ガイナックスの「会社概要」が人知れず更新、新役員は誰なのか?: 序破急

赤井孝美の辞任後、ガイナックスの新役員となった斎藤友子、監査役について

サイト全体を検索

以前もそうだったのだけれど、ガイナックスの会社概要、特に“役員一覧”の項目は人知れず更新されていることが多い。庵野秀明の名前が消えた時をそうだった。公式サイトで役員が変わったことのアナウンスがあってもいいと思うのだが、それもなく、突然に変わっているのだ。と言っても、2001年7月13日付けの新役員就任のお知らせというニュースもあったりしたので、正直よく分からない。

4月27日に公式ブログとmixiをめぐる騒動で赤井孝美氏が役員を辞任をした際には、以下のスクリーンショットのような表記になっていた。

4月27日に確認した際の役員一覧
役員一覧

昨年7月に株式会社カラーの設立に伴い、“庵野秀明”の名前が無くなり、更に引責辞任によって“赤井孝美”の名前も無くなっている状態。代表取締役を含め、その時点で役員は3人。

そして7月14日に確認した際には、以下のような表記に変わっていた。

7月14日に確認した際の役員一覧
役員一覧

取締役から“映像企画担当”や“統括本部長”などの担当が無くなり、斎藤友子という役員が1人増え、“監査役”の表記も追加されている。

さてまずは、斎藤友子氏とは誰なのか。調べてみたら、SF小説などの挿絵を描いていた同名のイラストレーターが存在することが判明。武田康廣氏の奥さんである、菅浩江氏の小説「暁のビザンティラ」の挿絵も描いている。更に調べていくうちに、2000年にガイナックスから発売されたPCゲーム「あにまる・まぐねてぃずむ ぽちのだいすき」のキャラクターデザインを担当した斉藤友之氏は、斉藤友子氏と同一人物であることが分かった。斉藤友之名義で、“斉藤会”という同人サークルを主宰したり、うたたねひろゆき氏の同人誌に参加したりもしていたようだ。

段々と調べていくうちに、驚くべき情報に辿り着いた。斉藤友子氏は、「トップをねらえ!」のスミス・トーレンの元ネタとなった人物 トーレン・スミス氏の奥さんだったのだ。裏付けとして、大森望氏のサイト内にある新・大森なんでも伝言板の過去ログ斉藤友子/トーレン・スミス夫妻は結婚10周年記念旅行中で海外。という2001年09月13日の書き込みがあることを挙げておく。

また、岡田斗司夫氏の著作「オタクの迷い道」に掲載された「日本女性は海外でモテモテ!」というコラムに、トーレン・スミス氏と斉藤友子氏の写真があったので紹介。

左はトーレン・スミス氏、右は斉藤友子氏。
トーレン・スミス氏と斉藤友子氏

スミス氏との関係が分かり、よりガイナックスと斉藤友子氏とを繋げる線が強くなった。トーレン・スミス氏が分からない人は、“トップをねらえ! トーレン・スミス”のようなキーワードで検索を。

以上のことから、イラストレーターでマンガ家、トーレン・スミス氏の奥さんである斉藤友子氏が、新役員の一人 斎藤友子氏と同一人物である、と言えるだろう。

2002年の新世紀東京国際アニメフェア21で起きた“「綾波レイ」原画盗難事件”に際し、ガイナックスの公式サイトに“イベント担当者”として斎藤友子氏が何が見えますか? 何を感じますか?とのコメントを出していた。現在の公式サイトでは消されているようだが、Internet Archiveにあるページで閲覧できる。これまで書いてきた繋がりを挙げるまでもなく、斉藤友子氏が元々ガイナックスの社員であった事実が判明したことになる。

このコメントは以前読んだはずなのだが、すっかり失念していた。

次に、新たに加えられた“監査役”の項目についてだが、安田猛氏は案外簡単に分かった。アニメ作品のプロデューサーらしく、最近では「トップをねらえ2!」のプロデューサー、「涼宮ハルヒの憂鬱」の製作総指揮などを担当している。恐らくこの人物で間違いないだろう。

角川書店の会社概要によると安田猛氏は、角川の取締役でもあった。

最後に、もう一人の監査役 村松光春氏。この人物に限ってはガイナックス周辺の関係者ではなく、大分県にある“村松公認会計士事務所”の代表者だと思われる。“村松光春”の名前で検索すると、氏が監査役を務めるいくつかの会社がヒットした。周辺の人物ばかりではまずい、ということで公認会計士を監査役にしたのかも知れない。

そういえば、ガイナックス設立以来の監査役といえば、宇宙軍大元帥こと野田昌宏氏だったはずであるが、監査役の項目に名前が入っていない。いつの間にか、監査役ではなくなったのだろうか。

