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失われたカードたち:第6話「蟲」
堕天使/文


 「何故だ! 何故なんだ!」

  机に拳を叩きつけながら、去り行く背中に向け怒鳴りつける。

  しかし『彼』はその声が聞こえていないかのように、すたすたと歩を進めるだけ。

 「これが、これが結末なら……何故我々を創った!」

  血が滲むような叫び。だが、その状況は何も変わらない。

 「あなたには、この未来がわかっていたはずだ! ならば何故!」

  どんどんと離れていく2人の距離。

  次第に、『彼』の姿は闇に溶け込んでいった。

 「ならば何故! 何故我々を創り出したんだ! 答えろ! 答えるんだ、クロウ=リード!」

 

  次に視界に飛び込んできたのは、星々の衣を着飾った夜空が広がった。

  組んだ両掌に乗せた頭を浮かせて、そのまま上半身を起こす。そして、首だけを動かして空を仰ぎ見る。背を反らしすぎて倒れそうになった身体を、両手で支えた。

 「………何故なんだ、クロウ」

  その呟きは、夜風に乗って星々の彼方へと溶けて消えた。

 

 

 「知世ちゃん!」

  悲痛な、それでいて怒りの混じった声で、さくらは親友の名を叫んだ。

  さくらの目の前に広がる、古ぼけた倉庫。そこは既に閉鎖された元港で、さくらはその一角にある倉庫へと導かれたのだ。無惨な姿へと変わり果てた親友の身体に刻まれていた地図によって。

 「……っ!」

  自然と、握った拳に力が入る。知らぬ間に奥歯を強く噛んでいた。

  さくら自身、ここまで怒りに震えた事はなかった。今まで自分にこんなにも深い『闇』があるなど、考えた事もなかった。

 「知世ちゃん!」

  再び呼びかける。今度はさらに強い口調で。

  だが、その暗闇の中からは、何の反応も返ってこなかった。

  意を決して、さくらは駆け出した。何が起きてもいいように鍵を握りこみ、何枚かカードもポケットの中から出しておく。周囲を警戒し、視線を上下左右満遍なく動かし、闇の中を探る。

 

  そんなさくらが足を止めたのは、それから数秒走った後だった。

  どこまで走っても尽きない闇の中から、人の気配がした。それは自分が足を止めた後も近づいてくる。

 「……」

  さくらは、無言で鍵を杖へと変え、構えた。

 「さくら……ちゃん?」

  その気配は、僅かに差し込む月明かりの下に歩み出す。その姿は、さくらが捜し求めていた親友の姿であった。清潔な純白のワンピースが、闇の漆黒によく映える。

  知世はしっかりとさくらの姿を見つけると、その麗しい双眸に涙の粒を浮かべ、ややおぼつかない足取りでさくらの元へ駆け寄っていった。

 「知世ちゃ…」

 「さくらちゃ〜〜〜〜ん!!」

  さくらの呟きを遮り、知世は感極まった声を上げて勢いよくさくらに抱きついた。さらさらと流れる黒髪が視界に広がる。知世はさくらに数秒ほど抱きついた後、その体を離して涙に潤んだ瞳でさくらを見つめる。

  さくらが口を開こうとすると、またしても知世の泣き声が被さる。

 「さくらちゃん! 李君が、あの人たちに!」

 「小狼……くんが……」

  知世の言わんとしていることは解かる。

  おそらく小狼も知世の囚われている場所を突き止め、床についたままのさくらに気を使い、単身乗り込んだ。そして、何とか知世を助け出したものの……。

  突然消えた小狼と、今の知世の発言。そう考えるのが普通だろう。

  だが、さくらは……。

 「……………ねえ、知世ちゃん」

 「は、はい…」

 「………知世ちゃんって、『最近の』小狼君と同じ感じがするね……」

  その一言に、知世の表情が強張る。

 「『盾』[シールド]!」

 「!? くっ!」

  不意に発生した防御障壁が知世を、いや『知世』を吹き飛ばす。だが『知世』は宙で身を捻り、両足で着地する。さくらは、悪魔の如く顔の歪んだ『知世』を、怒りを抱いたその眼でしっかりと見据えていた。

 「何故……何故僕の変身を!?」

  すっかり口調の変わった『知世』に、しかしさくらはいつの間にか変換した杖を無言で構えるだけ。監視のみを行っていた頃とはあまりにも違う少女のその雰囲気は、少なからずの恐怖を与える。

