(cache) 櫻井よしこさん、構造改革の応援団じゃなかったんですか? - 文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記』

文藝や哲学を知らずして政治や経済を語るなかれ!!!

「三田文学」に発表した『小林秀雄とベルグソン』でデビューし、先輩批評家の江藤淳や柄谷行人に認められ、文壇や論壇へ進出。大西巨人との論争や、小泉・竹中批判、安倍批判、「青色発光ダイオード」の中村教授批判を展開。最近は「沖縄集団自決裁判」問題で、曽野綾子や小林よしのり、及び保守論壇の守旧派・渡部昇一、秦郁彦……等を徹底批判。文壇・論壇に蔓延する予定調和的言説の脱構築的解体を目指すー。というわけで、山崎行太郎の思想・表現活動の拠点たる「ブログ」と「メルマガ」を読もう!!!

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2009-05-03

■櫻井よしこさん、構造改革の応援団じゃなかったんですか?

僕が、もっとも嫌うのは、転向や変節を繰り返して、その時々の流行思想や体制的言説を模倣・反復しつつ、権力側に擦り寄っていく人々ではない。そういう人種は、いつでも、何処にでもいるもので、ある意味では可愛いものだと思う。僕がもっとも嫌うのは、つまり敢えて表へ引きずり出して批判し、徹底的に論破・告発したいと思うのは、転向や変節を繰り返して、その時々の流行思想や体制的言説を模倣・反復しつつ、権力側に擦り寄っていくせに、その転向・変節を隠して、思想的に終始一貫しているかのように振舞う連中である。たとえば、今、小泉・竹中構造改革を支持し、応援するものは少ない。したがって、未だに構造改革を主張する竹中平蔵氏を、僕は、それなりに評価するが、いち早く転向・変節して構造改革や新自由主義は間違いだった、やはり日本的経営を見直すべきだ、と謝罪し、反省し、悔い改め、新しい転向声明本、つまり反省本を書いて一儲けしようとする経済学者を評価する気分にはなれない。櫻井よしこ女史という毎日のようにテレビや新聞、雑誌に顔を出し、最近は武士道論や、あるいは吉田ドクトリン批判や中国批判が売り物の「保守派女性論客」がいる。最近の発言を見たり聞いたりしていると、小泉構造改革や新自由主義に対しては、かなり批判的だったのかと思うのだが、たまたま手に入れた『迷走日本の原点』という新潮文庫をひもといてみたところ、この人は、根っからの徹底的な構造改革派であり、小泉改革の黒幕・宮内義彦オリックス社長やエコノミストの野口悠紀雄氏等、筋金入りの売国的な構造改革派にインタビューを繰り返しながら、郵政民営化や金融自由化を中心とする新自由主義経済学の勇ましい構造改革の論陣を張っていたことがわかる。それならば、今こそ、郵政民営化を中心とする小泉・竹中構造改革を擁護する論陣を張り、小泉・竹中構造改革をつぶそうとする守旧勢力と対決するのかと思うのだが、微妙な言い回しながら、なんと、驚くなかれ、いっしょになって、小泉・竹中構造改革を批判しているではないか(?)。櫻井よしこ氏、曰く、「私は構造改革路線を支持しています。たしかに小泉氏が主導した構造改革は、おしなべて保守主義者からの評価は最悪です。が、構造改革路線の思想上の核は、「国家に依存し、寄生する精神」を退場させることにあった。明治期に福沢諭吉が説いた『一身独立して一国独立す』の大義と同じです。また、副作用として格差を生じたとしても、構造改革は堅持されるべきだと考えています。」「確かに現在は『経済有事』ですから、政府は減税や財政支出を通じて経済の底割れを防ぐ必要がある。しかし不運な人々の救済は、本来は国家ではなく、篤志家の手がけることではないか…」。ここまでは、なかなか根性のある発言であるが、しかし、小泉改革については、次のように言う。「小泉改革には多くの人が期待したけれど、暫くじっと眺めてみれば、各政策を束ねる根本理念や国家観はまるで存在しないことがわかってきました。小泉改革の思想上の核が、諭吉の説いた『一身独立して一国独立す』の大義に通ずるとは思えません。」「小泉改革は、とどのつまり、改革自体が目的となってしまった。同時に、あまりにも歴史についての思想が浅薄で、視点が経済面にだけ集中してしまった。改革を要する現在の日本の状況がどのようにして生まれたのか、そこを解明する意識も能力もなかったために、『結論なき戦略』と成り果てたのです。その中で成長してきた日本の財界に保守の価値観を求めても、空しいのは自明でしょう。」(「諸君!」五月号)。要するに、櫻井よしこ女史としては、構造改革という理念は正しいが、小泉構造改革は、思想的に中途半端で、政策的に駄目だったというわけだ。こういうことを、小泉構造改革が世間の批判を浴び、火達磨になるようになってから、言うところに、櫻井よしこ女史の論壇の遊泳術と処世術がある。いずれにしろ、こういう二枚舌を巧妙に使い分けて、生き延びようとする連中が、現代日本の「保守」だか「真性保守」だか知らないが、いわゆる保守論壇の重鎮としていつまでも居座り、政治家や国民に向かって「自立しろ!!!」「甘えるな!!!」と、自信満々に「お説教」を繰り返すのだから、世も末である。ここらにあたりに、最近の保守思想の劣化と保守論壇の知的頽廃があると言わなければならない。