ただの一アニメ制作会社の役員一覧について、長々と書いてしまったが、色々と調べていくと意外な事実が出てきたりして、結構楽しむことができたと思う。

最後に。今回の新役員について調べていて、未だにガイナックスという会社は“身内”で固まって運営している、と感じた。自主制作グループがルーツになっているとは言え、会社設立から20年以上経っても、そのスタイルをずっと維持しているのは、ある意味で凄い。そこがガイナックスがガイナックスたる所以、ある時は“強み”である訳だが、逆に“弱み”にもなると思う。

ガイナックスの将来が心配。

前後の記事
<<
>>

記事に対するコメント (19件)

  1. Annogoo (2007年07月15日 05時13分)

    さすがです、ハイムさん。こういう人知れない情報を提供してくださるのがPROJECT REIの魅力ですね。自分はまったく気がつきませんでした。思えば一年前にエヴァの新作が作られるかもしれないという情報を始めて知ったのもここでした。
    役員氏名をみるといまだGAINAXは山賀さん、武田さん、佐藤さんが中心となって動いてるんですね。斎藤友子さんは途中からGAINAXに参加した方なのかな?鶴巻さんや摩砂雪さん他はアニメーターとしての仕事に集中してるということでしょうか。個人的には山賀監督の新作(蒼きウルはいったいどうなったんだろう?)を見てみたいです。

  2. マグナカルタ (2007年07月15日 13時14分)

    相変わらずの詳細な調査結果、ありがとうございます。
    「斎藤友子」なんてありがちな名前、どうやって調べられたのでしょうか。

  3. (2007年07月17日 03時17分)

    http://www.kadokawa.co.jp/top/kadokawasyoten.html
    参照のこと

  4. (2007年07月17日 06時27分)

    庵野氏が抜けたガイナに未来はないと思う。
    (EVAにとりつかれた者の悲劇はあるかもしれんが)
    エヴァ映画は楽しみである。
    …が、2つの心配事がある。

    まずは、宇多田のテーマソングだ。
    何故やった?なぜ?現在のジブリじゃないんだよ?
    エヴァなんだよ?
    予告デモ通り、Fly Me to the Moonならいいが
     (安っぽさは否めなかったが)
    もしキャシャーソみたいなのが主題歌だったら…
    『笑えばいいと思うよ』の後にかかったら…
    あ~観に行くのやめようかな…

    も一つは、10年経ってるということだ。
    声優大丈夫かな?あの全盛期の声が出せるんだろうか?
    イマをはびこるドラゴソボールゲームみたいにならないか心配だ。

  5. ハイム (2007年07月17日 10時32分)

    安田猛氏は角川の取締役だったんですね。知りませんでした。
    ありがとうございます。


    >庵野氏が抜けたガイナに未来はないと思う。
    確かにガイナックスにおける庵野秀明は無くてはならない存在でしょう。「グレンラガン」とか面白い作品を作ってはいますが、まだまだ庵野秀明抜きのガイナとしては、決定打不足ですね。

    「序」主題歌は
    http://www.emimusic.jp/hikki/news/news_j.php
    で試聴できますよ。ちょっと「誰かの願いが叶う頃」っぽいかも…。

    経年による声の変化も、「現在のエヴァ」という意味では含まれているのでは。良い“味”のようなものを感じられれば良いと思っています。

  6. ハイム (2007年07月17日 12時20分)

    >Annogooさん
    >マグナカルタさん
    申し訳ありません。コメントが保留になっておりました。


    >Annogooさん
    そういったお言葉が凄く励みになります。ありがとうございます。

    >アニメーターとしての仕事に集中してるということでしょうか。
    社会の必然というか、役員になった人たちは山賀氏も含め、あまり現場で活躍しなくなるんですよね。庵野氏は例外だったと思うんですが。
    そういう意味では、ガイナックスの第一線で頑張っている人たちには役員になって欲しくないです。

    「蒼きウル」はOVAで、とか色々噂がありますが、数年の内に観られるんですかねぇ。「ガイナックスインタビューズ」では「ウル」の小説を執筆中とありましたが…。


    >マグナカルタさん

    “斎藤友子 ガイナックス”で検索していたのですが駄目で、“斉藤”としてみたら、大森望氏のサイトが出てきたんです。
    そこで、ガイナ社員とのカラオケの日記があって、あとは芋づる式に、という感じです。

  7. 匿名 (2007年07月18日 02時04分)

    ガイナックスの株式上場計画も脱税事件で
    頓挫。
    先に、ガイナックスから脱藩したGONZO
    の方が先に上場してしまった。

  8. Annogoo (2007年07月18日 14時01分)

    そういえばGAINAXって非上場企業なんですよね。資本金が2億2000万と、アニメ業界の中では結構大きい方だと思いますが、株式が上場されていないのって、脱税のせいだったんですかね?

