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コラム

出版&新聞ビジネスの明日を考える:相次ぐ出版社破たん、出版不況を抜け出す術はあるか (4/5)

[長浜淳之介,Business Media 誠]

「調べ学習」で本に親しむ子供を育てる市川市

 さて、「出版不況の深刻化の背景の1つには、活字離れ、読書離れがある」というのが定説である。特に若者が携帯電話のメール交換やコミュニティ、ゲームに夢中で本を読まなくなったことが大きいとされる。娯楽で本を読まなくなったくらいなら良いのであるが、問題は良質な本を出版している出版社もどんどん経営破たんしていることである。

 日本の明日を担う人たちが本を読まなくなっているのは、単に出版社や書店の経営の問題でなく、国民の学力形成の上でも由々しき事態だ。そうでなくとも、ゆとり教育の影響で学生の学力が落ちていると言われる中、学生の読解力の低下は、日本の将来の国力低下に直結しかねない。

 OECD(経済開発協力機構)が、2006年に世界57カ国・地域の15歳を対象に実施した「生徒の学習到達度調査」によれば(参照リンク)、日本人の読解力は15位で、2000年の8位から大きく後退している。ちなみに2006年の読解力1位と2位は、韓国、フィンランドであり、両方ともITが売りの国だ。「PCや携帯が普及したから読解力が落ちた」という言い訳は通らないのである。

 では、活字離れ、読書離れを食い止め、本を読む若い人が増える見込みはあるのだろうか。小中学生の義務教育の現場では、喜ばしいことに現状を憂う教育関係者の声が反映されて、改善が進んでいる。

 文部科学省の調べによれば、2006年度の公立校の全校一斉読書活動は、小学校(2万2028校)の93.7%、中学校(1万62校)の81.2%と大多数の学校で実施されている。しかも、全校一斉読書活動の頻度も、小学校の18.0%が毎日実施、39.1%が週に数回実施、27.8%が週に1回実施となっている。中学校ではさらに頻度は上がり、53.2%が毎日実施、14.0%が週に数回実施、2.5%が週に1回実施となっている。たまに実施しているのではない。小中学校では授業を通して本を読む機会が増えており、小学校の83.9%、中学校の60.6%が、図書の読み聞かせやブックトーク、読書感想文コンクールなどを実施している。

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 小中学校の読書の拠点は学校図書館であるが、千葉県市川市では一歩進んで、各教科で力を入れている「調べ学習」において、市内の公立図書館と各校図書館を情報ネットワークで結び、1つの図書館として使う試みを行っている。

 これは単に本を検索して、どこに所蔵しているのかが分かるだけではない。中央図書館、市立博物館と市内の小中学校、幼稚園、高等学校、養護学校など全64校を専用車2台が回って、週に2回必要な図書を学校に届け、回収するのである。貸出、返却の窓口は各館・各校の司書が行っている。

 授業の取り組みとして、学校間の相互交流も行われている。一例として、菅野小学校の5年生が、国語の調べ学習「今と昔のごみを減らす工夫」について各人が本で読んで調べたことを、真間小学校の4年生に対して発表。真間小学校の4年生には、「江戸時代のゴミを減らす方法について、昔の知恵と工夫に驚いた」といったような発表を行う生徒もいる。

 また、第二中学校では図書委員が読み聞かせを行ったり、社会の調べ学習で「歴史紙芝居」を作って小学校の生徒の前で発表したり、家庭科の調べ学習で郷土料理を研究したりと、多彩な試みを行っている。

 このような試みが広がっていくと、本に親しみ、問題が起これば本で調べて解決をしようと考える人が増えて、出版社も良書を出すことに注力するようになると思う。





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