  その威圧感に飛び込むことさえできず、『知世』はただじりじりと間合いを取ることのみ。

  先に動いたのは、さくらだった。

 「『風』[ウィンディ]!」

  真っ先に襲い来る風の檻。

  『知世』は背中からユエやケルベロスと同じ様な白い翼を生やすと、すぐさま真上に飛び上がる。だが、すかさずさくらは追撃をかける。

 「『凍』[フリーズ]! 『矢』[アロー]!」

 「2枚同時!?」

  驚愕とほぼ同時、『知世』の周囲に隙間なく氷の矢が出現する。凶悪に研ぎ澄まされたその矛先は、いずれもが寸分違わず『知世』に向けられている。

 「くっ!?」

  苦渋に満ちた表情を浮かべ、『知世』の体がぶれる。一瞬後、その姿は蝶の羽を持った黒い豹へと変わる。見紛う筈もない、かのクロウ=リードが転生したエリオルの使い魔の一人、スピネルとまったく同じ姿だ。

  迫り来る無数の氷の矢。

  だが『スピネル』は回避運動らしきものをまったくせず、ただ羽を細かく振動させるだけ。だがそうして生まれた、人間の可聴域をはるかに越える音波は飛来する氷の矢の尽くを粉砕する。

  そこに、さくらは更なる追撃をかける。

 「『歌』[ソング]!」

  別な音波をぶつけることにより、『スピネル』が生み出した超音波が乱され始める。さらにその出力を上げて撃ち破ろうとする『スピネル』に、さくらは更なる追撃を行う。

 「『音』[ボイス]! 『消』[イレイズ]!」

  音が……消えた。

  『スピネル』の周囲の空間に存在する全ての音が、瞬く間に消え去る。

  無音の空間を突き抜けた氷の矢が次々と『スピネル』の体に突き刺さり、声もあげることさえ許さず撃墜する。いや、もしかしたら苦痛の叫びをあげていたのかもしれない。だが、無音の空間はそれすらも飲み込んだ。

  落下して横たわるその姿は、『スピネル』ではなかった。あの男を思わせる、黒衣の少年。その顔立ちも、どこかあの男に通じるものがあった。

 「くっ………なんで……」

  少年は苦しげにそう呻き、何とか体を起こそうとする。だが、かなりの数の氷の矢に撃ち抜かれた体は、なかなか言う事を聞こうとしない。

  その少年を見下ろしながら、さくらはゆっくりと一枚のカードを取り出す。

 「………『剣』[ソード]」

  深く静かな呟きを合図に、杖が一振りの白銀の刃へと変わる。その冷たい矛先を、少年へと向ける。そして一切の迷いもなく、その刃を振り下ろした。

  が、

  その刃は、少年に触れる寸前に、何か硬い物に弾かれたかのように跳ねる。

 「『固』[ハード]。空気を固めさせてもらった」

  闇から響くその声。

  さくらはそちらへとすかさず振り向く。剣の切っ先を闇に突きつけながら。

 「随分と………らしくなくなったじゃないか」

  のそりと姿を現したのは、この前と同じ黒衣の男。確か、ロストと名乗っていた。

  ロストは気配と警戒の視線の威嚇を続けるさくらをまったく無視し、床に一枚のカードを置く。さくらの目と鼻の先で倒れている少年に向かって。

 「『滑』[スライド]」

  その地面だけをずらしていくかのように少年の体がロストの元へ滑っていく。

 「………だから、見縊ってかかるなと言っただろ」

  ロストが少年へと手をかざす。すると、少年の体に淡い光が纏わりつき、少年の体を一枚のカードへと変貌させる。そのカードは、吸い込まれるようにロストの手の中に収まった。

