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アニメ最大の魅力は、「手づくり感」にある。見慣れたアニメも、どういう風に作られているのか、そこに関心をもつことで、より深い楽しみが! 今回はセルアニメ時代の「色」や「質感」にこだわって、細かいところをつついてみた。

氷川竜介のアニメ重箱の隅
アニメ好きの真骨頂、画面の隅々まで観察するこのコラム。隅ってそもそもなんだ? 隅を超えたアニメ表現とは何なのか?
第10回 高画質化で見えるアニメ本来の「色」  2008.03.25


 現在のように中高生以上のアニメファンが一般化したきっかけは、『宇宙戦艦ヤマト』である。
 1974年にTVオンエア、1977年に総集編で劇場映画化された作品だ。今年2月、その原点にあたるTVシリーズ全26話がHDリマスターでDVD-BOX化された。

 当時高校生の筆者はリアルタイムで同作に熱中し、制作現場にお邪魔しては「見学」を繰りかえした。そのときに見聞きしたことや、設定資料や原画、セル画、絵コンテなど、放送が終了すれば本来は散逸する制作資料を集めたこと、「いったい何をどう使って、あの素晴らしい画面を作っているのか」などと掘り下げて研究したことなどが、現在の基礎になっている。

 というわけで、『ヤマト』のセル画や背景画の現物にはさんざん触る機会があり、実物も持っているので、どういう色味でどういう質感のものかは熟知している。今回のリマスターでは映像技術の進歩によってそれがほぼ完璧に再現されているため、ノートパソコンの液晶上になじみの色味が現れ、しかも質感までもがくっきりと見えるのが分かったときには本当にビックリした。

 特筆すべきは、放送終了後まもなく物故した美術監督の槻間八郎氏の色彩感覚である。当時はセルの色も含めて美術が見ていたため、絶妙な美術的バランスがそこにあるのだ。特に地球側とガミラス側の対比が見事で、黄緑や紫、鮮烈な赤など独特の色味で塗られた建造物やメカはパンチがあって、色の主張と押し出しが強く、昨今の彩度を落としたデジタルアニメに慣れてしまった目には、非常に鮮烈にうつった。

 そもそも1974年当時、なぜセル画が欲しかったかと言えば、関連商品として発売されていたコスモ・ゼロやヤマトのプラモデルの成形色が、どう見てもTV画面で観るものと違っていたからだ。TV画面から直接写真を撮ることも試みたが、やっぱり違う気がする。それもそのはず。メディアがトランスファーされるたびに色は変わるものなのだ。専門的には「色が転ぶ」というが、ちょっとしたTVの調整やカメラの露出でも、色はまったく変わってしまう。当時は自分でも写真を現像・焼き付けしていたので、カラーの難しさはよく知っていた。

 セル画→フィルム(マスターネガ)→フィルム(上映用ポジ)→映写機+スクリーン→ビデオカメラ(撮像管)→TVチューナー→チューニング用回路→ブラウン管→カメラ(ネガ)→プリント と、これだけのプロセスを経てれば、もとの色が残らなくて当たり前。であれば、戦闘機コスモ・ゼロを本物にするにはセルにあたるしかないと、そういう発想だったのである。もっともいつの間にかその色味を再現してプラモを塗ることは忘れてしまい、すっかり「アニメそのもの」の方にハマってしまったわけだが……。

 ということを走馬燈のように思い出せるほどに、今回のDVDはオリジナルに近かったというわけ。質感に関する感想としては、背景が画用紙だというのがはっきり分かるうえに、「エアブラシがセルの上からかけてあるか、裏からかけてあるか、その差が分かる」というのさえある。つまりセルは透明であるだけでなく、ツヤをもつ物質なので、表面からブラシをかけると粉っぽく乾いた感じになるのだが、裏面からかけたときは若干しっとりと見えるわけだ。その差までよく見れば分かる。

 他にも傷やゴミなども非常に鮮明に見えてしまうので、セル重ねの枚数まで分かってしまって、「これはいくら何でも見え過ぎでは」と思う一方、「いやいや、これはこれで嬉しいかも」と思ってしまった。なぜならば、根源的にはアニメは「つくり物」であるからこそ楽しいのだから。セル画や背景など素材を最初に見たときも、「こんなサイズのこれぐらいのものが、あんなに大きなイメージを喚起するんだ」ということであった。

 現在のプレイヤーは調整しようと思えば再生側でいろいろと細かくいじれる。まず、素材そのものが見える状態で届けられた方が、こちらで調整も可能だし、何よりも「一所懸命つくってる感」がやはり楽しかった。
 「アラが見えないように」と努力している制作側から見るとトンデモな意見かもしれないが、しかしこれもまた確かなアニメの楽しみ方のひとつなのである。

 

 
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