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アニメ映像の根幹のひとつに「フレーム」、つまり画面の四隅がある。誰が何を見ているのか、フレームとの位置関係で意味が変わるにも関わらず、TV放送されているアニメではフレームのとり方が急にバラついている。地デジ時代を前にして、いったいアニメの画面に何が起きているのか?

氷川竜介のアニメ重箱の隅
アニメ好きの真骨頂、画面の隅々まで観察するこのコラム。隅ってそもそもなんだ? 隅を超えたアニメ表現とは何なのか?
第17回 地デジとアナログ放送混在、過渡期のフレーム変換   2008.10.25


 この連載の第2回、第3回でもワンセグによる地デジ視聴を話題にした。4:3の地上波アナログと16:9の地上波デジタル、アスペクト比の差をさまざまな方法で変換し、スリ合わせているという過渡期の状況については実に興味深く、また問題含みでもある。

 それから1年と3ヶ月。「アナログ停波(2011年7月24日)からマイナス3年」を割り込み、作り手も受け手も地上波デジタルへの対応が急速に本格化する時期である。アニメ番組も「HV制作(ハイビジョン制作)」が常態となりつつあるこの10月――筆者も遅まきながら地デジによる録画視聴環境を構築してみた。
 そうしてみると、またもアスペクト比と画角の調整についていろいろと分かってきた。地デジでUHF局が従来のTVK(テレビ神奈川)に加えて東京MXも入るようになり、そうすると同じ番組なのに放送局によって画角が違うことも判明した。
 という前提で、現状を改めて整理してみよう。

<パターン1>
 地デジは16:9。アナログはその左右を裁ち落として4:3。
 これは第2回で話題にした『サザエさん』が典型で、キッズ・ファミリーものに多い。レイアウト、作画の時点から左右カットを考慮している。これは地デジ視聴ではマスターと同じ16:9になるが、4:3で見切れないようレイアウトをとっているせいか、何となく左右がスカスカした画面になることがある。

<パターン2>
 マスターは16:9なのに地デジは左右を切り落として4:3。アナログは当然4:3。
 これは深夜アニメの一部で採用されている。地デジで録画しても左右は足りない。要するに完全版が観たければビデオグラムを購入してほしいという意図だろう。これは深夜アニメの場合、16:9の方を優先しているせいか、人間の顔が半分で切れていたりする。

<パターン3>
 マスターは16:9。しかし、地デジ・アナログとも、カット毎にリフレーミングして4:3を再制作を行う。
 これは割とレアな事例で、『CLANNAD』などが該当する。実質上、2種類作っていることになる。完全版はビデオグラムで……ということには変わらないが、熱狂的なファンの場合、16:9でビデオグラムも買った上で4:3のオンエア版も異同版として保存しなければ気が済まなくなる、困ったものである。

<パターン4>
 地デジは16:9。アナログは天地に黒味を入れて4:3の内部に16:9を再現(いわゆるLB=レターボックス)。
 これがいまもっとも自然なパターンで、特に深夜アニメやU局アニメにもっとも多い。画角としては素直で分かりやすいが、アナログではただでさえ足りない解像度を天地の黒で無駄にしているため、画質的にけっこう厳しくなる。
 筆者はPSPなどポータブル動画プレイヤーに変換してよく外出先で鑑賞し、他人にも勧めているが、その理由のひとつにこのアナログLB放送の画素数不足がある。320X240程度の画面で見ても大差ないということなのだ。
 キッズ向けでも、特撮ものだとなぜか多くはこのパターンなのも興味深い。アニメよりも画角調整が難しいのかもしれない(『ケータイ捜査官7』などパターン1もある)。

<パターン5>
 地デジは16:9。アナログは天地に少しだけ黒味を入れ、左右を少し切った14:9(LBだが、目立たない)。
 これは前にも説明したが、暫定的・折衷案的なアスペクト比である。アナログTVの中でもブラウン管のものは「ケラレ」と言って上下左右を少し削った画角で出画するので、14:9だとTVによってはスタンダードの4:3に見えることがあるし、当然、被写体が見切れてしまうことも少なくなる。

<パターン6>
 これも前に問題にした「額縁」と呼ばれる最悪のパターン。
 アナログは天地に黒味を入れた16:9LBだが、地デジはなんとその左右に黒味を足して、天地左右全部真っ黒の中に16:9の画面を置く。不思議なもので天地か左右かどちらかに黒味がある方はまだそんなに気にならないが、両方真っ黒だと妙に気になる。画素数的にも当然不利で、地デジのメリットは出ない。

 これらをふまえた上で確認すると、TVKでは<パターン6>の額縁なのにMXに行くと同じ作品がパターン4のフルフレームになる――そういう事例が多々出てきた。
 さらに話をややこしくすることに、「地デジが16:9だからと言って、必ずしもフルHDマスターを放送に使っているとは限らない」ということも分かってきた。SDからのアップコン(アップコンバーター)もあるし、フルHDから少しだけダウンコンバートして放送しているものもあるようだ。これはパターン1には少ないので、やはり最終目的を「ソフト販売」にした作品のとる衛策だろう。

 オンエア用マスターには光明滅問題に対する補正も加わえなければならないし、またオンエア後に商品用としてリテイクするケースも多いため、放送とビデオグラムの内容が違うことは前から当たり前になりつつあった。加えて、画角・画素数までもがエアチェックとビデオグラムで根底から違うとなれば、別ものと考えるべきなのかもしれない。
 「オンエア用バージョン」はあくまでも一種の「無料お試し版」……地デジ完全移行をふまえ、どうもその傾向が決定的になりつつあるようだ。

 かつてビデオデッキやDVDレコーダーがあれだけ普及したのは、簡単に録画・保存できて簡単に楽しめるということが根のところにあり、しかもアニメファンがヘビーユーザーとしてその普及を牽引していたはずだ。アニメが文化として根づいたのも、簡便さと「期待したものが手に入る」ということに支えられていたし、評価するにしても「みんなが限りなく同じ状態で見る」ということが前提だったはずだが、これも崩れつつあるのかもしれない。

 著作権保護は確かに重要なことだが、あまりバリヤーを高くしても本末転倒では……という気持ちも正直ある。コピーワンスがダビング10に変わり、地デジ用B-CASカードのあり方に関するニュースなども聞こえてくる昨今、こうした画角に関する混乱も早めに解決することを、ぜひ期待したいものだ。

 

 
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