  その光景に、さくらは少なからず驚愕の色を浮かべたが、すぐさま怒りの色に瞳を染める。

 「驚いたか? こいつも一応、カードの一つだ」

 「……どこ」

  ロストの説明を無視し、さくらは呟く。

 「………知世ちゃん……小狼くん…ケロちゃん……ユエさん……どこなのっ!」

  瞳に宿る色と同じ感情を含んだその声に、ロストは反応らしい反応は見せない。だが、しっかりとした口調で口を開く。

 「あの少年なら、一応は無事だ。香港のある場所に監禁している。2匹も、奥の部屋に繋いである。あの女の子の方は……聞かない方がいい」

 「『炎』[ファイアリー]!」

  間髪いれず、魔力の炎が巻き起こる。

 「『固』[ハード]」

  ほぼ不意打ちのその攻撃を、ロストは慌てず対処する。

  迫り来る炎はその諸手をロストに伸ばすが、その寸前の空間に触れるや否や瞬く間に固まってしまう。

  だがさくらは真っ先にその固まった炎を駆け上がり、手にした剣とカードを構えてロストに飛び掛る。

 「『力』[パワー]!」

 「封印解除[レ・リーズ]!」

  淡く発光する剣と、黒塗りの大鎌とが激突する。

  ただの力比べならば、さくらが圧倒的に不利だ。だが、助走と自由落下の勢い、それに『力』の力を上乗せしたこの一撃ならば、あるいは……。

  さくらの読み通り、その一撃はロストの鎌を圧す。だが、

 「『衝』[ショック]!」

  それをさらに読んでいたのか、ロストの言葉とともに二人の間の空間が激しい爆発を起こし、両者を後方へと吹き飛ばす。

 「あうっ…!」

  さくらは炎の壁に強か背中をぶつける。だが、空間の破裂が解かっていたロストは後方にわずかに跳び、衝撃を和らげたためさくらほどのダメージは負っていない。

  しかしさくらは背中の痛みなど無視し、体制を崩したロストにカードを発動させる。

 「『影』[シャドウ]! 『凍』[フリーズ]!」

  ロストの影が、突如その身を起こす。そして伸びた両手である時の足に纏わりつき、影がいきなり凍りつく。

 「『雨』[レイン]! 『矢』[アロー]!」

  すかさず第2波。

  下半身を封じられ、身動きできないロストの頭上に小さな雨雲が発生し、そこから雨粒の代わりに無数の矢が降り注いだ。

 

 

  戦闘は、お互いの力量にも関わらずあっさりと決着がついた。

  今の連携は、さすがのあの男にも避わしようがないはず。その思考は、さくらの警戒心を僅かにだが緩ませる。

 「『停』[ストップ]」

 「!?」

  不意に後頭部にカードが押し付けられた感触。そして聞こえる呪文。

  だがそれを状況を察した時には、すでに指1本動かせぬ状態となっていた。

 「驚いたよ。まさか昨日の今日で、下級カードとはいえ合成発動を使いこなすとは」

 「あっ………………くっ………」

  呼吸はできる。瞬きもできる。だが、体はぴくりとも動かない。声を出そうにも、唇はおろか舌までも動かない。いくらもがいても、それはただの徒労に終わる。

 「無駄だ。いくらお前が強大な魔力を持っていようと、接触系のカードの呪縛はそう簡単には解けない。最低でも、あと数分は、な」

 

 

  そこは、何もない部屋だった。

  いや、あるものはただ一つ、完全なる闇。

  違う。

  そこには冷たい床。そしてソファ。足元で妖しくも淡い輝きを放つ魔法陣。それだけが明確に闇から切り離され、それ以外のもの、壁や天井などは、全てが闇に覆われていた。

  さくらはその中で、唯一光を放つ魔法陣の中心にいた。闇から伸びた冷たい鎖にその四肢を拘束されて…。

  一方ロストは、その3Mほど先にあるソファに腰掛けており、その背後には2体の守護者が、やはりさくらと同じ様に魔力を封じる鎖で拘束されていた。

 「…………何者なんだ、お前は?」

  音すらも闇に飲まれたその静寂の中、最初に口を開いたのはユエだった。ロストはいまだ振り向かないが、それでもユエは続ける。

 「クロウカードは、クロウ=リードの直系か、かなりの魔力の持ち主でなければ扱いきれない。だが、貴様からはまったく魔力を感じない。いや、むしろ……」

  そこでユエは一旦言葉を飲み込み、深く声のトーンを落とす。

 「貴様の気配は………まるで…………クロウカードそのものだ」

 「……その通りだ」

  そこで、ロストは腰を上げた。そして懐から、大量のカードを取り出す。

 「かの高名な魔術師クロウ=リードは、52枚のクロウカードを作り上げた。だがそれより以前に、クロウカードの前身にあたる107枚のカード、いわばプロト・クロウカードなる物を作り出した。それが……こいつらだ」

 「……………そんなものが」

 「ふふぉうふぁふぁはひいへへんふぇ、ふぉんふぁはふぁふぃ」

 (クロウからは聞いてへんで、そないな話)

 「当然だ。クロウ=リードは、この事実を封印にしたのだからな」

 「な!?」

 「ふぁんふぁふぇ!?」

 (何やて!?)