  9. ハイム (2007年07月18日 16時08分)

    >7. 匿名さん
    上場計画があったんですか? 「エヴァ」の成功でビルが建つ予定が、脱税で出来なくなった話は知っていますけれど、そういう話は知りませんでした。
    GDHは会社としては成功しているかも知れませんが、アニメ制作の面ではガイナックス以上の成功を収めているとは思えません。
    果たしてどちらが良かったのかは、当人たちにしか分かりませんね。


    >8. Annogooさん
    アニメ製作会社で上場しているところは、逆にあまり多くないみたいですよ。
    「株を買えるアニメ会社一覧」で知りました。
    http://animemangarobox.seesaa.net/article/47745756.html
    私自身は、ガイナが上場しようとしていた、という話を読んだり聞いたりしたことはありませんので、よく分からないです。

  10. anonymous (2007年07月19日 04時42分)

    役員の遷移に興味があるなら(株)ガイナックスは東京都小金井市に本店を置いているようですから東京法務局府中支局に出向いて法人登記事項全部証明書を取得するか、あるいは登記簿謄本の閲覧を申請すればよいのではないでしょうか。いつ代表者が入って抜けたのか、それがいつ登記されたのかすべてわかりますよ。手数料も喫茶店代程度で済むはずです。

  11. ハイム (2007年07月19日 11時27分)

    >anonymousさん
    それも良いかも知れませんね。ネット上、ガイナックスのホームページなどだけで情報を集めるには、限界がありますし。
    でも、そういった所で閲覧して得た情報を、ネット上に流すのってまずいのですかね? ブログのネタにしたくなる気がします(笑)。

  12. マグナカルタ (2007年07月19日 19時07分)

    >声優大丈夫かな?あの全盛期の声が出せるんだろうか?
    エヴァのゲームをいろいろ買ってみてはいかがでしょう。
    最近のものでも、エヴァンゲリオン2、シークレットオブエヴァンゲリオン、名探偵エヴァンゲリオン、バトルオーケストラ、そしてパチンコといろいろあります。

    やっぱり、その時の声優さんの気合の入れ方で出来はいろいろですね。
    三石さんは、相当気合を入れないとミサトの声にはならないようです。
    旧劇場版のあたりから顕著ですが、立木さんは貫禄をつけてゲンドウを演じてるんですよね。旧劇場版とかゲームの後で第一話を見直すと、ゲンドウの声が若々しいんですよね。

  13. ハイム (2007年07月19日 22時02分)

    >12. マグナカルタさん
    エヴァのゲームはやったことが無いのですが、そういった見方をするのも面白そうです。
    立木文彦氏の声の微妙な変化には、全然気付いていませんでした。まだまだです。

  14. anonymous (2007年07月20日 13時21分)

    法人の登記情報というのは決められた手数料を納めることでだれでも閲覧できるものですし問題はないと思いますが法務局の職員にご確認ください。

  15. ハイム (2007年07月20日 22時21分)

    >14. anonymousさん
    機会がありましたら、調査してみたいと思います。
    アドバイスをありがとうございました。

  16. 匿名 (2007年08月17日 02時41分)

    ヒント:ミセススミス
    こういうリリースって実名じゃないとあかんのでは?

  17. ハイム (2007年08月17日 14時11分)

    >16.匿名さん
    どうなのでしょう。法人の登記上で本名になっていれば、ネット上のアナウンスは本名でなくても問題ないんじゃないですかね。

  18. ななふし (2007年08月24日 13時49分)

    トーレンの奥さんの友子さんとは同姓同名の別人ですよ。
    監査役に安田氏の名前があるのは角川HDがガイナックスに出資しているからです。
    法務局に行けば他にも面白い出資構造が見えます。

  19. ハイム (2007年08月24日 19時07分)

    >ななふしさん
    別人なんですか? てっきり同一人物かと…。やはりネット上だけで調べると駄目なんですかねぇ。記事修正を検討します。
    その内余裕ができた時に、ゆっくりと書きたいと思います。かなり無知なので、勉強も必要そうですね。

コメントの投稿

コメント投稿

トラックバックURI

http://johakyu.net/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/500


最新記事 (2009年04月26日現在)
  1. 新雑誌「ヤングエース」の発売告知フリーマガジンに貞本義行インタビュー掲載
  2. 山賀博之・赤井孝美が中心となった「ガイナックス実写部」の作品は『屍姫』実写PV
  3. 『ヱヴァ新劇場版:破』の新キャラ「真希波・マリ・イラストリアス」役は坂本真綾に決定 - 「EVA-EXTRA 01」でキャスト・メインスタッフが発表された
分類一覧
月別一覧 (全記事)
Powered by
Movable Type 3.32-ja
Access Counter
累計:累計アクセス数
今日:今日のアクセス数
昨日:昨日のアクセス数