今朝の産経は政治面に小さく「自民議連、偏向問題でNHK」に質問状という記事を載せています。イザニュースでも以下のようにアップされていましたので、まず、それを再掲しますが、いかにも短い記事なので、質問内容など詳しいことは分かりませんね。実は私はこの番組を観ていないので、自分自身はどう感じたか、ということは記せないのですが、雑誌などで番組を批判した記事や、私の耳に入ってくる情報などを総合すると、相当、ひどいものだったのだろうと思います。
《NHK総合テレビが4月5日に放送した「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』」に、日台友好団体などから「内容が偏向している」と批判が上がっている問題で、自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は28日、NHKの福地茂雄会長あてに質問状を発送した。
質問状では、同番組の内容について、(1)1910年にロンドンで開催された「日英博覧会」の紹介で、日本人と台湾パイワン族との集合写真に「人間動物園」とのキャプションを表記していた(2)台湾で神社参拝を強制して、道教を禁止した-など13項目にわたり、資料の有無などの明示を求めている。
同番組をめぐっては「日本李登輝友の会」(小田村四郎会長)がすでに、福地会長あてに、「日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような史観で番組を制作することは、公共放送として許されるべきではない」とする抗議声明を出した。》
で、同じく今朝の産経の社会面には、《いわゆる「従軍慰安婦」を特集したNHKの番組が放送前、政治家の意図を忖度して改編された疑いが持たれた問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は28日、「番組制作の幹部が放送前に政治家らと面会し、前後して改編指示した一連の行動は、NHKの自主自律を危うくし、重大な疑念を抱かせた」との意見を発表した。ただ、川端委員長は会見で「自主自律をゆがめる改編を、外部圧力で行ったと認定したのではない」と説明した…》という内容の記事が出ていました。
期せずして、政治(家)と公共放送の関係、距離の置き方について考えさせられる記事が並んだわけです。この問題については、この慰安婦番組が話題になったときにさんざん論じられたし、私自身も何か意見を述べた記憶があるのであまり長々と書く気はありませんが、一つ改めて強調しておきたいことがあります。それは、政治家にとってNHKとは非常に有難い存在であるということです。
政治家が閣僚や政党の役職に就くと、潤沢な予算(取材費)を持つNHKの記者は、まずほとんどの出張や講演、政治資金パーティーなどに同行し、その際の発言を報じてくれます。これは政治家にとって、ただで自分の宣伝をしてくれるようなものです。また、新聞は政局記事が多いと批判されていますが、それだけ政治家自身の本音や思惑、所属する派閥の事情や人間関係、国会での駆け引きの舞台裏の類を書かれた相手に嫌がられながらも書いているともいえます。私も、自民党の山崎派と亀井派について書いた記事で、この二つの派閥から「出入り禁止」処分を受けたことがあります(だからといって、別にどうということはありませんが)。
一方、NHKは不祥事でも起こさない限り、そういうどろどろとした部分はまず報じず、ひたすら表の発言を視聴者に伝えてくれます。また、新聞などではあまり大きく言動が報じられることのない社民党や国民新党など小政党の幹部も、NHKの番組に出れば、所属議員数に比例した以上の時間を与えられ、自分と自党の宣伝の場にすることができます。実際、以前、ある小政党の幹部がNHKの不祥事を批判した際、NHKの記者が「あんなにテレビに出してやっているのに」と怒っていた姿を見たこともあります。まあ、そんな感じで、NHK予算などは、だいたいいつも与野党双方から特に異論も出ずに「しゃんしゃん」で可決されます。
数年前のことですが、26日に
例の慰安婦番組の件で、安倍元首相(当時は官房副長官)と中川昭一氏(当時は無役)が圧力をかけて番組を改編させたという虚報を朝日が書いたのは記憶に新しいところですが、あのころ若手政治家に過ぎなかった二人と、自民党の主流派閥だった橋本派と密接につながっていたNHKの力関係は、もう問題にならないほど後者が上でした。実際、党の関係部会などで安倍、中川両氏と同じくあの番組はおかしいと感じた古屋圭司氏らが発言しようとすると、橋本派議員らが「全く問題はない!」などと大声を上げて発言を封じていました。まあもっとも、現在のNHKはその後頻発した不祥事で国民の批判を浴びたこともあり、このころに比べれば直接的な政治力は小さくなっている気もしますが…。
さて、余談がやたらと長くなってしまいました。今回のエントリで私がやりたかったのは、記事ではほとんど省略された冒頭の歴史教育議連の質問状の内容を、ここで改めて紹介することでした。あとは番組を観てもいない私の余分な所感などはさまず、質問状の文言をそのまま書き写すこととします。
《質問状
日本を代表する報道機関NHK総合テレビは、国民の財産であるテレビ電波を、国民の「公共の福祉」に貢献して頂けることを前提に、破格な電波利用管理費(年間・NHK・12億1500万円)だけで付託され、年間約7500億円の事業収入を得ています。
