高さを説明するとともに、治療薬の開発につながる発見。

一般病院及び診療所等の対応医療体制に関するガイドライン:08/11/20)
  • 新型インフルエンザへの感染を疑う者は、発熱相談センターに連絡・相談した上で発熱外来を受診することが期待されるが、当該者が、直接、発熱外来を設置していない受診医療機関(一般病院又は診療所)を受診してしまうことも想定される。また、受診医療機関の一般来院者から、新型インフルエンザに感染している可能性がある者が確認される可能性も否定できないことであり、そうした場合の対応を以下に示すこととする。
    1. 受診医療機関は、新型インフルエンザへの感染を疑う者又は一般来院者について、新型インフルエンザに感染している可能性があると判断した場合、直ちに保健所へ連絡し、受け入れに適当な感染症指定医療機関等につき、指示を受けるものとする
    2. 受診医療機関は、新型インフルエンザに感染している可能性があると判断した者に対し、マスク等を着用の上、保健所から指示のあった感染症指定医療機関等を受診するよう指導する。受診するよう指導した感染症指定医療機関等への搬送に関しては、医療機関若しくは保健所の搬送車又は消防機関等の救急車両により搬送するものとし、状況に応じて、自家用車を利用することとする。公共交通機関の使用は避けなくてはならない
    3. 受診医療機関は、新型インフルエンザに感染している可能性があると判断した者に関する情報を搬送者に伝え、搬送者は十分な感染防止策をとった上で搬送を実施する。
    4. 受診医療機関は、新型インフルエンザに感染している可能性があると判断した者が自家用車にて移動する場合、当該者の携帯電話等の連絡先を、受診するよう指導した感染症指定医療機関等に伝えるものとする。また、受診するよう指導した感染症指定医療機関等の電話番号を本人又はその家族等に伝え、受診前に必ず連絡して受診する時刻及び入口等について問い合わせるよう指導する。
    5. 受診医療機関は、後に法第15条に規定する積極的疫学調査の実施が想定されることから、当該調査を迅速に実施させるため、待合室等で新型インフルエンザに感染した可能性があると判断した者と接触したと思われる一般来院者及び医療従事者について連絡先等の情報を整理した連絡名簿を作成しておく
    6. 受診医療機関は、都道府県等からの法第15条の規定に基づく積極的疫学調査があった場合は、連絡名簿を保健所に提出する。
    7. 受診医療機関は、新型インフルエンザへの感染を疑う者について、新型インフルエンザに感染している可能性がないと判断した場合、当該者に対して、適切な情報を与え、必要に応じて医療を提供するものとする。


  • 事前接種者の入院8人 大流行前ワクチン臨床研究 [09/1:共同通信]

    •  新型インフルエンザ対策として国が備蓄しているプレパンデミック(大流行前)ワクチンの安全性を検証するため、医療機関職員などへの事前接種の臨床研究を進めている厚生労働省研究班は19日、接種した5,561人のうち8人が一時入院したと発表した。
       このうち2人は接種の数時間後に発熱し、ぜんそくの発作や手足のしびれを訴えて入院。残る6人は腸炎や、脳の静脈が詰まる静脈洞血栓症、心室細動などを起こした。
       研究班は「発熱はワクチン接種と因果関係があるが、ほかは持病や薬の服用などが背景にあり、ワクチンとの大きな関連はない」としている。ただし、接種を受けた人に入院が多いかどうかは分からないとして、今後、研究対象となった施設で接種しなかった人たちの入院の頻度と比較する。
       研究では、昨年8月から11月までに、感染症指定医療機関や検疫所の職員ら5,561人に原則として2回接種。1回目の接種後、120人(2.2%)が35.7度以上の発熱をし、3,676人(66.1%)に接種部位の痛みや腫れなど局所反応があった。1,543人(27.7%)に頭痛や倦怠(けんたい)感など全身反応が出た。
       2回目接種後の発熱や局所反応は1回目より少なかった。症状はいずれも若年層で多く、局所反応と全身反応は男性より女性で多かった。
       通常のインフルエンザワクチンで局所反応が出る割合は10%以下。研究班の庵原俊昭(いはら・としあき)・国立病院機構三重病院長は「すべての人に免疫がないので(今回のワクチンで)高率になるのは仕方がない。ワクチンが効いているためとも考えられる」HOC$7$F$$$k!#