 「クロウ=リードは、何枚かのカードに自我を与えた。そして、人型の『クロウカード』を作り出した。それがこの俺だ。カード名は『統』[クエスト]。107枚のプロト・クロウカードを自在に扱える、108枚目のプロト・クロウカードだ」

  そこで一旦言葉を切ったロスト――いや『統』は、ゆっくりとさくらへと歩み寄る。

  さくらは先ほどからの言葉を聞きつつも、必死でその鎖を解こうとしていた。だが、年端もいかぬ少女の腕力ではぴくりともしない。

 「我々は……現クロウカードの継承者に、いや、そのクロウカードをもさらに越えたカードの持ち主に勝つことができた。だが………だからなんなんだ!」

  ――バチンッ

  澄み切った音が響く。

  『統』の手の平がさくらの頬を殴りぬいたのだ。

 「俺たちは……こんな物たちの為だけに自我まで与えられ、捨てられたのか! 何のために俺たちは存在しているんだ!」

 「だからといって……主には関係ないだろ」

 「ならば、どうしろというんだ? クロウ=リード本人はもういない。エリオルという少年も、記憶以外は紛い物と言ってもいい程の力の差を感じる。結局は……私の復讐の対象は、クロウ自らが生み出し、尚もその力を高めているお前達、ということになる」

 「だからって……」

  今までずっと黙ったままのさくらが、かすれた声を出す。うつむいたその顔は、落ち込んだり沈んでいるというよりも、むしろ何かを抑えつけているようにも見える。

 「だからって………だからってみんなを………」

 「どうだった?」

 「…!?」

  『統』の不意の問いを理解しかね、さくらはその面を上げた。

 「友達が次々に惨めな事になって、何か感じなかったか、と聞いてるんだ」

  その瞬間、さくらの顔が怒りと憎しみに染まり、僅かに奥歯を噛み締める音が聞こえてきた。

 「ふふ、そうだろう。憎かったろう? 今すぐにでも切り裂きたかっただろう? だがな、俺たちはクロウ=リードのおかげでそういった負の感情が支配する存在になったんだ!」

  その迫力と言葉に押され、さくらの表情が一瞬はっとなる。

 「俺たちは、俺たちを見捨てたクロウを憎んだ! こんな小娘に『完成品』を渡したことに怒りを覚えた! 俺たちは常に負の感情に苛まれ続けてきたんだ! それを…貴様のような汚れを知らぬ奴に、クロウの遺産を託すわけにはいかない!」

 「ふぁふぁふはふぃははいふぁ!」

 (逆恨みやないか!)

  思わず叫ぶケルベロス。だが、『統』はすかさず叫び返した。

 「『完成品』のお前らが、破棄された『失敗作』の気持ちなどわかるとでも言うのか!」

  その言葉には、かなり強気なケルベロスでも一瞬たじろぐ。

  『統』が恨みを持つもの、それはクロウが作った『完成品』。ならば、彼から見れば『完成品』の内に入るケルベロスには、それに返す言葉はなかった。

 「木之本さくら、お前には最大級の『闇』を見せてやる」

  そう言って、『統』はゆっくりとさくらの方へ向き直った。その瞳に憎悪の焔を湛えて。

 

 

  ユエと『統』がなにやら話し合っている間にも、さくらは鎖を何とかしようともがいていた。だが、手足を大きく開かれている状態では意味のある行動は何も起こせない。

  だが、それでもさくらは必死にもがいていた。

  親友を、兄を、そして大切な人を弄んだこの男だけは絶対に許すことは出来ない。

  そんな、今までのさくららしからぬ感情が、今のさくらを動かしていた。

 「木之本さくら、お前には最大級の『闇』を見せてやる」

  ふと自分の名を呼ばれ、反射的にさくらは顔を上げる。そこには、自分に向かって一枚のカードを掲げた『統』の姿。

  何事かと訝る暇さえも与えず『統』の周囲の空間が歪む。いや、手にしたクロウカードを発動させるために彼が発する魔力が、さくらの視界に広がる。

 「『蟲』[ワーム]!」

  瞬間、さくらの視界は闇に満たされた。

 

 (な、何…!? 何が起こったの!?)