ここでの「公共の福祉」とは、国民の知る権利を充たすことであります。
NHKは、平成21年4月5日「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー第1回『アジアの一等国』」を放送しました。
その番組に対して、日本・台湾の友好親善団体ならびに日・台の有識者から、番組が、偏った視点で制作されていると、尋常ならざる批判が巻き起こっていることは、ご承知のことと存じます。
それは、世紀をこえる日本・台湾国民双方の市民交流にまで、拭いがたい不信感を及ぼしたからに他なりません。
そこで、自由民主党「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、国民が当該番組に抱いた疑問に則して下記の質問をします。
尚、国民が、報道番組制作者の基本的姿勢を知る為と、貴社番組の質の向上を実現するため、質問は、誤解が生じることのない方法として、択一で回答して頂くことにしました。宜しくお願いいたします。
一、1910年に、ロンドンで開催された『日英博覧会』を紹介した映像で、日本人と台湾パイワン族との「一枚の集合写真」に「人間動物園」と侮辱的キャプションを表記していたが、「集合写真」に「人間動物園」と記述してあったか否か。
(イ)記述してあった
(ロ)記述してなかった
二、「一枚の集合写真」に関して、日英博覧会関係資料に、台湾パイワン族を「人間動物園」と指摘した当時の資料があったか否か。
(イ)指摘した資料はあった
(ロ)指摘した資料はなかった
(ハ)調べていない
三、台湾で実施された「改正名」(1937年)が、強制的に実施されたように報道したが、強制を示す資料があったか否か。
(イ)示す資料はある
(ロ)示す資料はない
(ハ)調べていない
四、公務員は、仕方なく「改正名」をしたと報道したが、全公務員が「改正名」をしたことを示す資料があったのか否か。
(イ)示す資料はある
(ロ)示す資料はない
(ハ)調べていない
五、台湾の南北400㎞の鉄道建設は、樟脳貿易のため敷設したように報道したが、それを裏付ける資料があったか否か。
(イ)裏付ける資料はある
(ロ)裏付ける資料はない
(ハ)調べていない
六、本来、鉄道建設は、社会基盤整備事業であるが、仮に、貿易のために特化したものとして、当時の台湾貿易統計で、樟脳が占める比率を調べたか否か。
(イ)比率を調べた
(ロ)比率を調べていない
七、台湾で、神社参拝を強制して、道教を禁止したと報道したが、それを裏付ける資料があったか否か。
(イ)裏付ける資料はあった
(ロ)裏付ける資料はなかった
(ハ)調べていない
八、日本語を話せないものは、バスに乗せなかったと報道したが、行政政策として、指し示す資料はあったか否か。
(イ)指し示す資料はあった
(ロ)指し示す資料はなかった
(ハ)調べていない
九、学校・新聞などで、中国語を禁止して日本語を強要したと報道したが、行政政策として、それを指し示す資料があったか否か。
(イ)指し示す資料はあった
(ロ)指し示す資料はなかった
(ハ)調べていない
十、台湾人女性が日本人と結婚しても、戸籍に入れなかったと報道したが、朝鮮での「創氏改名」は、民事令の改正の中で実施された。その改正は三項目、一、氏名の共通、二、内鮮通婚、三、内鮮縁組。以上の改正だった。朝日新聞『朝鮮版』(昭和15年2月11日付、中鮮版)には、「内地人同様の待遇、内地人の戸籍に入籍の朝鮮人 京城府が率先実施」との記事がある。台湾では、朝鮮と違い日本人の戸籍に入れなかったと受け取れるが、行政政策として、結婚しても終戦まで、日本人の戸籍に入れなかったことを示す資料があったか否か。
(イ)指し示す資料はあった
(ロ)指し示す資料はなかった
(ハ)調べていない
十一、日中戦争当時、台湾に500万人の漢民族がいたと報道したが、原住民の人口比率などの資料を精査したうえで示した数字か否か。
(イ)精査した数字である
(ロ)調べていない
十二、1919年、パリ講話会議に於いて、ウィルソン(米国大統領)議長が「民族自決主義」を唱えたことで、東ヨーロッパ・インド・ベトナムなどの独立運動が始まったと報道したが、同講和会議でウィルソン議長は、日本が提出した「人種差別撤廃決議案」が、19人の委員の内11人の委員が賛成したにも拘わらず、採択しなかったことを知っていたか否か。
(イ)知っていた
(ロ)知らなかった
(ハ)調べていない
十三、同番組に出演していた柯徳三氏は、日本で『母国は日本、祖国は台湾』を上梓して、植民地時代の功罪をバランスよく執筆している。しかし、同番組は、柯氏が「罪」だけを語ったこととして放送したが、柯氏は、インタビューに対して「功」について語らなかったか否か。
(イ)「功」も語った
(ロ)「功」は語らなかった
(ハ)「功」についても語ったが使わなかった
以上、右記質問は、国民の視点に立脚して、シリーズ・JAPANデビューが、真に「未来を見通す鍵は歴史にある」ことを実証して頂きたく、国民の疑問とシリーズ番組の「質」の向上を願って質問させていただきました。
尚、右記質問、13問に関して、わが国を代表する報道機関の代表としての誠意ある回答を、書状受け取り後1週間以内に頂けることを願っています。》
by 阿比留瑠比
自民・歴史教育議連のNHKへ…