  突然の事態に声をあげる。いや、あげたかった。だが、さくらの口からはその言葉は発せられない。

  違う。

  発せられないのではない。聞こえないのだ。闇はさくらの視覚ばかりではなく聴覚、触覚といった五感のすべてを封じているのだ。

  しかし、それはとうのさくらにはわからない。ただ、視界が闇に包まれたこと、先ほどまで体を拘束していた鎖の感触がないこと、声が出ないこと、それがさくらがこの闇に対して思ったことのすべてだった。

 (一体………何が………)

  どうなったのか?

  そのセリフを言い終えぬうちに、さくらに新たな感触が生まれた。

  両足に、節くれだった何かが絡みつく。蔦の感触にも似た『それ』は、螺旋階段を昇るように足首から這い上がる。

 (ひっ……!)

  あまりの気色悪さに総毛立ち身動ぎするが、やはり体は動かせない。

  その間にも『それは』膝の辺りまで到達し、太腿の部分にまで触感を感じる。だが、それだけではない。『何か』が胸の辺りに飛び掛ったのだ。

 (やっ…………いやぁぁぁぁっ!)

  その物体を見た瞬間、さくらは悲鳴をあげた。

  やや潰れたラグビーボールに巨大な一つの目と蜘蛛のような3対の節足が生えた、言葉にすればそんな生物だった。その異形な姿は闇の中にぽっかりと浮かび上がり、怯えるさくらの顔をしっかりと睨め上げていた。

  6本の足を複雑に動かし、どんどんとさくらの顔へと迫る。そして首の辺りまで到達すると、その目がわずかにぶれ始めた。

 (!?)

  今度こそ、さくらは大きく息を飲む。

  その目を破って現れたのは、さくらの腕よりも太い一本の巨大な触手だった。その先端は男根とほぼ同じ形状で、非常に強い粘りをもった液体が纏わり付いている。

  その触手はゆらゆらと頼りなく空中で揺れた後、何の前触れもなくさくらの口内へとかなりのスピードで侵入した。

 (………………っ!!)

  突然の侵入に何一つ対応できないまま、さくらの舌に苦々しい味が広がる。いやいやするように首を左右に振るが、口内から押さえつけられびくともしない。

  何もできないさくらを弄ぶように触手が激しく口内を犯す。前に後ろに動く度、さくらの唇からじゅぶじゅぶという淫猥な音が漏れる。さらに触手は前後運動に、上下左右の動きも混ぜる。その動きに呼応するように、さくらの頭ががくがくと揺れる。

  だが、『蟲』はそれ一匹ではない。すでにさくらの足に一本ずつ別の『蟲』が張り付いた。

  両足に取り付いた『蟲』の眼球から、同じく極太の触手が現れ、それぞれが下着を突き破り、無遠慮にまだ濡れてもいない幼い秘部をぶち抜いた。

 (!!!!!!!!!!)

  今までとは比べ物にならない激痛がさくらを引き裂く。同時に、親友たちもこの痛みを味わい、そして汚されていったことを思うと、自然と痛覚とは別の涙が溢れてきた。だが、不思議と憎しみや怒り、そして悲しみは沸いてはこなかった。

  その代わりといわんばかりに、頭に新たな『蟲』が一匹取り付く。

  新たな『蟲』も他の3匹同様眼球から触手を出現させるが、その先端は他の『蟲』と大いに異なっていた。生物的なフォルムを持つ触手には似合わない鋭さを持った錐が、まさに取り付けられたかのように付いていた。

  『蟲』はその触手の先端を、真直角からさくらの脳天に突き刺した。

 (っっっっっっっっっっっ!!)

  痛みは感じない。

  だが、頭の中、つまり脳を直接貫かれた気味の悪い感触のみが残る。血も流れない。穴が空いたという感触はない。それは皮膚と頭蓋骨を貫かれたというより、ただ通過していったような感じだ。

  そして、口内を蹂躙していた触手以外のすべての触手が一斉に活動を始めた。

 

 

  その瞬間、さくらの頭は真っ白になった。

 

 続

 


解説

 かなり間が空いてしまいましたが、続きです。

 敵の正体を明かしたりさくらを毒牙にかけたり……ついに達成できた感がありました(笑

 ただ、さくらのシーンは少し短めですので……そこらへんはご遠慮を…。

 

 

 なんか触手ネタが続いてますが、特別それに目覚めたというわけではないので(笑

 

 さて、第1話から続いてきたこの作品、後一話で完結です。

 後一話………すべて書ききれるのか!?(爆

 


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